兎 穴 を 下っ て # アリス は 土手 で 姉 の そば に 座っ て い まし た が 、 何 も する こと が なかっ た の で 、 次第 に 疲れ だし まし た 。 一、二 度 、 彼女 は 姉 が 読ん で いる 本 を のぞい て 見 た けれど も 、 その 本 に は 絵 も 会話 も あり ませ ん でし た 。 「 じゃ 、 この 本 に は 何 の 使い道 が ある って いう の ? 」 と アリス は 思い まし た 。 「 絵 も 会話 も ない なんて 」 # そして 彼女 は 心 の 中 で あれこれ 考え 始め まし た ( できる 限り 精神 を 集中 し て 。 と いう の は この 日 は 暑く て 、 彼女 は とても 眠く 、 頭 が 朦朧 と し て い まし た から ) 。 デイジー の 花輪 を 作る の は 楽しい けど 、 立ち上がっ て デイジー を 摘み に いく の は 面倒 だ し 。 する と 、 その 時 突然 、 ピンク の 眼 を し た 白 兎 が 彼女 の 近く に 走っ て き まし た 。 # それ だけ で も 十分 不思議 だっ た の に 、 さらに アリス は 兎 が こう 独り言 を 言う の を 聞い て も 、 おかしい と は 思い ませ ん でし た 。 「 やれやれ ! 遅れ て しまう ぞ ! 」 。 ( 後 で 考え て みる と 、 この こと は 変 に 思わ なけれ ば なら なかっ た の に 、 この 時 は 全て が 全く 自然 な こと の よう に 見え た の です ) 。 兎 が 実際 に チョッキ の ポケット から 時計 を 出し て 、 それ を 見つめ 、 そして また 急ぎ 始める と 、 アリス も 走り 始め まし た 。 と いう の は 彼女 は チョッキ を 着 た 兎 や 、 その チョッキ から 出 て き た 時計 を 今 まで 見 た こと が ない 、 と いう 思い が 心 の 中 に さっと 浮かん で き た から です 。 好奇 心 に 駆ら れ て 、 彼女 は 兎 の あと を つい て 野原 を 横切り 、 幸運 な こと に 、 兎 が 垣根 の 下 の 大きな 兎 穴 に 飛び込ん だ の を 見る の に 、 調度 間に合い まし た 。 # 次 の 瞬間 、 アリス は 兎 の あと を 追っ て 飛び込み まし た 。 その 穴 から どう やっ て 出よう か 、 と は 一 度 も 考え ず に 。 # 兎 穴 は 暫く は トンネル の よう に まっすぐ 続い て い まし た が 、 突然 が くっ 、 と 落ち込み まし た 。 余り に 突然 だっ た の で 、 アリス は 止まろう と する 間 も なく 、 とても 深い 井戸 の 中 に 落ち て いき まし た 。 # その 井戸 が とても 深い せい か 、 あるいは 彼女 が とても ゆっくり と 落ち た せい か 、 彼女 は 落ち て いく 間 に 自分 の まわり を 見回し 、 次 に 何 が 起こる の か を 考える ゆとり が あり まし た 。 最初 に 、 彼女 は 下 を 見 て 、 何 が 自分 を 待ち受け て いる か を 見つけよう と し まし た 。 しかし 暗 すぎ て 何 も 見え ませ ん でし た 。 次 に 彼女 は 井戸 の 壁 を 見 まし た 。 する と そこ に は 戸棚 や 本棚 が 一杯 ある こと が 分かり まし た 。 また あちこち に 、 留め 釘 で 止め られ た 地図 や 絵 が ある の も 見え まし た 。 彼女 は 落ち ながら ある 棚 から 瓶 を 取り出し まし た 。 そこ に は 「 オレンジ マーマレード 」 と ラベル が 貼ら れ て い まし た 。 しかし 残念 な こと に 、 その 瓶 は 空っぽ でし た 。 瓶 を し た に 落とし 、 誰 か に 当たっ て 死な せ て しまう の は イヤ だっ た の で 、 落ち て いく 間 に 、 また 別 の 戸棚 の 中 に 何 と か 押し込み まし た 。 # 「 さて ! 」 と アリス は 考え まし た 。 「 こんな に 落ち た ん だ もの 、 これ から は 階段 を 転げ落ち た って 、 なん と も 思わ ない わ 。 家 に 帰っ たら 、 みんな 私 の こと を どんな に 勇敢 か って 思う でしょう ね 。 ええ 、 屋根 の 上 から 落ち た って 、 痛い なんて 一言 も 言わ ない わ 」 ( ← それ は おそらく そう でしょう ) # 下 へ 、 下 へ 、 下 へ 。 いつ まで も 落ち て いく よう でし た 。 「 もう 何 マイル 落ち た かしら ? 」 アリス は 声 に 出し て 言い まし た 。 「 地球 の 真ん中 近く に 来 て いる に 違い ない わ ね 。 えーと 。 それ は 4000 マイル 落ち た 、 って こと だ から 、 そう する と ・ ・ ・ 」 ( お 分かり の よう に 、 アリス は 学校 の 授業 で この よう な こと を 幾 つ か 習い まし た 。 そこ に は 彼女 の 話 を 聞く 人 は 誰 も い なかっ た の で 、 これ は 彼女 の 知識 を 披露 する 余り 良い 機会 で は なかっ た の です が 、 それ で も 復習 に は 良い 練習 でし た 。 ) 「 ・ ・ ・ ええ 、 それ が 正しい 距離 だ わ 。 で も 緯度 と 経度 は どう かしら ? 」 ( アリス は 経度 も 緯度 も どう いう もの か 知っ て い ませ ん でし た 。 しかし 、 これ ら は 口 に 出す の に ふさわしい 重み の ある 言葉 と 思っ た の です ) # ま も なく 彼女 は また 始め まし た 。 「 落ち 続け て 、 地球 を 突き抜け たら 面白い の に ね ! 頭 を 下向き に し て 歩く 人々 の 間 に 出 て き たら 、 愉快 でしょう ね ! タイ 商人 、 だっ た かしら ・ ・ ・ ( 今回 は 彼女 の 話 を 聞く 人 が 誰 も 居 なかっ た の は 、 幸い な こと でし た 。 それ は 全く 正しい 言葉 に は 見え ませ ん でし た から ) ・ ・ ・ で も その 国 の 名前 を 聞か なく ちゃ なら ない わ 、 そう でしょ ? 済み ませ ん が 、 こちら は ニュージーランド かしら 、 それ と も オーストラリア ? ( 彼女 は 話し ながら 礼儀 正しく 振舞おう と し まし た が 、 空中 を 落ち て いる の に 礼儀 正しく なんて 、 奇妙 な 話 です 。 あなた は でき ます か ? ) ・ ・ ・ する と 向こう の 人 は 、 なんて 無知 な 小娘 か 、 って 私 の こと を 思う でしょう ね ! 駄目 よ 、 そんな こと を 訊い て も 意味 ない わ 。 国名 が どこ か に 書か れ て ない か 、 見 て みる こと に しよう 」 # 下 に 、 下 に 、 下 に 。 他 に 何 も する こと が 無かっ た の で 、 アリス は また 喋り 始め まし た 。 「 ダイナ は 今晩 、 私 が 居 なく て とても 淋し がる でしょう ね ! ( ダイナ は ネコ です ) 。 お 茶 の 時間 に ミルク 皿 を 出す こと を 、 みんな 忘れ ない と いい ん だ けど 。 ダイナ ! 一緒 に 落ち て くれれ ば いい の に ! 空中 に は ネズミ は 居 ない と 思う けど 、 コウモリ を 捕まえる と いい わ 。 コウモリ は ネズミ と そっくり だ もの 。 ね ? で も ネコ は コウモリ を 食べる かしら 」 。 そして ここ で アリス は ちょっと 眠く なり 、 寝言 の よう に 独り言 を いい 続け ながら 、 「 ネコ は コウモリ を 食べる かしら ? 猫 は コウモリ を 食べる かしら ? 」 そして 時々 「 コウモリ は ネコ を 食べる かしら ? 」 。 お 分かり の よう に 、 彼女 は どちら の 疑問 に も 答える こと が でき なかっ た の で 、 彼女 が どう 言おう と 問題 は ない の でし た 。 彼女 は 眠り に 落ち て いき 、 ダイナ と 手 を 繋い で 歩い て いる 夢 を 見 はじめ まし た 。 そして 熱心 に 言い まし た 。 「 さあ 、 ダイナ 、 本当 の こと を 言っ て ごらん 。 コウモリ を 食べ た こと が ある の ? 」 。 その 時 突然 、 ドスン ! ドスン ! と 、 彼女 は 枝 と 枯葉 の 山 に 落ち まし た 。 落下 行 は 終わり まし た 。 # アリス は 怪我 一 つ なく 、 次 の 瞬間 に は 自分 の 足 で 跳ね起き まし た 。 彼女 は 上 を 見 まし た が 、 頭上 に は 真っ暗 でし た 。 彼女 の 前 に は 別 の 長い 通路 が あり 、 あの 白 兎 が 急い で 行く の が まだ 見え て い まし た 。 ぐずぐず し て いる 時間 は あり ませ ん 。 アリス は 風 の よう に そこ を 去り 、 兎 に 追いつこう と し まし た 。 そして 兎 が 角 を 曲がる 時 、 こう 言う の を 聞い た の です 。 「 ああ 、 耳 と 口ひげ に かけ て 、 こんな に 遅れ て しまっ た ! 」 彼女 は 角 を 曲がる 時 に は 、 兎 の すぐ 後ろ に 居 た の です が 、 曲がり 終わる と 兎 は どこ に も 居 ませ ん でし た 。 そこ は 長い 、 天井 の 低い 広間 で 、 屋根 から 吊るさ れ た ランプ の 列 が あたり を 照らし て い まし た 。 # 広間 の 周り 中 に 扉 が 付け られ て い まし た が 、 みんな 鍵 が 掛かっ て い まし た 。 広間 の 片方 から もう 片方 へ 歩き ながら 、 全て の 扉 を 試し て み まし た が 、 駄目 でし た 。 彼女 は 広間 の 真ん中 を 悲し げ に 歩き ながら 、 どう やっ て ここ から 出よう か と 考え まし た 。 # 突然 、 彼女 は 全体 が 硬い 硝子 で 出来 た 、 小さな 三 本 脚 の テーブル に 出くわし まし た 。 そこ に は ちっぽけ な 金 の 鍵 の ほか に は 、 何 も あり ませ ん でし た 。 最初 、 アリス は その 鍵 が この 広間 の どれ か の ドア の もの だ 、 と 思い まし た 。 けれど も どの 鍵穴 も 大き すぎ たり 、 また は 鍵 が 小さ すぎ たり し て 、 どんな に し て も 鍵 は どの 扉 も 開け られ ませ ん でし た 。 しかし もう 一 度 探し て みる と 、 彼女 は 前 に は 気付か なかっ た 背 の 低い カーテン を 見つけ まし た 。 その 後ろ に は 15 インチ くらい の 小さな ドア が あり まし た 。 彼女 は その 小さな 金 の 鍵 を 差し込ん で 見 まし た 。 する と 嬉しい こと に 、 それ は ピッタリ だっ た の です ! # アリス が 扉 を 開ける と 、 そこ は 兎 穴 ほど の 大き さ の 小さな 通路 でし た 。 彼女 は 膝 ま づい て 通路 を 覗き込み まし た 。 する と その 先 に は 見 た こと も ない ほど ステキ な 庭 が 見え まし た 。 その 暗い 広間 から 抜け出し て 、 この 明るい 花々 の 蕾 や 涼し げ な 噴水 の 周り を 散歩 しよう と 、 彼女 は どんな に 望ん だ こと でしょう 。 しかし 頭 さえ も 扉 を 通り抜ける こと が でき ませ ん でし た 。 「 そして 頭 が 通っ た と し て も 、 」 と 可哀想 な アリス は 思い まし た 。 「 肩 が 通ら なけれ ば 意味 ない じゃ ない の 。 うーん 、 望遠 鏡 の よう に 体 が 折り畳める と いい ん だ けど ! 初め だけ 、 どの よう に 畳める か 知っ て いれ ば 、 後 は できる と 思う ん だ けど 」 。 お 分かり の よう に 、 おかしな こと ばかり が 続い た の で 、 アリス は 本当 に 出来 ない こと など ほとんど ない 、 と 思い はじめ て い た の です 。 # その 小さな 扉 の 前 で 待っ て い て も 埒 が あか ない の で 、 別 の 鍵 や 、 そう で なけれ ば せめて 人間 を 望遠 鏡 の よう に 折りたたむ 法則 を 書い た 本 で も 見つから ない か と 半分 願い ながら 、 彼女 は テーブル の ところ に 戻っ て いき まし た 。 今度 は 小さな 瓶 を 見つけ まし た 。 ( 「 そんな 瓶 、 前 見 た 時 に は 確か に なかっ た わ 」 、 と アリス は 言い まし た ) 。 瓶 の 首 に は 紙 の ラベル が 貼っ て あり 、 「 私 を 飲み なさい 」 と いう 言葉 が 大 文字 で 美しく 印刷 さ れ て い まし た 。 # その 言葉 通り に する の は 悪い こと で は あり ませ ん が 、 賢い アリス は それ に は 飛びつき ませ ん でし た 。 「 いいえ 。 最初 に きちんと 見 なく ちゃ ね 」 と 彼女 は 言い まし た 。 「 で 、 その 瓶 に 「 毒 」 と いう 文字 が ある か どう か 、 見 なく ちゃ ね 」 。 と いう の は 彼女 は 、 友達 が 教え て くれ た 簡単 な ルール を 忘れ た ばかり に 、 やけど し たり 、 野獣 に 食べ られ たり 、 ほか の 恐ろしい 事柄 に 見舞わ れ て しまっ た 子供 たち の 話 を 、 いく つ か 読ん だ こと が あっ た から な の です 。 その ルール と は 、 こう いう もの でし た 。 赤く 熱い 火 掻 棒 は 、 長く 持ち すぎ て いる と 焼け ど する 。 ナイフ で 指 を とても 深く 切っ て しまう と 、 大抵 血 が 出る 。 そして 彼女 は 、 もし 「 毒 」 と 書か れ た 瓶 を 飲み すぎる と 、 遅かれ 早かれ 、 ほとんど 間違い なく 体 に 害 を 与え て しまう 、 と いう ルール を 忘れ て は い ませ ん でし た 。 # しかし 、 この 瓶 は 「 毒 」 と は 印さ れ て い ませ ん でし た 。 そこ で アリス は 思い切っ て それ を 舐め て み まし た 。 とても よい 味 でし た 。 ( 実際 、 瓶 は チェリー ・ タルト 、 カスタード 、 パイナップル 、 炙り 七 面 鳥 、 タフィー 、 そして 熱い バター ・ トースト が 混ぜ合わさっ た よう な 味 でし た ) 。 彼女 は すぐ に それ を 飲み干し て しまい まし た 。 # 「 なん て ヘン てこ な 気分 かしら ! 」 と アリス は 言い まし た 。 「 私 は 望遠 鏡 の よう に 縮ん で いっ てる に 違い ない わ 」 # 実際 に そう でし た 。 彼女 は 今 、 ほんの 10 インチ しか あり ませ ん でし た 。 そして 小さな ドア を 通っ て あの ステキ な 庭 に いく の に 調度 よい 身長 に なっ た こと が 分かる と 、 彼女 の 顔 は 明るく なり まし た 。 しかし 、 初め に 彼女 は 何 分 か 待っ て 、 これ 以上 縮ま ない か どう か を 確かめ まし た 。 彼女 は 少し 神経 質 に なっ て まし た 。 「 だ って そう よ ね 」 と アリス は 独り言 を 言い まし た 。 「 蝋燭 の よう に 全部 消え て しまう か も しれ ない でしょ 。 そう なっ たら 、 私 は どんな 風 に なる の かしら ? 」 そして 彼女 は 蝋燭 が 吹き消さ れ た あと 、 蝋燭 の 炎 が どう なっ て いる か を 想像 しよう と し まし た 。 と いう の は 彼女 は 今 まで に その よう な もの を 見 た こと が ある か どう か 、 覚え て い なかっ た から です 。 # 少し し て 、 これ 以上 何 も おき ない と 分かる と 、 彼女 は すぐ に 庭 に 行く こと に し まし た 。 しかし 哀れ な こと に 、 扉 に たどり着い た 時 、 彼女 は あの 小さな 金 の 鍵 を 忘れ た こと に 気付き まし た 。 そして それ を 取り に テーブル に 戻る と 、 鍵 に は 手 が 届か ない こと が 分かり まし た 。 彼女 は 硝子 ごし に 鍵 を はっきり と 見る こと が でき た し 、 テーブル の 脚 を なん と か よじ登ろう と も し まし た が 、 それ は 余り に つるつる と 滑り やすかっ た の です 。 そして 彼女 は 登る の に 疲れ て しまう と 、 座り込ん で 泣き まし た 。 # 「 しっかり する の よ 、 こんな 風 に 泣い た って 何 の 役 に も 立た ない わ ! 」 アリス は 少し 厳しく 自分 自身 に 言い聞かせ まし た 。 「 今 すぐ 泣く の を やめ なさい ! 」 彼女 は いつ も は とても よい 忠告 を 自分 自身 に あたえ ( もっとも 滅多 に それ に は 従わ ない の です が ) 、 時 に は 眼 に 涙 を 浮かべる ほど 厳しく 自分 自身 を 叱る の です 。 一 度 など 彼女 は 自分 で 遊ん で い た ク ロケット の 試合 で 、 ズル を し た と いっ て 、 自分 自身 の 耳 を 殴りつけ た こと すら あっ た の です 。 この 奇妙 な 子供 は 一人 で 二 役 を し たがる 癖 を 持っ て い まし た 。 「 で も 、 今 は 駄目 だ わ 」 と 可哀想 な アリス は 思い まし た 。 「 一人 で 二 役 する なんて ! もう 一人 の 立派 な 人間 の 役 を する だけ の 余裕 が ない わ 」 # 少し する と 、 テーブル の 下 に 小さな 硝子 箱 が ある の が 眼 に とまり まし た 。 開け て みる と 、 中 に は とても 小さな ケーキ が 入っ て い まし た 。 その 上 に は 「 私 を 食べ なさい 」 と いう 文字 が 、 干し 葡萄 で 書か れ て い まし た 。 「 で は 、 食べる こと に し ましょう 」 と アリス は いい 、 「 もし 大きく なっ たら 、 鍵 に 手 が 届く し 、 もっと 小さく なる ん だっ たら 、 扉 の し た から 這い出る こと が できる わ 。 どっち に し て も 、 庭 に は 行ける し 、 どっち が 起き て も 気 に し ない わ 」 # 彼女 は 少し だけ 食べ て 、 心配 そう に 独り言 を 言い まし た 。 「 どっち かしら ? どっち かしら ? 」 手 を 頭 の 上 に 置い て 、 どっち が 起きる か を 感じよう と ま し た 。 そして 身長 が 変わら ない こと に 気付い て 、 彼女 は 大変 驚き まし た 。 はっきり 言え ば 、 この こと は 人間 が ケーキ を 食べる とき に 普通 起きる こと です 。 しかし アリス は 有り 得 な いこ と ばかり を 想像 し て まし た から 、 そんな 風 な ありきたり の 生活 が 続く こと が 酷く つまら なく 、 馬鹿馬鹿しい こと の よう に 思え て い た の です 。 # と いう の で 彼女 は 作業 を 続け 、 すぐ に ケーキ を 食べ 終え て しまい まし た 。 # 涙 の 水溜り # 「 ろ ん ろ ん 、 ろ ん ろ ん 、 おかしく なっ て いく わ ! 」 と アリス は 叫び まし た 。 ( 彼女 は とても 驚い た の で 、 ちょっと の 間 、 きちんと し た 言葉 を 喋れ なく なっ て い まし た ) 。 「 今 や 世界 一 大きな 望遠 鏡 の よう に 、 体 が 伸び て いる わ ! 足 さん 、 さようなら ! 」 ( と いう の は 足 を 見下ろし た とき 、 それ は ほとんど 視野 から 外れ て 行っ て しまっ て い た から でし た 。 足 は 遠く に なっ て いき まし た ) 。 「 私 の 可哀想 な 小さな 足 ! 誰 が お前 に 靴 や 靴下 を 履か せ たり する の かしら ? 私 が でき ない の だけ は 確実 ね ! あまり に 遠 すぎ て 、 お前 の 世話 なんか でき ない わ 。 お前 は できる だけ 頑張っ て 、 自分 で 自分 の こと を し なく ちゃ ね 。 で も 私 は 足 に 親切 に し て やら なく ちゃ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 で ない と 足 は 私 の 思う 方 へ 歩い て くれ ない だろう し ! えーと 。 クリスマス に は 毎回 、 新しい ブーツ を 買っ て やる こと に しよう 」 # そして 彼女 は どの よう に する か を 考え 続け まし た 。 「 ブーツ は 配達 し て もらわ ない と ね 」 と アリス は 考え 、 「 で も どんな に おかしく 見える かしら ね 、 自分 の 足 に プレゼント を 贈る なんて ! それ に あて先 も ヘン よ ! # 暖炉 県 絨毯 市   暖炉 格子 区   アリス の 右足 様   ( アリス より 愛 を 込め て ) # って 、 私 、 なんて 馬鹿 な こと を 喋っ て いる ん だろう ! 」 # そう 言っ た とたん 、 頭 が 広間 の 天井 に ぶつかり まし た 。 実際 に は 今 や 彼女 の 身長 は 9 フィート 以上 に なっ て おり 、 彼女 は すぐ に 小さな 金 の 鍵 を 取り上げる と 、 庭 の 扉 に 急ぎ まし た 。 # 可哀想 に アリス ! 腹ばい に なっ て 扉 から 庭 を 片目 で 覗き込む の が 、 彼女 に できる 精 一杯 の こと でし た 。 しかし そこ を 通り抜ける の は 、 これ まで 以上 に 不 可能 な よう に 見え まし た 。 彼女 は 座っ て また 泣き 始め まし た 。 # 「 恥 を 知り なさい ! 」 と アリス は いい まし た 。 「 お前 の よう な 大きな 女の子 が 」 ( こう 言う の も もっとも です 。 今 の アリス は 9 フィート も あり ます から ね ) 「 こんな 風 に 泣き 続ける なんて ! 今 すぐ 泣く の を やめ なさい 、 命令 よ ! 」 しかし 彼女 は 同じ よう に 泣き 続け 、 何 ガロン もの 涙 を 流し まし た 。 仕舞い に は 彼女 の 周り に は 大きな 水溜り が でき まし た 。 水溜り は 4 インチ も の 深 さ が あり 、 広間 の 半分 に まで 広がっ て い まし た 。 # しばらく たつ と 、 遠く の 方 で 何 やら 小 さ な パタパタ 言う 足音 が 聞こえ まし た 。 彼女 は 急い で 泣く の を 止め て 、 何 が 来る か を 見よう と し まし た 。 それ は あの 白 兎 が 戻っ て くる ところ でし た 。 片手 に 羊皮 の 白 手袋 、 もう 片手 に 大きな 扇子 を もっ て 、 素晴らしく 着飾っ て い まし た 。 彼 は 非常 に 慌て て 駆け足 し 、 ぶつぶつ と 独り言 を 言い ながら 出 て き まし た 。 「 ああ ! 公爵 夫人 、 公爵 夫人 ! こんな に 待た せ て しまっ て 、 凶暴 に なっ て なけれ ば いい が ! 」 アリス は やけっぱち に なっ て い て 、 誰 で も いい から 助け を 求める 気 に なっ て まし た から 、 兎 が 彼女 の 傍 に 来 た とき 、 彼女 は 低く 、 おどおど し た 声 で 「 済み ませ ん 、 よろしけれ ば ・ ・ ・ 」 と やり まし た 。 兎 は びっくり し て 城 の 皮 手袋 と 扇子 を 落とし 、 できる 限り の 速 さ で 暗がり に 走り去っ て しまい まし た 。 # アリス は 扇子 と 手袋 を 拾い上げ まし た 。 広間 は とても 暑かっ た の で 、 彼女 は ずっと あおぎ 続け ながら 喋り まし た 。 「 さてさて ! 今 - 日 は なん て 奇妙 な こと ばかり な の かしら ! 昨日 は 普通 通り だっ た 。 夜 の うち に 何 か 私 に 変化 で も 訪れ た の かしら 。 考え て みよう 。 今朝 起き た とき 、 私 は 同じ だっ た かしら ? 少し 違っ た 気 が し た けど 。 で も 私 が 同じ で ない と し たら 、 次 の 疑問 は 、 一体 全体 私 は 誰 ? と いう こと に なる わ ね 。 ひ ー 、 これ って 難問 だ わ ! 」 そして 彼女 は 自分 と 同い年 の 、 知り合い の 子供 たち を 片っ端 から 思い出し はじめ まし た 。 自分 が 、 彼 ら の うち の どれ か に 変身 し て ない か 、 考え ながら 。 # 「 エイダ で ない の は 確か だ わ 」 と アリス は 言い まし た 。 「 彼女 の 髪 は 長い 巻き毛 だ けど 、 私 の は 全然 巻き毛 じゃ ない もの 。 マーベル で は ない の も 確か だ わ 。 なぜ って 、 私 は 何 で も 知っ て いる けど 、 彼女 と き たら 、 ほとんど 何 も 知ら ない もの ! それ に 、 彼女 は 彼女 で 、 私 は 私 だ し 。 それ に ・ ・ ・ 全く これ は 厄介 な 問題 ね 。 知っ て いる こと を 全部 覚え て いる か どう か 、 試し て みよう 。 えーと 。 4 かける 5 は 12 、 4 かける 6 は 13、4 かける 7 は ・ ・ ・ 待っ て ! こんな 調子 じゃ 、 絶対 に 20 まで たどり着け ない わ ! 大体 九九 の 表 は 重要 で ない し 。 地理 に し て みよう 。 ロンドン は パリ の 首都 です 。 パリ は ローマ の 首都 です 。 そして ローマ は ・ ・ ・ 駄目 、 これ は 全然 違う 、 確か に 違う わ ! 私 は マーベル に なっ ちゃっ た ん だ わ ! 『 どんな に 小 さ な ・ ・ ・ 』 を 暗誦 し て みよう 。 」 そして 彼女 は 暗誦 の 授業 の 時 の よう に 、 膝 の 上 に 手 を 組 ん で 始め た の でし た 。 しかし 彼女 の 声 は かすれ て ヘン に なっ て い て 、 言葉 は 前 と 同じ よう に は 出 て き ませ ん でし た 。 # どんな に 小さな ワニ が 輝く 尻尾 を 改善 し て いく こと だろう 、 ナイル 中 の 水 を 注ぐ 全て の 黄金 の 鱗 に ! # どんな に 楽し げ に 鰐 は 笑う こと だろう 、   どんな に 綺麗 に 爪 を 広げる こと だろう 、   そして 小さな 魚 を 誘い込む こと だ ろう   優し げ に 笑う 顎 で も って ! #   どんな に 小さな 働き者 の ミツバチ が 輝く 一 時間 を 改善 し て いく こと だろう 一 日 中 蜂蜜 を 集める 全て の 咲い た 花 から ! # どんな に 巧み に 蜜蜂 は 巣 を 造る こと だろう ! どんな に 綺麗 に ワックス を 塗る こと だろう ! そして 勤勉 に 巣 を 埋める こと だろう 自分 で 作っ た 甘い 食べ物 で も って 。 # 「 こんな の 正しい 文句 じゃ ない わ 。 」 と アリス は 言い まし た 。 そして 彼女 は 続け ながら 、 また 眼 を 涙 で 一杯 に し まし た 。 「 結局 、 私 は マーベル だっ た の よ 。 私 は あの ブタ 小屋 の よう な 小さな 家 に 行っ て 住ま なく ちゃ なら ない 。 玩具 も ない わ 。 それ に 沢山 の 習い事 が ある わ ! いいえ 、 決心 し た わ 。 もし 自分 が マーベル だっ たら 、 ここ に 居よう ! 誰 か が 上 から 『 出 て き なさい ! 』 と いっ て も 無駄 だ わ 。 私 は 上 を 見上げ て こう 言う だけ 。 『 じゃ 、 私 は 誰 な の ? それ を 先 に 教え て もらっ て 、 それ から その 人 に なる の が 好き だっ たら 、 私 は 出 て くる わ 。 そう で なかっ たら 、 誰 か 他 の 人 に なる まで ここ に 居る わ 。 』 - で も 、 」 と アリス は 突然 涙 を 噴き出し ながら 叫び まし た 。 「 誰 か が こっち を 覗い て くれる と いい ん だ けど ! ここ に 一人ぼっち で いる の は もう 疲れ た わ ! 」 # こう いう と 彼女 は 自分 の 手 を 見下ろし まし た 。 する と 驚い た こと に 、 彼女 は 話 し て いる 間 に 兎 の 小さな 革 手袋 を 付け て い た の です 。 「 どう し て こんな こと が 出来 た の かしら ? 」 彼女 は 考え まし た 。 「 私 、 また 小さく なっ て いる ん だ わ 。 」 彼女 は 立ち上がっ て テーブル に 行き 、 それ を 使っ て 身長 を 測り まし た 。 知恵 を 振り絞っ て 考える と 、 彼女 は 今 大体 2 フィート の 背丈 で 、 そして 急速 に 縮ん で いる の です 。 彼女 は すぐ に この 原因 は 手 に 持っ て いる 扇子 だ と 気付い て 、 慌て て それ を 落とし まし た 。 危く 縮ん で 無くなっ て しまう ところ でし た 。 # 「 危なかっ た わ ! 」 と アリス は 突然 の 変化 に 大層 震え て 言い まし た 。 しかし 自分 が まだ 消え て い ない こと が わかっ て とても 喜び まし た 。 「 さあ 、 庭 に 行き ましょう ! 」 そして 小さな 扉 へ 戻ろう と 、 できる だけ の 速 さ で 駆け寄り まし た 。 しかし 、 なん と いう 事 でしょう ! 小さな 扉 は また 閉まっ て おり 、 小さな 黄金 の 鍵 は また 前 と 同じ よう に テーブル の 上 に あり まし た 。 「 前 より 事態 は 悪く なっ た わ 」 と 可哀想 な 子供 は 思い まし た 。 「 今 まで こんな に 小さく なっ た こと は 無かっ た もの ! 無かっ た ん だ から ! これ は ひどい と 断言 できる わ ! 」 # こう 言い ざま 、 彼女 は 足 を 滑らし まし た 。 そして 次 の 瞬間 、 ざぶん ! と 顎 まで 塩水 に 浸かり まし た 。 最初 に 彼女 が 思っ た の は 、 海 に 落ち た ん じゃ ない か 、 と いう こと でし た 。 「 そう だ と し たら 、 汽車 で 帰れる わ 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 ( アリス は これ まで に 一 度 だけ 海辺 に 行っ た こと が あり まし た 。 そして その 経験 から こんな 考え を 持っ て い まし た 。 イギリス の 海岸 は どこ に 行っ て も 海 に は 沢山 の 移動 更衣 車 が あり 、 子供 たち は 木 の シャベル で 砂 を 掘っ て おり 、 海 の 家 の 列 が あり 、 その 後ろ は 駅 でし た 。 ) しかし 、 すぐ に 彼女 は 自分 が 涙 の 水溜り に いる こと が 分かり まし た 。 それ は 彼女 が 9 フィート の 大き さ の 時 に 泣い て 造っ た もの でし た 。 # 「 こんな に 泣く ん じゃ なかっ た ! 」 と 出口 を 探し て 泳ぎ ながら アリス は 言い まし た 。 「 今度 は 自分 の 涙 で 溺れ て しまう 罰 を 食らう ハメ に なっ た わ ! 全く おかしな 話 よ ね ! で も 今日 は 全て の こと が へんてこ だ わ 。 」 # 調度 その 時 、 少し 離れ た ところ で 何 か バ シャ と いう 音 が 聞こえ まし た 。 そして 彼女 は それ が 何 か 確かめよう と 、 近く に 泳い で いき まし た 。 最初 、 それ は セイウチ か 河馬 だ と 思い まし た が 、 自分 が 今 は 小さく なっ て いる こと を 思い出す と 、 彼女 は すぐ に それ は 単なる ネズミ だ と いう こと に 気 が つき まし た 。 ネズミ も 彼女 と 同じ よう に 滑っ て 水 に 落ち た の でしょう 。 # 「 この ネズミ に 話しかける の は 、 」 と アリス は 考え まし た 。 「 意味 が ある こと かしら ? ここ で は 全て の こと が 普通 で ない から 、 ネズミ も きっと 口 がき ける でしょう 。 どっち に し た って 、 試し て 見 て も 損 は ない わ 。 」 彼女 は 話しかけ まし た 。 「 ネズミ よ 、 この 水溜り から 出る に は どう し たら いい かしら ? ここ で 泳い で いる の に とっ て も うんざり し た の 、 ネズミ よ ! 」 ( アリス は これ が ネズミ に 話しかける 正しい やり 方 だ と 思っ て い まし た 。 彼女 は そんな こと を し た こと は 無かっ た の です が 、 兄 の ラテン 語 文法 の 本 の 中 に 、 こう いう の が ある の を 思い出し た の です 。 「 ネズミ は 、 ネズミ の 、 ネズミ へ 、 ネズミ を 、 ネズミ よ ! 」 ネズミ は 幾ら か 怪訝 そう に 彼女 を 見つめ まし た 。 その 小さな 眼 の 一 つ が 瞬き を し た よう に 彼女 に は 見え まし た が 、 ネズミ は 何 も 言い ませ ん でし た 。 # 「 たぶん 、 英語 が 分から ない ん だ わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 ウィリアム 征服 王 と 一緒 に 来 た 、 フランス の ネズミ か も しれ ない 。 」 ( こう 思っ た の は 、 アリス に は 歴史 の 知識 が 余り なく 、 歴史 上 の 事件 が どれ ほど 前 に 起き た の か 、 はっきり と は 分から なかっ た から な の でし た 。 ) それ で 彼女 は また 続け まし た 。 「 ウ エ マ シャ ? ( 私 の ネコ は どこ かしら ? ) 」 それ は 彼女 の フランス 語 の 本 の 最初 の 文章 でし た 。 鼠 は 水 から 突然 跳び 出 て 、 恐怖 で 体 全体 が 震え て いる よう でし た 。 「 あれ 、 御免 なさい ! 」 アリス は この 可哀想 な 動物 の 気分 を 害し た か と 思っ て 、 急い で 大声 で 謝り まし た 。 「 あなた が 猫 嫌い と いう の を すっかり 忘れ て まし た 。 」 # 「 猫 嫌い だ って ! 」 と 鼠 は キーキー と 感情 的 な 声 で 叫び まし た 。 「 もし 君 が 僕 だっ たら 猫 が 好き か い ? 」 # 「 そう ね 、 多分 スキ で ない でしょう 」 と アリス は 穏やか な 調子 で 答え まし た 。 「 そんな に 怒ら ない で 。 で も 私 の 猫 の ダイナ を 見せ て あげ たい わ 。 見 さえ すれ ば 、 猫 を 好き に なる と 思う わ 。 ダイナ は それ ほど 、 ステキ で 穏やか な もの な の よ 。 」 と アリス は 水溜り で 怠惰 に 泳ぎ ながら 、 半分 は 自分 に 言い聞かせる よう に 、 続け まし た 。 「 そして 暖炉 の 傍 に 座っ て ゴロゴロ 言う の 。 前足 を 舐め たり 、 顔 を 洗っ たり し ながら - ダイナ は 愛らしく て 柔らかく て 可愛 がり たく なる わ - おまけ に ダイナ は 鼠 捕り の 大した 腕前 を 持っ て いる の よ - あら 、 御免 なさい ! 」 アリス は また 大声 で 謝り まし た 。 今度 は 鼠 は 怒り で 全 身の毛 を 逆立て て おり 、 彼女 は 自分 が とても 彼 を 怒ら せ た と 確か に 感じ まし た から 。 「 あなた が お 嫌 なら 、 私 たち 、 もう ダイナ の こと は 話さ ない よう に し ましょう 」 # 「 全く だ ! 」 と 鼠 は 尻尾 の 先 まで 震え ながら 叫び まし た 。 「 まるで 、 そんな こと に つい て 僕 が 話す みたい じゃ ない か ! 僕 の 一族 は ずっと 猫 嫌い な ん だ ぞ 。 汚らしい 、 低級 で 、 卑しい イキ モノ ! 二 度 と その 名前 は 聞き たく ない ね ! 」 # 「 私 も 話さ ない わ ! 」 と アリス は 言っ て 、 できる だけ 急い で 会話 の 話題 を かえよう と し まし た 。 「 あなた は - あなた は 好き です - か - か 、 犬 が ? 」 鼠 は 応え ませ ん でし た の で 、 アリス は 熱心 に 続け まし た 。 「 私 の 家 の 近く に ステキ で 小さな 狗 が いる の 。 あなた に 見せ て やり たい くらい 。 小さな 輝く 眼 を し た テリア よ 。 ええ 、 長く て カール し た 茶色い 髪 の ! で 、 物 を 投げ たら 取っ て くる の 。 それ に 、 ちんちん を し て ご飯 を ねだる の よ 。 それ から 色んな こと が できる わ - 半分 も 覚え て ない けど - それ から 、 その 犬 は 農家 の もの な の 。 その 農家 の 人 は 言っ て た わ 。 彼 は とても 役 に 立つ って 、 何百 ポンド もの 値打ち が ある って ! つまり それ は 鼠 を 全部 殺し て しまう から な ん だ けど - あら 、 待っ て ! 」 と アリス は 済ま ない よう な 声 で 叫び まし た 。 「 彼 を また 怒ら せ て しまっ た みたい だ わ ! 」 鼠 は 力 いっぱい 彼女 から 泳ぎ去っ た の で 、 その 後 に は 大きな 波 が たち まし た 。 # それ で 彼女 は 呼びかけ まし た 。 「 鼠 さん ! お 願い 戻っ て き て 、 お すき で ない なら 猫 も 犬 も 話し ませ ん から ! 」 鼠 は これ を 聞い て 、 向き を 変え て ゆっくり と 彼女 の ところ へ 泳ぎ 帰り まし た 。 鼠 の 顔色 は ひどく 青白い もの でし た ( 怒っ て いる の ね 、 と アリス は 思い まし た ) 。 そして 低く おびえ た 声 で 言い まし た 。 「 岸 に 行こう 、 そ し たら 私 の 昔話 を 聞か せる よ 。 そう すれ ば 、 君 は なぜ この 僕 が 猫 と 犬 が 大嫌い な の か 、 分かる だろう よ 」 # それ は 調度 良い 時間 でし た 。 と いう の は 水溜り は 、 落ち込ん で き た 鳥 や 動物 で 酷く 込ん で き た から です 。 あひる と ドードー 、 鸚鵡 に 鷲 の 子 、 その ほか の 奇妙 な 生物 が そこ に は 居 まし た 。 アリス は 先頭 に 立ち 、 全員 が その 後 に つい て 岸 に 泳い で いき まし た 。 # 政党 集会 レース と 長い 尾 話 # 岸 に 上がっ た その 動物 たち は 、 実 に 奇妙 な なり を し て い まし た 。 濡れ て 汚れ た 羽 を し た 鳥 たち 、 濡れ て ぺったんこ に なっ た 毛皮 を し た 動物 たち 。 みんな ずぶ濡れ で 、 不 機嫌 で 、 不 愉快 でし た 。 # 最初 の 疑問 は もちろん 、 どの よう に し て 乾かす か 、 でし た 。 みんな は その 事 に つい て 相談 し まし た が 、 数 分 後 に は 、 アリス は これ まで ずっと 友達 だっ た か の よう に 、 親しく 彼 ら と 話し合える よう に なり まし た 。 実際 、 彼女 は 鸚鵡 と ひどく 長い 論争 を し た の で 、 最後 に は 鸚鵡 は すね て 「 ワシ は お前 さん より 年長 な ん だ から 、 ずっと よく 知っ て いる ん だ 」 と 言う のみ でし た 。 で も アリス は 鸚鵡 の 年 を 知り ませ ん でし た から 、 この こと に つい て は 承知 し ませ ん でし た 。 そして 鸚鵡 は 全く 自分 の 年 を あかそう と は し ませ ん でし た から 、 それ 以上 は 埒 が あか ない の でし た 。 # 最後 に 鼠 が 呼びかけ まし た 。 ( 鼠 は その 一座 の 頭 の よう でし た ) 。 「 皆 さん 、 座っ て 、 僕 の 言う 事 を 聞い て ください 。 すぐ に み な さん を 十分 に 乾かし ます よ ! 」 一同 は 全員 、 すぐ に 鼠 を 真ん中 に し て 大きな 輪 を つくっ て 座り まし た 。 アリス は 一生 懸命 、 ねずみ を 見つめ まし た 。 と いう の は 彼女 は すぐ に 乾かさ ない と 、 風邪 を 引い て しまう と 感じ た から です 。 # 「 えへん ! 」 と 鼠 は もったいぶっ て 言い まし た 。 「 皆 さん 用意 は 宜しい です か ? これ は 全く もっ て 、 今 まで 僕 が 耳 に し た 中 で 、 一番 無味 乾燥 な 話 な の です よ 。 どう か 静か に し て ください ! 『 遠征 の 理由 を 法皇 に 認め られ た ウィリアム 征服 王 は 、 すぐさま イギリス 人 を 従え た 。 と いう の は イギリス 人 は 上 に 立つ もの を 欲し て い た から で あり 、 近頃 で は 強奪 や 侵略 が 横行 し て い た から で ある 。 マーシャ と ノーザン ブリア の 領主 、 エドウィン と マーカー は ・ ・ ・ 」 # 「 アー ッ 」 と ぶるっ と 震え て 鸚鵡 は 言い まし た 。 # 「 済み ませ ん が ! 」 と ねずみ は 眉 を 顰め ながら も 、 とても 丁寧 に 言い まし た 。 「 何 か 仰り まし た か ? 」 # 「 いや 、 ワシ で は ない ! 」 と 鸚鵡 は 急い で いい まし た 。 # 「 あなた だ と 思っ た の です が 」 と 鼠 は 言い まし た 。 「 ・ ・ ・ 続け ます 。 『 マーシャ と ノーザン ブリア の 領主 たる エドウィン と マーカー は 、 ウィリアム 王 に 忠誠 を 誓っ た 。 そして 愛国 の 徒 、 カンタベリー の 大 僧正 ス タイ ガン ド で すら 、 それ を 得策 と 見 て ・ ・ ・ 』 # 「 何 を 見 た ん だ ? 」 と 家鴨 は 言い まし た 。 # 「 それ を 見 て 」 と 、 鼠 は 些か 不 機嫌 に 応え まし た 。 「 もちろん 、 『 それ 』 が 何 を 意味 し て いる か は 、 お 分かり でしょう 」 # 「 『 それ 』 が 何 を 意味 し て いる か ぐらい 、 知っ て いる よ 。 ぼく が 何 か 見つける 時 、 」 と 家鴨 は 言い まし た 。 「 それ は 大抵 蛙 か 虫 な ん だ 。 問題 は 、 大 僧正 が 何 を 見つけ た か なん だ 」 # 鼠 は この 質問 を 無視 し て 、 急い で 続け まし た 。 「 ・ ・ ・ それ 、 つまり 、 エドガー ・ アー セリング と 共 に ウィリアム 王 に 面会 し 、 王座 に つく よう 勧める こと を 、 得策 と 見 た 。 ウィリアム の 行為 は 最初 は 穏健 な もの で あっ た 。 しかし ノルマン 人 ら の 横暴 は ・ ・ ・ 」 お 嬢 さん 、 具合 は どう です か ? 」 ねずみ は 話し ながら 、 アリス の 方 を 向き まし た 。 # 「 相 変わら ず 濡れ て いる わ 」 と アリス は 憂鬱 そう に 言い まし た 。 「 ちっとも 乾い た よう な 気 が し ない ん です けど 」 # 「 それ なら ば 、 」 と ドードー は 立ち上がり ざま 、 厳か に 言い まし た 。 「 会議 を 散会 し 、 より 活動 的 な 解決 法 の 早急 なる 採択 を 動議 致し ます 。 。 。 」 # 「 日本 語 を しゃべれ ! 」 と ワシ の 子 は いい まし た 。 「 そんな 漢字 熟語 の 意味 なんて 、 半分 も 分から ない よ 。 それ に 、 君 も わから ない ん じゃ ない か な ! 」 そして 鷲 の 子 は 笑い を 隠す ため に 首 を かしげ まし た 。 何 羽 か の 鳥 が 、 くすくす と 忍び笑い を し まし た 。 # 「 私 が 言おう と し た の は 」 と ドードー は 怒っ た よう に 言い まし た 。 「 我々 を 乾かす 最良 の 方法 は 政党 集会 レース だ 、 と いう こと だ 」 # 「 政党 集会 レース って 何 ? 」 と アリス は 言い まし た 。 アリス は 別段 知り たく は なかっ た の です が 、 ドードー が まるで 誰 か が きく の が 当然 だ 、 と いう よう に 一 呼吸 おい て おり 、 そして 誰 も が きこう と し ない よう な の で 、 そう 言っ た の です 。 # 「 うむ 、 」 と ドードー は 言い まし た 。 「 説明 する 最良 の 方法 は 、 それ を する こと だ 。 」 ( そして 、 冬 の 日 に あなた 自身 が この 方法 を 試せる よう に 、 ドードー が どう いう 風 に し た か を 教え ましょう ) # 最初 に ドードー は 円 の よう な 形 に 、 レース の トラック を 描き まし た 。 ( 「 完璧 な 円 で なく て も いい 」 と ドードー は 言い まし た ) 。 それ から 一同 は トラック の あちらこちら に 並び まし た 。 「 1,2 , 3 、 スタート ! 」 は あり ませ ん でし た 。 一同 は 好き な とき に 走り 、 好き な とき に 止め まし た 。 だ から レース が いつ 終わっ た か どう か 、 定か で は あり ませ ん でし た 。 しかし 半 時間 か そこ ら 走り 続け 、 みんな すっかり 元通り に 乾く と 、 ドードー は 突然 言い まし た 。 「 レース 終了 ! 」 そして 一同 は ドードー の まわり に 集まっ て 、 喘ぎ ながら 訊き まし た 。 「 で 、 誰 が 優勝 し た の か な ? 」 # この 質問 に 対し 、 ドードー は 長く 考え込み まし た 。 一 本 指 を 額 に 押し当て た 格好 で ( シェークスピア の 肖像 で 、 よく 見かける ポーズ です ) 、 長い 間 座っ て い まし た 。 その 間 、 一同 は 黙っ て 待っ て い まし た 。 最後 に ドードー が 言い まし た 。 「 みんな が 優勝 し た の だ 。 そして 、 全員 が 賞品 を もらわ なけれ ば なら ない 」 # 「 で 誰 が 賞品 を くれる ん だ い ? 」 と 多く の 声 が 尋ね まし た 。 # 「 誰 って 、 もちろん 彼女 さ 」 と ドードー は 一 本 指 で アリス を 指差し て 言い まし た 。 そして すぐ に 一同 は 彼女 の 周り に 集まっ て 、 「 賞品 ! 賞品 ! 」 と 混乱 し た 様子 で 叫びたて まし た 。 # アリス は どう すれ ば いい か 分かり ませ ん でし た が 、 やけくそ に なっ て ポケット に 手 を 突っこみ 、 糖菓 の 箱 を 引っ張り 出す と ( 幸い 、 塩水 は 中 まで 染みこん で い ませ ん でし た ) 、 みんな に 賞品 と し て 配り まし た 。 調度 一人 一 個 ずつ でし た 。 # 「 しかし 、 彼女 も 賞品 を もらわ なけれ ば なら ない だろ ? 」 と 鼠 は 言い まし た 。 # 「 もちろん 」 と ドードー は 重々しく 応え まし た 。 「 ポケット の 中 に 、 他 の もの は 入っ て ない か ね ? 」 と アリス の 方 を 向い て 言い まし た 。 # 「 指貫 き だけ だ わ 」 と アリス は 悲し げ に 言い まし た 。 # 「 ここ に 持っ て き なさい 」 と ドードー は 言い まし た 。 # そして 一同 は も 一 度 彼女 の 周り に 集まり 、 ドードー は 「 この 優雅 な 指貫 き を お 納め 下さい 」 と いっ て 、 指貫 を 厳か に 与え まし た 。 そして この 短い 献辞 が おわる と 、 みんな は 歓声 を あげ まし た 。 # アリス は この こと 全て を ひどく 馬鹿馬鹿しい と 思い まし た が 、 全員 が とても まじめ に 見え た の で 、 笑い飛ばす 勇気 は あり ませ ん でし た 。 そして 何 か 言う こと も 思いつか なかっ た の で 、 ただ お 辞儀 を し 、 できる だけ 厳粛 そう に し ながら 、 指貫 き を 受け取り まし た 。 # 次 に す べき こと は 、 お 菓子 を 食べる こと でし た 。 物音 と 混乱 が おき まし た 。 大きな 鳥 たち は 味わう に は これ で は 足り な すぎる と 文句 を いい 、 小さな の は 喉 に 詰まら せ 、 背中 を 叩い て もらわ なけれ ば なら なかっ た から です 。 けれど も 最後 に は それ も 終わり 、 みんな は また 丸く なっ て 座り 、 鼠 に 何 か もっと 喋っ て くれ と せがむ の でし た 。 # 「 自分 の 過去 を 話し て くれる って 約束 し て くれ た でしょ ? 」 と アリス は 言い まし た 。 「 それ に ・ ・ ・ ネ と イ が 嫌い な 理由 も 」 彼女 は また 怒ら せ て しまう か も しれ ない 、 と 恐れ ながら も 囁き声 で 付け加え まし た 。 # 「 ぼく の は 長く て 悲しい 『 お はなし 』 な ん だ よ ! 」 と 鼠 は ため息 を つき ながら 、 アリス の 方 を 向い て 言い まし た 。 # 「 尾 は 無し と いっ て いる の に 、 長い 尾 が ある わ ね 」 、 と アリス は 鼠 の 尻尾 を 不思議 そう に 見下ろし ながら 、 言い まし た 。 「 それ に 、 なん で それ が 悲しい の ? 」 。 そして 鼠 が 話 し て いる 間 中 、 彼女 は その こと に つい て 考え 続け て い た の で 、 その 話 に つい て 彼女 が 理解 でき た の は 、 この よう な もの でし た ・ ・ ・ # 「 鼠 が 犬 の 家 に   忍び込ん だ が   見つかっ て 、   主人 の ゲキ ドン は   こう 言っ た 。   『 一緒 に 行こう 、   警察 に 突き   出し て やる 。   来 い 、 知ら ない   なん て 言わ せ ない ぞ 。   裁判 を 受け   さ せ て やる 。   実際 の ところ 、   今朝 は 何 も   する こと が   ない   から な 。 』 # 鼠 は 犬 に いっ た 。 「 旦那 様 、 その よう な 陪審 員 も 裁判 官 も ない 裁判 は 時間 の 無駄 で ない でしょう か 』 『 オレ が 裁判 官 に 、 オレ が 陪審 に なっ て やる 』 と 狡猾 な 犬 は 言い まし た 。 『 オレ が 動機 を 全部 調べ上げ 、 お前 を 死刑 に し て やる 』 」 # 「 君 は マジメ に 聞い て ない ね ! 」 と 鼠 は アリス に 厳しく 言い まし た 。 「 何 を 考え て いる ん だ い ? 」 # 「 御免 なさい 」 と アリス は 素直 に 謝り まし た 。 「 5 回 目 の 話 の 腰 に 来 た ところ でしょ ? 」 # 「 腰 じゃ なく て 結び だ よ ! 」 と 鼠 は するどく 、 大変 怒っ た よう に さけび まし た 。 # 「 結び ! 」 と アリス は 言い まし た 。 アリス は いつ も 人 の 助け に なる よう に 心がけ て まし た から 、 今回 も 辺り を 見回し ながら 「 結び を 解い て いる ん でしょ 、 手伝い ます わ 」 と いい まし た 。 # 「 結び なんか 、 解い て い ない ! 」 と 鼠 は いっ て 、 立ち上がっ て 歩き去ろう と し まし た 。 「 君 は そんな 馬鹿げ た こと を 言っ て 、 僕 を 侮辱 し て いる ! 」 # 「 そんな 意味 で 言っ た ん じゃん じゃ ない の よ 、 」 と アリス は 言い訳 し まし た 。 「 で も あなた は 怒り っぽい わ ! そう でしょ ! 」 # 鼠 は 返事 する 代わり に 、 うなる ばかり でし た 。 # 「 戻っ て お 話 を 終え て 下さい な ! 」 と アリス は 後ろ から 呼びかけ まし た 。 そして 他 の 動物 たち も 呼びかけ に 加わり まし た 。 「 ええ 、 お 願い し ます ! 」 しかし 鼠 は いらいら し ながら 頭 を ふる ばかり でし た 。 そして 少し 足早 に 歩みさろう と し まし た 。 # 「 話 し て くれ ない なんて 、 なんて 残念 な ん だろう ! 」 と 鼠 が 見え なく なる と すぐ に 、 鸚鵡 は ため息 を つき まし た 。 そして 蟹 は 娘 に こう いい まし た 。 「 蟹 子 や ! これ は 度 を 失う な 、 と いう 教訓 だ よ ! 」 「 静か に し て よ 、 ママ ! 」 と 蟹 子 は 少し 怒っ た よう に いい まし た 。 「 ママ に かかっ ちゃ 、 大人しい 牡蠣 だ って 怒ら せ て しまう よ ! 」 # 「 ダイナ が ここ に い たら な ア 、 本当 に ! 」 と アリス は 特に 誰 に 向ける で も なく 、 声 に 出し て 言い まし た 。 「 ダイナ は すぐ に それ を 取っ て 来 て くれる の に ! 」 # 「 えー 、 もし 質問 し て も 宜しけれ ば 、 ダイナ って 誰 でしょう か ? 」 と 鸚鵡 は 言い まし た 。 # アリス は 熱心 に 応え まし た 。 と いう の も 彼女 は いつ も 自分 の ペット に つい て 語り たく て 、 うずうず し て い た から です 。 「 ダイナ は ウチ の 猫 よ 。 信じ られ ない でしょう けど 、 鼠 を 捕まえる こと に かけ ちゃ 、 すごい 腕きき な の よ ! それ に 、 そう 、 鳥 を 追いかけ て いる 姿 と き たら ! ええ 、 ダイナ は 小鳥 を 見 た とたん に 食べ て しまう の よ ! 」 # この 発言 は 一同 の 間 に 大層 な ざわめき を 引き起こし まし た 。 何 羽 か の 鳥 は すぐ に で も 立ち去ろう と し まし た 。 ある 年 取っ た カササギ は たいへん 注意 深く 身支度 を し ながら 言い まし た 。 「 本当 に 帰ら なけれ ば 。 夜 の 空気 は 喉 に よく ない から ね ! 」 カナリア は 震え 声 で 子供 たち に 言い まし た 。 「 さあ お前 たち 行く よ ! もう ねんね の 時間 だ ! 」 色んな 口実 を つけ て 一同 は みんな 立ち去り 、 やがて アリス は 一人 とり残さ れ て しまい まし た 。 # 「 ダイナ の こと を いわ なけりゃ 良かっ た の に な ! 」 と アリス は 憂鬱 に 独り言 を 言い まし た 。 「 ここ じゃ 誰 も ダイナ の こと が 好き じゃ ない よう だ わ 。 ダイナ は 世界 で 一番 ステキ な 猫 だ と いう の に ! ダイナ ! もう 二 度 と 会え ない の か も ! 」 そして ここ で 可哀想 な アリス は また 泣き 始め まし た 。 と いう の は 彼女 は とても 淋しく て 、 元気 が 出 なかっ た の です 。 けれど も 少し 経つ と 、 また 遠く で パタパタ いう 足音 が 聞こえ まし た 。 彼女 は 鼠 が 気 を 変え て 、 自分 の 話 を 終えよう と 戻っ て き た と 半分 期待 し ながら 、 懸命 に そちら を 見あげ まし た 。 # 兎 が ビル を 送りこむ # それ は 白 兎 でし た 。 兎 は 小走り に ゆっくり と 戻っ て き まし た 。 何 か 探し て いる よう で 、 歩き ながら しきり に 辺り を 見回し て い まし た 。 そして 彼女 は 兎 が こう 独り言 を 言う の を 聞い た の です 。 「 公爵 夫人 ! 公爵 夫人 ! 前足 に かけ て ! 毛皮 と 髭 に かけ て ! 私 を 処刑 する って こと は 、 フェレット が フェレット で ある ほど 確実 だ ! 一体 全体 、 どこ に 落とし た ん だろう ? 」 アリス は すぐ に 兎 が 探し て いる の は 扇子 と 白い 羊 革 の 手袋 だ と 気付き 、 彼女 は 親切 に 自分 も 探し 始め まし た 。 しかし 、 どちら も 見つかり ませ ん でし た 。 彼女 が 水溜り で 泳い で から と いう もの 、 全て が 変わっ た よう に 見え まし た 。 硝子 の テーブル と 小さな 扉 の あっ た 大 広間 は 跡形 も なく 消え去っ て い まし た 。 # 彼女 が 探し て いる と 、 ほど なく 兎 は アリス に 気付い て 、 怒っ た 声 で 彼女 に 言い つけ まし た 。 「 おい 、 マリー ・ アン 、 こんな 所 で 何 を し てる ん だ ? すぐ に 家 に 戻っ て 、 手袋 と 扇子 を とっ て 来い ! 今 すぐ に だ ! 」 アリス は 余り に 吃驚 し た の で 、 兎 の 勘違い を 正そう と も せ ず に 、 兎 が 指差す 方 へ 向かっ て まっしぐら に 駆け て いき まし た 。 # 「 彼 は 私 を メイド だ と 勘違い し た ん だ わ 」 と アリス は 走り ながら 独り言 を いい まし た 。 「 私 が 誰 か わかっ たら 、 どんな に 驚く かしら ね ! で も 扇子 と 手袋 は 取っ て 来 て あげよう 。 。 。 もし 見つけ られ た ら の 話 だ けど 。 」 こう 言っ た とき 、 彼女 は 小ざっぱり し た 小さな 家 に 出くわし まし た 。 その 家 の 玄関 に は 明るく 輝く 真鍮 の 門札 が かかっ て おり 、 門札 に は 「 白 野   兎 」 と 彫ら れ て い まし た 。 彼女 は 扇子 と 手袋 を 見つける 前 に 、 本物 の メリー ・ アン に 出会っ て 、 家 を 追い出さ れ ない か 心配 し ながら 、 ノック も し ない で 中 に 入っ て 階段 を 駆け上がり まし た 。 # 「 全く もっ て おかしな 話 だ わ 、 」 と アリス は 独り言 を 言い まし た 。 「 兎 の 使い を する なんて ! こんな 調子 だ と 、 次回 は ダイナ の 使い を し なきゃ なら なく なる わ ね ! 」 そして 彼女 は その こと を 想像 し 始め まし た 。 「 『 アリス お 嬢 様 、 すぐ に ここ に いらし て 、 散歩 の 準備 を なさっ て 下さい ! 』 『 ばあ や 、 すぐ に 行く わ ! で も 鼠 が 鼠穴 から 出 て 行か ない よう に 見張っ て なけれ ば いけ ない の 』 。 で も その よう に ダイナ が 人間 に 命令 する よう に なっ たら 、 みんな は ダイナ を 家 に 置か なく なる わ ね ! 」 # この 時 まで に 、 彼女 は 窓辺 に テーブル の ある 、 こざっぱり し た 小さな 部屋 を 見つけ て い まし た 。 そして テーブル の 上 に は ( 彼女 が 思っ た 通り に ) 扇子 と 2,3 組 の 小さな 白い 羊 革 の 手袋 が あり まし た 。 扇子 と 手袋 を 取り上げ て 、 部屋 を 出よう と し た 調度 その とき 、 彼女 の 眼 は 鏡 の そば の 小さな 瓶 に 気づき まし た 。 今度 は 「 私 を 呑み なさい 」 と いう ラベル は 貼っ て あり ませ ん でし た が 、 それ で も 彼女 は 瓶 の コルク を 抜い て 、 口 を つけ まし た 。 「 何 か 食べ たり 飲ん だり する たび に 、 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 「 何 か 興味 深い こと が 必ず 起こる って 分かっ た わ 。 だ から 、 今度 は この 瓶 を 呑む と どう なる か 、 見 て み ましょう 。 また 大きく なる と いい ん だ けど 。 こんな に ちっぽけ で いる の に は 、 すっかり 飽き飽き し た もの ! 」 # 実際 に そう なり まし た 。 そして 彼女 が 考え て い た より 、 ずっと 早く 変化 は 起き まし た 。 瓶 を 半分 も 飲む 前 に 、 彼女 の 頭 は 天井 に ぶつかり 、 首 の 骨 が 折れ ない よう に 、 屈ま なけれ ば なり ませ ん でし た 。 彼女 は いそい で 瓶 を 下 に 置き 、 言い まし た 。 「 もう 十分 だ わ 。 。 。 もう これ 以上 大きく なら なきゃ いい けど 。 。 。 全く 、 ドア から 出 られ ない わ ・ ・ ・ あんな に 沢山 飲ま なけれ ば 良かっ た の に ! 」 # 残念 な こと に 、 もう それ は 遅 すぎ た の でし た ! 彼女 の 背 は 伸び 続け 、 すぐ に 彼女 は 床 に 跪か なけれ ば なら なく なり まし た 。 さらに 、 伸びる ため の 隙間 さえ なく なり 、 彼女 は 片方 の 肘 を ドア に 押し付け 、 もう 片方 の 腕 を 首 の 周り に 巻きつけ て 、 横 に なら なけれ ば なら なく なり まし た 。 それ で も 彼女 は 大きく なり 続け 、 仕方なし に 彼女 は 窓 から 一 本 の 腕 を 突き出し 、 一 本 の 足 を 煙突 に 突っ込み 、 言い まし た 。 「 もう 何 が おき て も 、 これ 以上 できる こと は ない わ 。 私 は どう なっ て しまう の かしら ? 」 # アリス に とっ て 幸い な こと に 、 魔法 の 小瓶 の 効力 は それ で お しまい で 、 彼女 は それ 以上 大きく なり ませ ん でし た 。 それ で も それ は とても 不快 でし た 。 そして その 部屋 から 抜け出す こと が でき ない よう に 思え た の で 、 彼女 が 不幸 に 思っ た の も 無理 は あり ませ ん でし た 。 # 「 家 に 居 た 方 が ずっと 心地よかっ た わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 家 じゃ 、 いつ も 大きく なっ たり 小さく なっ たり し ない し 、 鼠 や 兎 に 命令 さ れ たり し ない もの 。 あの 兎 穴 を 降り たり し なけれ ば 良かっ た わ 。 。 。 で も 、 。 。 で も 。 。 。 こんな 生活 も 面白い か も しれ ない わ ね ! 一体 、 私 に 何 が 起き た の かしら ! お伽話 を 読ん だ とき 、 そんな こと は 起こり っこ ない と 思っ て い た けど 、 今 じゃ 自分 が その お伽噺 の 真っ 只中 に いる の よ ! 私 に つい て 書か れ た 本 が あっ て も いい はず だ わ 、 きっと ! 大きく なっ たら 、 書く こと に しよう 。 。 。 で も 、 私 、 もう 大きく なっ て いる わ 」 と 彼女 は 悲し そう に 付け加え まし た 。 「 少なく とも 、 ここ じゃ これ 以上 大きく なる スペース が ない わ 」 # 「 で も それ じゃ 、 」 と アリス は 考え まし た 。 「 私 は これ 以上 年 を とら ない の かしら ? ある 意味 じゃ 、 それ は 良い こと ね ・ ・ ・ お ばあ さん に なら ず に 済む もの ・ ・ ・ で も それ だ と ・ ・ ・ いつ まで も 勉強 し て なけれ ば なら ない じゃ ない の ! えーっ 、 それ は 困る わ ! 」 # 「 アリス ったら 馬鹿 ね ! 」 と 彼女 は 自分 で 自分 の 疑問 に 答え まし た 。 「 ここ で どう やっ て 勉強 する と いう の ? この 部屋 は 私 だけ で 精 一杯 な の に 、 これ 以上 教科 書 を 開く 余裕 なんか 全然 ない わ 」 # そして 彼女 は 質問 する 側 に 立っ たり 、 答える 側 に 立っ たり し て 、 うまい 具合 に 会話 を 続け まし た 。 しかし 何 分 か する と 、 外 で 声 が し た の で 、 会話 を やめ て 耳 を そばだて まし た 。 # 「 メリー ・ アン ! メリー ・ アン ! 」 と 声 は 言い まし た 。 「 すぐ に 私 の 手袋 を 持っ て くる ん だ ! 」 そして 階段 を パタパタ と 駆け上がる 足音 が し まし た 。 アリス は 兎 が 彼女 を 探し に 来 た の だ と 知っ て 、 家 が 揺れる ほど 、 ぶるぶる 震え まし た 。 彼女 は 今 や 兎 の 何千 倍 も 大きく なっ て おり 、 兎 を 恐 が る 必要 なんて ない と いう こと を 、 すっかり 忘れ て い た の です 。 # すぐ に 兎 は ドア の ところ まで 来 て 、 それ を 開けよう と し まし た 。 が 、 ドア を 内側 に 開けよう と し て も 、 アリス の 肘 が それ に きつく 押し当て られ て い まし た から 、 うまく 行き ませ ん でし た 。 アリス は 兎 が こう 言う の を 聞き まし た 。 「 じゃ 、 回り こん で 窓 から 入ろう 」 # 「 そう は 問屋 が 卸さ ない わ ! 」 と アリス は 思い まし た 。 そして 兎 が 調度 窓 の 下 まで 来 た の を 見計らっ て 、 突然 腕 を 伸ばし 、 空 を 掴み まし た 。 何 も 捕まえ られ なかっ た の です が 、 小さな 金切り 声 と 何 か が 落ちる 音 、 それ から ガラス が 割れる の が 聞こえ まし た 。 その 音 から 彼女 は 兎 が 胡瓜 の 温室 か 何 か その よう な もの に 落ち た ん だろう 、 と 思い まし た 。 # 次 に 聞こえ た の は 、 怒声 でし た 。 。 。 兎 の 怒声 です 。 。 。 「 パット ! パット ! どこ に いる ん だ ? 」 そして 始めて 聞く 声 が し まし た 。 「 はい 、 こちら に おり ます ! 林檎 を 掘っ て おり ます です 、 旦那 様 ! 」 # 「 なん だ って 、 林檎 を 掘っ て いる だ と ! 」 と 兎 の 怒声 。 「 ここ だ ! 助け て くれ ! 」 ( さらに 何 枚 か 、 硝子 の 割れる 音 ) # 「 さあ パット 、 あの 窓 に いる の は 何 か 、 教え て くれ 」 # 「 もちろん 腕 で あり ます です 、 旦那 様 ! 」 ( 彼 は 「 うん で 」 と 発音 し た ) # 「 腕 だ と 、 この 馬鹿 ! あんな でかい 腕 が ある か ? 窓 一杯 の 大き さ だ ぞ ! 」 # 「 それ が ある の で あり ます 、 旦那 様 。 なん と 言わ れよう と 、 腕 で あり ます 」 # 「 そう か 、 いずれ に しろ 、 腕 に 用 は 無い 。 すぐ に 片付けろ ! 」 # この 会話 が 終わる と 、 しばらく 静か に なり 、 時々 「 イヤ で あり ます 、 旦那 様 。 イヤ と いっ たら イヤ な ん で あり ます ! 」 「 言わ れ た 通り に やれ 、 臆病 者 が ! 」 と いう よう な 囁き声 が 聞こえる ばかり でし た 。 そして 最後 に 彼女 は 腕 を また 伸ばし 、 空 を 掴み まし た 。 今度 は 二 つ の 小さな 金切り 声 と 、 もっと 沢山 の 硝子 が 割れる 音 が し まし た 。 「 なん て 沢山 の 胡瓜 の 温室 が ある ん でしょ ! 」 と アリス は 思い まし た 。 「 あの 人 たち 、 次 に 何 を する の かしら ! 窓 から 私 を 引きずり 出そう って 言う ん なら 、 そう し て もらい たい わ ! ここ に は もう これ 以上 い たく ない もの ! 」 # 何 も 物音 が し ない 時間 が しばらく 続き まし た 。 そして 最後 に 小さな 荷車 が ゴト ゴト いう 音 と 、 とても 多く の 声 が 同時 喋る の が 聞こえ まし た 。 彼女 は こんな 声 を 聞き まし た 。 「 もう 一 本 の 梯子 は どこ だ ? ・ ・ ・ いや 、 おれ は 一 本 だけ だ 。 ビル が 持っ てる ぞ ・ ・ ・ ビル ! 持っ て 来い ! ・ ・ ・ ここ だ 、 この 角 に 立てろ ・ ・ ・ 違う 、 最初 に 繋げる ん だ ・ ・ ・ まだ 半分 の 高 さ に も 届か ない ぞ ・ ・ ・ おっ 、 うまく 行っ た ぞ 。 細かい こと は 気 に する な ・ ・ ・ そら 、 ビル ! この ロープ を 掴む ん だ ・ ・ ・ 屋根 は もつ か な ? ・ ・ ・ 気 を つけろ 、 その 瓦 は ぐらぐら する ぞ ・ ・ ・ お 、 落ち て いく ぞ ! 頭 に 気 を つけろ ! 」 ( 大きな 衝突 音 ) ・ ・ ・ 「 おい 、 誰 が 落とし た ん だ ? ・ ・ ・ ビル だろう ・ ・ ・ 誰 が 煙突 を 降りる ? ・ ・ ・ い ん や 、 オレ は いや だ ! お前 が やれ よ ! ・ ・ ・ オレ だ って イヤ だ よ ・ ・ ・ ビル に やら せよう ・ ・ ・ こい 、 ビル ! ご 主人 様 が お前 に 煙突 を 降りろ 、 と 仰っ て いる ぞ ! 」 # 「 あら 、 じゃ ビル が 煙突 を 降りる こと に なっ た の ね 」 と アリス は 言い まし た 。 「 みんな 嫌 な 事 は 何 で も ビル に 押し付け ちゃう の ね ! 私 、 ビル と 一緒 に 居る の は イヤ だ わ 。 この 暖炉 は 確か に 狭い けど 、 少し は 蹴り上げる こと が できる と 思う わ ね ! 」 # 彼女 は できる だけ 長く 煙突 の 中 に 足 を 突っ込ん で 待ち まし た 。 する と 小さな 動物 が ( 彼女 は それ が どんな 動物 か は 分かり ませ ん でし た ) 煙突 の 中 で ごそごそ いう の を 聞き まし た 。 それ が 彼女 の 真上 に まで 来 た 時 、 彼女 は 独り言 を いい まし た 。 「 これ が ビル ね 」 。 そして 鋭い 蹴り を 一 つ くれ て やり 、 次 に 何 が 起こる か 待ち まし た 。 # 最初 に 彼女 が 聞い た の は 「 ビル が 飛ん で いく ぞ ! 」 と いう 人々 の 声 でし た 。 そして 兎 の 声 が 続き まし た 。 。 。 「 受け止めろ 、 垣根 の 傍 に いる 奴 ! 」 そして 静か に なっ て 、 また 混乱 し た 声 が おき まし た 。 。 。 「 頭 を 上 に しろ ・ ・ ・ ブランデー を 飲ま せろ ・ ・ ・ 喉 に 詰まら せる な ・ ・ ・ どう だ 、 気分 は ? 何 が あっ た ん だ ? 話し て くれ ! 」 # 最後 に 小さく 弱弱しい キーキー 声 が し まし た 。 ( 「 ビル だ わ 」 と アリス は 思い まし た ) 「 えーと 、 ほとんど 分から ない ん だ よ ・ ・ ・ もう いい よ 、 ありがと 。 もう 良く なっ た 。 。 。 で も あんまり 驚い た もん だ から 、 うまく 言え ない ・ ・ ・ ぼく が 知っ て いる の は 、 吃驚 箱 の よう に 、 何 か が ぼく に 向かっ て き た こと だけ さ 。 で 、 ぼく は と いえ ば 、 ロケット の よう に ぶっ飛ん で しまっ た ん だ ! 」 # 「 うん 、 飛 ん だ よ ! 」 と みんな は 言い まし た 。 # 「 家 を 焼き払わ なきゃ なら ん な ! 」 と 兎 の 声 が 言い まし た 。 そこ で アリス は できる だけ 大声 を 出し て 「 もし そんな こと し たら 、 ダイナ を けしかける わ よ ! 」 # すぐ に 死ん だ よう な 沈黙 が 訪れ まし た 。 アリス は 考え まし た 。 「 次 は 何 を する の かしら ! もし 知恵 が ある ん なら 、 屋根 を とる でしょう けど 。 」 1,2 分 後 、 人々 は また 動き 始め まし た 。 アリス は 兎 が こう いう の を 聞き まし た 。 「 手押し 車 一杯 で いい だろう 、 最初 は 。 」 # 「 手押し 車 一杯 の 何 かしら ? 」 と アリス は 思い まし た 。 しかし 彼女 は 長く 考える 必要 は あり ませ ん でし た 。 と いう の も 次 の 瞬間 に は 、 窓 から 小石 の 雨 が うなり声 を 上げ て 飛ん で き た から です 。 幾 つ か の 小石 は 、 彼女 の 顔 に 当たり まし た 。 「 やめ させ ない と 」 と 彼女 は 独り言 を 言っ て 、 大声 を あげ まし た 。 「 こんな こと 、 二 度 と し ない 方 が いい わ よ ! 」 する と 辺り は また 死ん だ よう に 静か に なり まし た 。 # アリス は 小石 が 床 に 落ちる と 、 みんな 小さな ケーキ に なっ て いる こと に 気付い て 驚き まし た 。 そして アイデア が ひらめき まし た 。 「 もし ケーキ を 食べ たら 」 と 彼女 は 考え まし た 。 「 身長 が 変わる はず だ わ 。 これ 以上 大きく なる こと は 有り 得 そう も ない から 、 小さく なる はず だ わ 、 きっと 」 # それ で 彼女 は ケーキ を 一 つ 、 飲み込み まし た 。 嬉しい こと に 、 彼女 は すぐ に 縮み 始め まし た 。 ドア を 通り抜け られる ほど 小さく なる と 、 すぐ に 彼女 は 家 を 抜け出し 、 大変 多く の 小さな 動物 や 鳥 が 外側 で 待っ て いる の を 見つけ まし た 。 哀れ な 小 トカゲ の ビル は 、 二 匹 の モルモット に 支え られ て 真ん中 に 居 まし た 。 モルモット は 瓶 から ビル に 何 か を 与え て い まし た 。 彼 ら は アリス が 現れる と すぐ に 、 彼女 めがけ て 走り 出し まし た 。 しかし 彼女 は 力 の 限り 走りぬけ 、 安全 な 木 の 茂み の 中 に 逃げ込み まし た 。 # 「 最初 に し なけれ ば なら な いこ と は 、 」 と アリス は 森 を ぶらぶら 歩き ながら 言い まし た 。 「 元通り の 大き さ に 戻る こと よ 。 そして 次 に す べき こと は あの ステキ な 庭 に 戻る 道 を 見つける こと よ 。 これ が 一番 いい 計画 だ わ 」 # それ は 疑い も なく 上等 で 、 とても 簡潔 な 計画 の よう に 見え まし た 。 たった 一 つ の 困難 は 、 どの よう に それ を 始めれ ば いい か 、 全く 検討 も つか ない と いう こと でし た 。 そして 彼女 が 森 の あちこち を 懸命 に 見回し て いる うち に 、 頭 の 真上 で 小さな 鋭い 吠え声 が し まし た 。 彼女 は 急い で 見上げ まし た 。 # 巨大 な 子犬 が 大きな 目 で 彼女 を 見下ろし て い まし た 。 そして そっと 前足 を 伸ばし 、 彼女 に 触ろう と し まし た 。 「 おお 、 よし よし ! 」 と アリス は なだめる よう に 言っ て 、 頑張っ て 口笛 を 吹こう と し まし た 。 しかし 彼女 は 犬 が お腹 を すか せ て いる ん じゃ ない か と 思っ て 、 ずっと 酷く おびえ て い まし た 。 もし そう なら 、 どんな に なだめ た 所 で 、 彼女 は 食べ られ て しまう だろう から です 。 # ほとんど 無 意識 的 に 、 彼女 は 小さな 棒切れ を 拾っ て 、 子犬 に 伸ばし まし た 。 すぐ に 子犬 は 喜び を あらわ に し て 、 空中 に 跳びあがり まし た 。 そして 棒切れ に 跳び かかっ て 噛み付き まし た 。 アリス は 大きな 薊 の 後ろ に 隠れ て 、 難 を 逃れ まし た 。 そして 彼女 が 反対 側 から 出 て き た とき 、 子犬 は また 棒切れ に 向かっ て 突進 し 、 それ を 掴もう と し て 転び まし た 。 アリス は 、 これ は まるで いつ 踏み潰さ れる か びくびく し ながら 荷車 と 遊ん で いる よう な もの だ 、 と 思い ながら 、 薊 の 周り を 走り回り まし た 。 する と 子犬 は 棒切れ に 向かっ て 続け て 突撃 し 、 ほんの 少し 走っ て は ずっと 戻っ て くる の を 繰り返し まし た 。 その 間 中 ずっと 吠え 続け 、 最後 に は し た を 口 から 出し て ハアハア 言い ながら 、 遠く の 方 で 座り込ん で しまい まし た 。 大きな 目 は 半分 閉じ て い まし た 。 # これ は アリス に とっ て は 逃げだす チャンス でし た 。 そこ で 彼女 は すぐ に 脱走 を 開始 し 、 息 が 切れ て 、 くたくた に なる まで 走り まし た 。 子犬 の 吠え声 は 遠く の 方 で かすか に 聞こえる だけ でし た 。 # 「 で も 、 なんて 可愛い 子犬 だっ た の かしら ! 」 と アリス は 言い ながら 、 金鳳 花 に よりかかっ て 身体 を 休め 、 その 葉 で 自分 を 扇ぎ まし た 。 「 本当 、 あの 犬 に 芸 を 教え て やり たかっ た けど 、 もし ・ ・ ・ もし 、 私 が それ が できる だけ の 大き さ が あっ た なら ね ! やれやれ ! もう 一 度 大きく なら なきゃ なら な いっ てこ と 、 忘れかけ て た わ ! えーと ・ ・ ・ どう すれ ば いい の かしら ? 何 か 食べ たり 飲ん だり すれ ば いい ん だ と は 思う けど 、 問題 は 何 を ? っ て こと ね 」 # 問題 は 確か に 「 何 を ? 」 でし た 。 アリス は 花々 や 草 の 葉 など の 辺り を 見回し まし た が 、 その 状況 で 食べ たり 飲ん だり する の に 相応しい よう な 物 を 見つける こと が でき ませ ん でし た 。 彼女 の 傍 に は 、 彼女 と 同じ ぐらい の 背丈 の 大きな 茸 が 生え て い まし た 。 彼女 は その 下 を 見 、 両側 を 見 、 後ろ を 見る と 、 その 上 に 何 が ある か も 見 て やろう 、 と いう 考え が 湧き まし た 。 # 彼女 は つま先 で 伸び上がり 、 茸 の 恥 を 覗い て み まし た 。 彼女 の 視線 は すぐ に 大きな 芋虫 に ぶつかり まし た 。 芋虫 は 上 に 座っ て 腕 を 組ん で 黙っ て 長い 水 煙管 を 吸っ て おり 、 アリス や その ほか の 事柄 に は 全然 興味 が ない よう でし た 。 # 芋虫 の 忠告 # 芋虫 と アリス は 暫く の 間 、 黙っ て お 互い 見詰め 合っ て い まし た 。 とうとう 芋虫 は 口 から 水 煙管 を 離し 、 のろのろ と 眠い 声 で 彼女 に 語りかけ まし た 。 # 「 お前 は なにもの だ ? 」 と 芋虫 は いい まし た 。 # これ は 会話 の 始まり と し て は 、 余り ワクワク する よう な もの で は あり ませ ん でし た 。 アリス は 少し 臆病 に なっ て 、 「 私 ・ ・ ・ 芋虫 さん 、 私 は 今 現在 、 自分 が 何もの か 、 ほとんど 分から ない ん です 。 。 。 今朝 起き た 時 に は 自分 が 「 何もの か 」 分かっ て い た ん です が 、 それ から 何 回 か 変わっ ちゃっ た ん で 。 」 # 「 それ は 何 を 意味 し て いる の か な ? 」 と 芋虫 は ピシッと いい まし た 。 「 自分 自身 が なにもの か 、 説明 し なさい ! 」 # 「 自分 自身 を 説明 でき ない ん です 、 ごめん なさい 、 芋虫 さん 」 と アリス は 言い まし た 。 「 なぜ って 、 私 は 自分 自身 じゃ ない ん です もの 、 ね ? 」 # 「 意味 不明 だ 」 と 芋虫 は いい まし た 。 # 「 これ 以上 はっきり さ せる こと は でき そう も ない ん です 」 と アリス は 礼儀 正しく 答え まし た 。 「 と いう の は まず 、 私 は 自分 自身 を 説明 でき ない から です 。 それ に 、 一日 で こんな に いく つ もの 違っ た 大き さ に なる なんて 、 とっても 頭 が ごちゃごちゃ する ん です 」 # 「 そう で も ない だろう 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # 「 うーん 、 たぶん 、 貴方 は まだ その よう な 経験 が お あり じゃ ない ん でしょう 。 」 と アリス は 言い まし た 。 「 で も 蛹 に なれ ば ・ ・ ・ あなた も お 分かり に なる と 思い ます わ ! いつ か 、 きっと ・ ・ ・ それ から 蝶 に なっ た 時 に は 、 ちょっと 変 な 気持ち に なる ん じゃ なく て ? 」 # 「 ちっとも 。 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # 「 そう ね 、 あなた の 感じ は 違う か も しれ ない わ 。 」 と アリス は 言い まし た 。 「 だ けど 、 私 は とっても ヘン に 感じ た の よ 」 # 「 私 、 私 と いう が 一体 」 と 芋虫 は 軽蔑 し た よう に 言い まし た 。 「 お前 は 何 者 だ ? 」 # そこ で 会話 は 振り出し に 戻り まし た 。 アリス は 芋虫 の あまり に 短い セリフ に 少し ムカムカ し て まし た が 、 なん と か 我慢 し て 、 重々しく 言い まし た 。 「 まず あなた が 自己 紹介 する べき じゃ なく て ? 」 # 「 どう し て ? 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # これ は もう 一 つ の 難問 で 、 アリス は いい 理由 を 思いつく こと が 出来 ませ ん でし た 。 そして 芋虫 は ひどく 不 愉快 そう に 見え た の で 、 彼女 は 背中 を 向け まし た 。 # 「 戻っ て 来い ! 」 芋虫 は 彼女 を 呼び まし た 。 「 大事 な こと を 言う ぞ ! 」 # 確か に 、 芋虫 は 何 か 告げ て くれる よう でし た 。 アリス は 振り向い て 、 戻っ て き まし た 。 # 「 癇癪 を 抑えろ 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # 「 それ だけ ? 」 と アリス は できる だけ 怒り を 飲み込み ながら 言い まし た 。 # 「 いや 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # アリス は 他 に する こと が なかっ た の で 、 待っ て みよう と 思い まし た 。 最後 に は 何 か 聞く に 値 する こと を 言っ て くれる か も しれ ない 、 と 。 暫く の 間 、 芋虫 は 何 も 言わ ず に プカプカ やっ て まし た が 、 やっと 腕 を 伸ばし 、 また 水 煙管 を 口 から 離し て 言い まし た 。 「 それ で 、 お前 は 自分 が 変わっ た と 思っ て いる の か ね ? 」 # 「 そう な ん です 、 芋虫 さん 」 と アリス は 言い まし た 。 「 前 の よう に 、 はっきり と 物事 を 覚え て い られ ない ん です 。 それ に 、 十分 と 続け て 同じ 大き さ で 居 られ ない ん です ! 」 # 「 何 を 覚え て られ ない の か ね ? 」 と 芋虫 。 # 「 えーと 、 『 どんな に 小さな 働き蜂 が 』 を 暗誦 しよう と し た ん です けど 、 全然 違う 詩 に なっ ちゃ っ うん です ! 」 と アリス は 悲し そう に 言い まし た 。 # 「 『 年 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 』 を 暗誦 し なさい 」 と 芋虫 。 # アリス は 両手 の 指 を 組ん で 、 始め まし た 。 。 。 # 「 年 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 」 と 若者 は 言っ た 。 「 父 さん の 髪 は 真っ白 だ 。 それ な の に 、 ずっと 頭 で 立ち 続け て いる ・ ・ ・ そんな 年 な の に 大丈夫 か い ? 」 # 「 若い 頃 は 」 と ウィリアム 父 さん は 若者 に 言っ た 。 「 そう する と 脳 を 痛める ん じゃ ない か と 思っ て た 。 だ が 、 今 じゃ そんな こと は 全然 ない こと が 分かっ た 。 さあ やる ぞ 、 何 回 で も やる ぞ 」 # 「 年 だ ね 、 」 と 若者 は 言っ た 。 「 前 に も 言っ た よう に 、 こんな に 異常 に 太っ ちゃっ て 。 それ で も ドア の ところ で 宙返り する ・ ・ ・ 頼む よ 、 その 理由 を 教え て くれ ? 」 # 「 若い 時 に 、 」 と 白髪 の 賢 者 は 言っ た 、 「 手足 を しなやか に し て い た もの だ この 軟膏 を 使っ て な ・ ・ ・ 1 箱 1 シリング だ ・ ・ ・ 少し 買わ ん か ? 」 # 「 年 だ ね 、 」 と 若者 は 言っ た 、 「 父 さん の 顎 は 弱く なっ て 脂身 以外 は 噛め ない な 、 で も 父 さん は 鵞鳥 を 骨 ごと 丸齧り し た 。 。 。 頼む よ 、 その 秘訣 を 教え て くれ ? 」 # 「 若い 頃 は 、 」 と 父 さん は 言っ た 、 「 法律 に 没頭 し た もん だ 、 そして 母 さん と 色々 論争 し た もん だ 、 だ から 顎 の 筋肉 が 強く なっ て 、 死ぬ まで は もつ さ 」 # 「 年 だ ね 、 」 と 若者 は 言っ た 、 「 眼 も ほとんど 前 の よう に は しっかり 見え ない だろ 、 で も 父 さん は 鼻 の 上 に 鰻 を 乗せ て バランス を とっ てる ・ ・ ・ どう し て そんな に 凄い ん だ い ? 」 # 「 もう 三 つ も 質問 に 答え て やっ た ぞ 、 」 と 父 さん は 言っ た 、 「 いい 気 に なる ん じゃ ない ! そんな 下ら ない 話 に 一 日 中 付き合っ て い られる と で も 思っ て いる の か ? 出 て 行け 、 さも ない と 階段 から 蹴り落とす ぞ ! 」 # 老人 の 快楽 と 、 どの よう に し て それ を 得る か # 「 年 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 」 と 若者 は 言っ た 、 残っ た 少し ばかり の 髪 は 白い 。 「 元気 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 。 健康 な 老人 だ 、 頼む よ 、 その 健康 の 秘訣 を 教え て くれ 」 # 「 若い 時 に 」 と ウィリアム 父 さん は 答え た 、 「 青春 は すぐ 去っ て しまう と 知っ て た 。 だ から 最初 に 健康 と 活力 を 浪費 し なかっ た 。 最後 に 必要 に なる か も しれ ない から な 」 # 「 年 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 」 と 若者 は 言っ た 、 「 青春 の 楽しみ が 過ぎ去っ た の に 父 さん は 過ぎ去っ た 時間 を 嘆こう と し ない 。 頼む よ 、 その 理由 を 教え て くれ 」 # 「 若い 頃 に 」 と ウィリアム 父 さん は 答え た 。 「 青春 は 長く は 続か ない と 知っ て た 。 だ から 将来 を 考え て 、 何 で も やっ た 。 後 で 決して 後悔 し ない よう に な 」 # 「 年 だ ね 、 ウィリアム 父 さん 」 と 若者 は 言っ た 。 人生 は 急い で 過ぎ て いく の に 、 父 さん は 楽し そう で 、 死 と 談笑 する の が 好き だ 。 頼む よ 、 その 理由 を 教え て くれ 」 # 「 オレ は 楽しい ん だ 、 息子 よ 」 と ウィリアム 父 さん は 答え た 。 「 気持ち を 大いなる 目標 に 向け て いる の で な 。 若い 頃 に 神 を 知っ た ! そして 主 は オレ の 年 を お 忘れ に なっ て い ない 」 # 「 正しく 言え て ない な 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # 「 完璧 じゃ 無かっ た です 」 と アリス は おどおど と 言い まし た 。 「 幾 つ か の 文句 は 違っ てる と 思い ます 」 # 「 初め から 終わり まで 間違っ て いる 」 と 芋虫 は ピシャリ と 決め付け まし た 。 そして 何 分 か 、 沈黙 が 続き まし た 。 # 芋虫 が 最初 に 口 を 開き まし た 。 # 「 どんな 大き さ に なり たい ? 」 と 尋ね まし た 。 # 「 あら 、 大き さ に 関し て は 適当 で いい ん です 」 と アリス は 急い で 答え まし た 。 「 ただ 、 誰 で も そんな に 頻繁 に 変わる の は 好き じゃ ない でしょ ? 」 # 「 知ら ん 」 と 芋虫 は 言い まし た 。 # アリス は 今 まで こんな に 突っかかっ て 来 られ た こと は あり ませ ん でし た の で 、 段々 腹 が 立っ て き まし た 。 # 「 今 は 満足 し て いる の か ? 」 と 芋虫 。 # 「 えーと 、 でき たら 、 もう ちょっと 大きく なり たい か な ? なん て 」 と アリス は 言い まし た 。 「 3 インチ なんて 、 惨め な 高 さ でしょ 」 # 「 いや 、 大変 良い 高 さ だ ! 」 と 芋虫 は 後足 で 直立 し て 、 怒っ た よう に 言い まし た 。 ( 芋虫 は きっかり 3 インチ でし た ) # 「 で も 、 私 は その 高 さ に 慣れ て ない ん です ! 」 と アリス は 哀れ っぽい 声 で 泣きつき まし た 。 そして 思い まし た 。 「 この イキ モノ が 、 こんな に 怒り っぽく なきゃ いい の に ! 」 # 「 じき に 慣れる さ 」 と 芋虫 は 言っ て 、 水 煙管 を 口 に くわえ 、 また 吸い 始め まし た 。 # 今度 は アリス は 虫 が また 喋り たく なる まで 辛抱 強く 待ち まし た 。 1,2 分 する と 、 芋虫 は 口 から 煙管 を 離し 、 1,2 回 欠伸 を し 、 ぶるっ と 身震い し まし た 。 そして 茸 から 下り て 、 「 片側 は 大きく なる 。 もう 片側 は 小さく なる 」 と いい ながら 、 草 の 中 に 這い 去っ て いき まし た 。 # 「 片側 の 何 ? もう 片側 の 何 ? 」 と アリス は 考え まし た 。 # 「 茸 だ よ 」 と 芋虫 は 彼女 の 声 が 聞こえ た か の よう に 言い まし た 。 そして 次 の 瞬間 に は 見え なく なっ て しまい まし た 。 # アリス は 茸 を 少し の 間 、 茸 を じっと 見つめ ながら 、 どっち が どっち 側 な の だろう か 、 と 考え て い まし た 。 それ は 完全 な 円形 でし た の で 、 彼女 は これ は 難問 だ と 思い まし た 。 しかし 、 最後 に 彼女 は 茸 の 傘 に そっ て 腕 を 出来る だけ 伸ばし て 、 それぞれ の 手 で 茸 の 縁 を 千切り 取り まし た 。 # 「 さて 、 どっち が どっち か な ? 」 と 彼女 は 独り言 を 言っ て 、 右手 の 茸 片 を 試し に 少し だけ 齧り まし た 。 次 の 瞬間 、 顎 の した が 強烈 に 殴ら れ た 感じ が し まし た 。 顎 が 足 に ぶつかっ て しまっ た の でし た ! # 彼女 は この 変化 に 頭 が くらくら し て い た の です が 、 急速 に 背 が 縮ん で いく の で 、 ぐずぐず し て いる 時間 は ない と 思い まし た 。 そこ で もう 片方 を すぐ に 食べ に かかり まし た 。 彼女 の 顎 は 足 に ぴったり くっつい て い て 、 口 を 開く 隙間 が なかっ た の です が 、 やっと こじ開け 、 なん と か 左手 の 茸 片 を 飲み込む こと が でき まし た 。 # 「 やっ た ! やっと 頭 が 自由 に なっ た わ 」 と アリス は 喜ん だ 声 で 言い まし た が 、 次 の 瞬間 に は その 声 は 悲鳴 に なり まし た 。 肩 が どこ に も 見当たら なかっ た から です 。 下 の ほう に 見える の は 、 馬鹿げ て 長い 首 だけ でし た 。 首 は ずっと 下 の 方 に ある 緑 の 葉 の 海 から に ょ きっと 伸び上がっ て いる 茎 よう に 見え まし た 。 # 「 あの 緑 の もの は 何 かしら ? 」 と アリス は 言っ て 「 それ に 、 私 の 肩 は 何処 に 行っ た の かしら ? 私 の 手 も 見え ない けど 、 大丈夫 かしら ? 」 。 彼女 は 喋り ながら 手 を 動かし て み まし た が 、 遠く の 緑 の 葉っぱ が 少し 揺れ た 以外 は 、 何 の 反応 も ない よう に 見え まし た 。 # 手 を 頭 に 持っ て いけ そう に も 無かっ た の で 、 彼女 は 頭 を 手 に 持っ て いこう と し まし た 。 そして   自分 の 首 が ヘビ の よう に どの 方向 へ も 簡単 に 曲げる こと が できる 気 付い て 喜び まし た 。 彼女 は 優美 な ジグザグ の 形 に 首 を 曲げ て 、 葉っぱ の 間 を 潜っ て いき 、 先ほど 彼女 が うろつい て い た 木々 の 天辺 に 行き着き まし た 。 そこ で 鋭い シュッと いう 音 が し た の で 、 彼女 は 急い で 首 を 戻し まし た 。 大きな はと が 彼女 お 顔 に 飛び込ん で き て 、 羽 で 激しく 彼女 を ぶち まし た 。 # 「 ヘビ だ ! 」 と 鳩 は 叫び まし た 。 # 「 私 は ヘビ じゃ ない わ ! 」 と アリス は 憤慨 し て いい まし た 。 「 あっち 行っ て よ ! 」 # 「 ヘビ と 言っ たら ヘビ よ ! 」 と 鳩 は 繰り返し まし た が 、 前 より は 落ち着い た 様子 でし た 。 そして すすり泣く よう に 付け加え まし た 。 「 色んな 方法 を 試し た けど 、 こいつ ら を 諦め させる こと は でき ない みたい 」 # 「 私 、 あなた が 何 を 言っ て いる の か ちっとも 分から ない わ 」 と アリス は 言い まし た 。 # 「 木 の 根 を 試し て み た 。 土手 も 試し て み た 。 垣根 だ って 試し た わ 。 」 と 鳩 は 彼女 に 目 も くれ ず に 続け まし た 。 「 で も 、 こいつ ら ヘビ と き たら ! 満足 する と いう こと を 知ら ない ん だ から ! 」 # アリス は より 一層 混乱 し まし た 。 しかし 彼女 は 鳩 が 言い 終わる まで 、 何 を 言っ て も 無駄 だ と 思い まし た 。 # 「 卵 を 孵す だけ じゃ 、 苦労 が 足り ない と で も 言う の か い ! 」 と 鳩 は 言い まし た 。 「 昼 も 夜 も ヘビ を 見張っ て なきゃ なら ない ん だ よ ! この 3 週間 と いう もの 、 一睡 も し て ない ん だ ! 」 # 「 ご 苦労 なさっ て いる の です ね 、 同情 し ます わ 」 と アリス は 言い まし た 。 彼女 は 段々 鳩 が 言い たい こと が わかっ て き まし た 。 # 「 木木 の 中 で 一番 高い の を 選ん だ 矢先 に 、 」 と 鳩 は 声 を 悲鳴 に し て 続け まし た 。 「 やっと あいつ ら から 自由 に なれ た と 思っ た 矢先 に ! 空 から にょろにょろ 降り て き た ! この くそ ヘビ め ! 」 # 「 で も 私 は ヘビ じゃ ない わ 、 ほんと よ ! 」 と アリス は 言い まし た 。 「 私 は ・ ・ ・ 私 は ・ ・ ・ 」 # 「 さあ ! あなた は 何 ? 」 と 鳩 は 言い まし た 。 「 何 か 考え出そう と し て いる ね ! 」 # 「 私 ・ ・ ・ 私 は 小さな 女の子 よ 」 と アリス は 多少 自信 な さ げ に 言い まし た 。 と いう の も その 日 に 起き た 事柄 が 頭 に 浮かん だ から です 。 # 「 実 に もっとも そう な 話 だ こと ! 」 と 鳩 は ふん と 嘲る よう に 言い まし た 。 「 これ まで 沢山 女の子 を 見 て き た けど 、 そんな 首 を し た の を 見 た こと は ない わ ね ! 嘘 ばっかり ! あなた は ヘビ だ わ 。 違う と いっ て も 無駄 よ 。 次 は 卵 な ん か 食べ た こと なんか 無い って 言い 出す ん でしょ ! 」 # 「 確か に 卵 を 食べ た こと は ある わ 」 と 正直 者 の アリス は 言い まし た 。 「 で も 女の子 は ヘビ と 同じ くらい 、 卵 を 沢山 食べる もの な の よ 」 # 「 信じ ない ね 。 」 と 鳩 は 言い まし た 。 「 たとえ そう だ と し て も 、 それ は 女の子 が ヘビ の 一種 だ と いう こと で しか ない わ 。 そう に 決まっ てる 」 # これ は アリス に は 新しい 発想 でし た の で 、 彼女 は ちょっと 言葉 に つまり まし た 。 それ を 捉え て 、 鳩 は 付け加え まし た 。 「 卵 を 探し てる ん だろ 、 お 見通し さ 。 あたし に とっ て は 、 女の子 だろう が ヘビ だろう が 、 大した 違い は ない ね 」 # 「 私 に とっ て は 大した 違い だ わ 。 」 と アリス は 急い で 言い まし た 。 「 大体 、 私 は 卵 なんか 探し て ない わ 。 もし そう だ と し て も 、 あなた の なん か ほしく ない わ 。 生卵 なんか ほしく ない もの 」 # 「 そう か い 、 じゃ あっち 行け ! 」 と 鳩 は むっつり し た 声 で 言っ て 、 巣 に 戻り まし た 。 アリス は 木々 の 間 を できる だけ 屈ん で 行き まし た 。 と いう の も 首 が 枝 に 絡まっ て しょう が ない から です 。 時 に は 、 立ち止まっ て 首 を ほどく 必要 が あり まし た 。 少し たつ と 、 彼女 は 手 に まだ 茸 が 残っ て いる こと を 思い出し まし た 。 そして 大変 慎重 に 食べ に かかり まし た 。 最初 に 片方 を 、 そして もう 片方 を 齧り まし た 。 時 に は 高く なり 、 時 に は 低く なり 、 遂に いつ も の 高 さ に 戻る こと が でき まし た 。 # 元 の 大き さ に なる まで 、 実 に 長い 時間 たっ て い まし た から 、 最初 は 酷く 奇妙 な 感じ が し まし た 。 しかし 数 分間 たつ と 慣れ て 、 いつ も の よう に 独り言 を 言い 始め まし た 。 「 やっ た わ 、 計画 の 半分 が 達成 でき た わ ! 大きく なっ たり 小さく なっ たり 、 なんて 目まぐるしい ん だろう ! 次 の 瞬間 に 何 が 起こる か 、 見当 も つか ない わ 。 で も 、 正しい 大き さ に 戻っ た 。 次 に する こと は 、 あの 綺麗 な 庭 に 行く こと ・ ・ ・ どう やっ て この 計画 を 実行 すれ ば いい の かしら ? 」 こう 言っ た 途端 、 彼女 は 突然 開け た 場所 に 出 まし た 。 そこ に は 大体 4 フィート くらい の 高 さ の 小さな 家 が あり まし た 。 「 そこ に 誰 が 住ん で いる か 、 分から ない けど 」 と アリス は 思い まし た 。 「 この 大き さ で 会う 訳 に は 行か ない わ 。 私 を 見 たら 、 腰 が ぬけ ちゃう から 。 」 そこ で 彼女 は 右手 の 茸 を また 齧り 始め まし た 。 そして 9 インチ の 高 さ に なる と 、 家 の 近く に 行っ て み まし た 。 # ブタ と 胡椒 # 1、2 分 の 間 、 彼女 は 次 に どう しよう か 、 考え ながら 立っ て 家 を 見 て い まし た 。 する と 突然 、 制服 を 着 た 召使 が 林 の 方 から 走り出 て き まし た 。 。 。 ( 制服 を 着 て いる の で 、 彼女 は その 人 を 召使 と 思い まし た 。 で なけれ ば 顔 から み て 、 魚 だ と 思っ た こと でしょう ) 。 。 。 召使 は 拳 で 音 を 立て て 扉 を 叩き まし た 。 扉 は 開い て 、 制服 を 着 て 、 丸い 顔 と 、 蛙 の よう な 大きな 眼 を し た 別 の 召使 が 出 て き まし た 。 両方 の 召使 は 白粉 が つい て 、 一面 カール し た 髪 を し て いる こと に アリス は 気 が 付き まし た 。 彼女 は 何事 だろう と 思っ て 、 林 の 中 から 少し 這い出し て 、 耳 を そばだて まし た 。 # 魚 の 召使 は 脇の下 から 、 彼 の 背丈 ほど も ある 大層 大きな 手紙 を 取り出す こと から 始め まし た 。 そして 厳か な 調子 で こう いい ながら 、 それ を 別 の 召使 に 手渡し まし た 。 「 公爵 夫人 へ 、 女王 様 から の ク ロケット 試合 の お 誘い で あり ます 」 蛙 の 召使 は 同じ 厳か な 調子 で 、 少し だけ 単語 の 順序 を 変え て 、 繰り返し まし た 。 「 女王 様 から 、 公爵 夫人 へ の ク ロケット 試合 の お 誘い で あり ます な 」 # それ から 二人 し て 低く お 辞儀 する と 、 二人 の 髪の毛 は 絡まり まし た 。 # アリス は これ に 大笑い し た の で 、 聞か れ た ん じゃ ない か と 思っ て 林 に 逃げ帰り まし た 。 やがて 覗い て 見る と 、 魚 の 召使 は 去っ て しまっ て 、 もう 一人 は 馬鹿 の よう に 空 を 見つめ ながら 、 扉 の そば の 地面 に 座っ て い まし た 。 # アリス は びくびく し ながら 扉 に 近づい て 、 ノック し まし た 。 # 「 ノック し て も 無駄 だ よ 」 と 召使 。 「 理由 は 二 つ ある 。 一 つ に は 、 僕 は 君 と 同じ 、 扉 の こちら側 に いる から 。 もう 一 つ は 、 家 の 中 の 人 たち は 大騒ぎ を し て いる の で 、 誰 も ノック に 気付か ない から さ 。 」 確か に 、 中 で は 物凄い 騒音 が し て い まし た 。 ひっきり なし に 泣き喚い たり 、 クシャミ し たり し て いる 音 です 。 そして 時々 、 皿 か ヤカン が 割れる よう な 大きな 音 が し まし た 。 # 「 それ じゃ 」 と アリス は 言い まし た 。 「 どう すれ ば 中 に 入れる かしら ? 」 # 「 ノック する の も 幾ら か 意味 が ある でしょう 」 と 召使 は 彼女 を 気 に せ ず に 続け まし た 。 「 もし 僕 たち の 間 に 扉 が あっ たら 、 例えば 君 が 内側 に い たら 、 君 は ノック し 、 僕 は 君 を 外 に 出し て やる こと が できる だろう ね 。 」 彼 は 話 し て いる 間 中 、 ずっと 空 を 見上げ て い まし た の で 、 アリス は 無礼 だ と 思い まし た 。 「 で も 仕方ない の か も しれ ない わ 」 と 独り言 。 「 この 人 の 眼玉 は 頭 の ほとんど 天辺 に ある ん です もの 。 ただ いずれ に し た って 、 質問 に 答え て くれ て も いい の に 。 。 。 どう やっ て 中 に 入る の です か ? 」 と 彼女 は 大きな 声 で 繰り返し まし た 。 # 「 僕 は ここ に 座っ て いる よ 」 と 召使 は 言い まし た 。 「 明日 まで ・ ・ ・ 」 # この 時 家 の 扉 が 開き 、 大きな 皿 が 召使 の 頭 真っ直ぐ に めがけ て 飛び出し て き まし た 。 皿 は 彼 の 鼻 を 掠め て 、 彼 の 後ろ の 木 に ぶつかっ て 粉々 に 割れ まし た 。 # 「 或いは 明後日 まで か も しれ ない 」 と 召使 は まるで 何 も 無かっ た か の よう に 、 同じ 調子 で 続け まし た 。 # 「 どう すれ ば 入れる の ? 」 と アリス は も 一 度 、 一層 大きな 声 で きき まし た 。 # 「 入り たい ん だ ね ? 」 と 召使 は 言い まし た 。 「 そこ から 始めよう か 」 # 入り たい と いう の は 疑い も 無い こと です 。 アリス は その 応答 が 気 に 入り ませ ん でし た 。 「 本当 に 酷い わ 。 」 と 彼女 は ぶつぶつ 言い まし た 。 「 ここ の イキ モノ たち の 口 の きき よう と いっ たら 。 この まま じゃ 、 こっち が おかしく なっ ちゃ う ! 」 # 召使 は アリス が 黙っ て いる の を 好機 と 思っ た よう で 、 自分 の 物言い を 少し 変え て 繰り返し まし た 。 「 ここ に 座っ て いる よ 」 と 彼 は 言い まし た 。 「 ずっと ずっと 。 何 日 も 何 日 も 」 # 「 で も 私 は 何 を すれ ば いい の ? 」 と アリス は 言い まし た 。 # 「 何 で も する と いい よ 」 と 召使 は いい 、 口笛 を 始め まし た 。 # 「 この 人 と 話し て も 無駄 だ わ 」 と アリス は やけっぱち に なっ て 言い まし た 。 「 この 人 は 完全 に 白痴 だ わ ! 」 そして 扉 を 開け て 中 に 入り まし た 。 # 扉 を 開ける と 大きな 台所 が あり 、 端 から 端 まで 煙 が 充満 し て い まし た 。 公爵 夫人 は 真ん中 で 赤ん坊 を あやし ながら 、 三 本 足 の 腰掛 に 座っ て い まし た 。 料理 人 は コンロ に かがみこん で 、 スープ が 一杯 入っ て いる らしい 大鍋 を かき回し て い まし た 。 # 「 絶対 、 あの スープ に は 胡椒 が 入り すぎ てる わ ! と アリス は クシャミ を し そう に なり ながら 、 独り言 を 言い まし た 。 # 確か に 、 空中 に も 胡椒 が 一杯 でし た 。 公爵 夫人 で さえ 、 時々 くしゃみ し まし た 。 赤ん坊 と 言え ば 、 一時 も 休ま ず に クシャミ と 泣き を 交互 に し て い まし た 。 台所 で クシャミ を し て い ない の は 、 料理 人 と 、 暖炉 の 傍 に 座っ て 耳 まで 口 を 開け て にやけ て いる 猫 だけ でし た 。 # 「 教え て ください ませ ん か 、 」 と アリス は 少し びくつい て 言い まし た 。 と いう の は 彼女 は 自分 が 先 に 喋る の が 礼儀 に かなっ て いる か どう か 、 余り 確か で なかっ た から です 。 「 どう し て あなた の 猫 は あの よう に 笑っ て いる ん です の ? 」 # 「 それ は チェシャ 猫 だ から です 」 と 夫人 は 言い まし た 。 「 それ が 理由 です 。 ブタ ! 」 # 彼女 は 最後 の 言葉 を 急 に 荒々しく 言っ た の で 、 アリス は 飛び上がり まし た 。 しかし 次 の 瞬間 、 それ が 彼女 に で なく 、 赤ん坊 に 向け られ た もの だ と 知っ て 、 勇気 を 出し て また 続け まし た 。 # 「 チェシャ 猫 が いつ も にやにや し て いる と は 知り ませ ん でし た 。 実際 、 猫 が 笑える と は 知り ませ ん でし た 」 # 「 猫 は みんな 笑え ます 。 」 と 夫人 。 「 そして ほとんど の 猫 は 笑う の です 」 # 「 その よう な こと を する 猫 を 、 一 匹 も 知ら ない の です が 」 と 会話 が でき た こと に とても 喜ん で 、 アリス は 丁寧 に 言い まし た 。 # 「 余り 物事 を 知ら ない ね 」 、 と 夫人 は 言い まし た 。 「 全く この 小娘 と き たら 」 # アリス は 彼女 の 言い 方 が 全然 好き じゃ なかっ た の です が 、 何 か 別 の 話題 を 振っ て みよう と 思い まし た 。 彼女 が 何 か 話題 を 考え て いる 間 、 料理 人 は コンロ から スープ の 入っ た 大釜 を 下ろし 、 すぐ に 手 の 届く 限り の もの を みな 、 夫人 と 赤ん坊 に 投げつける こと に とりかかり まし た 。 。 。 手始め に アイロン 、 それ から シチュー 鍋 、 小皿 、 大皿 の 雨 が 続き まし た 。 夫人 は それ ら が 当たっ て も 、 気 に し ませ ん でし た 。 そして 赤ん坊 は 既に 大声 で 泣い て い まし た の で 、 もの が 当たっ て 泣い た の か そう で ない の か 、 見分ける こと が ほとんど でき ない の でし た 。 # 「 すみ ませ ん 、 気 を つけ て ください ! 」 と アリス は 恐ろし さ で 跳ん だり 跳ね たり し ながら 叫び まし た 。 「 あっ 、 鼻 が もげる わ 」 普通 で ない 大き さ の シチュー 鍋 が 赤ん坊 の 鼻 の 傍 を 飛ん で 、 もぎ取っ て いき そう に なっ た の です 。 # 「 もし 誰 も が 他人 の する こと に 口出し し なけれ ば 」 と 夫人 は しわがれ た ガミガミ 声 で 言い まし た 。 「 世界 は もっと ずっと 速く 回る だろう よ 」 # 「 それ は 何 の 得 に も なら ない わ 」 と アリス は 自分 の 知識 を ひけらかす チャンス と 見 て 、 嬉しく 思い まし た 。 「 もし 速く 回っ たら 、 昼 と 夜 が どう なる か 考え て み なさい な 。 地球 は 24 時間 で 一 周 する わ 、 地軸 を 中心 に し て ・ ・ ・ 」 # 「 恥辱 と いい よっ た な 、 」 と 夫人 は 言い まし た 。 「 この 女 の 首 を 刎ねよ ! 」 # アリス は 料理 人 が その 言葉 通り に し ない か と 、 心配 そう に 彼女 を ちらっと 見 まし た が 、 料理 人 は スープ を かき回す の に 忙しく 、 聞い て い ない よう でし た 。 そこ で 彼女 は また 続け まし た 。 「 24 時間 、 です よ ね 。 それ と も 12 時間 だっ た かしら ? 私 ・ ・ ・ 」 # 「 うるさい 女 だ な 」 と 夫人 は 言い まし た 。 「 数字 は 苦手 だ ! 」 そして 子守 唄 の よう な もの を 歌っ て 、 また 子供 を あやし 始め まし た 。 そして 一行 歌い 終える ごと に 、 激しく 子供 を 揺さぶる の でし た 。 # 「 荒々しく 男の子 に 語りかけろ 、 くしゃみ を し たら 叩い て やれ 。 赤ん坊 は 意地 悪 し たく て 泣い て いる だけ だ 、 奴 は クシャミ が 不 愉快 に さ せる と 知っ て いる ん だ 」 合唱 ( 料理 人 と 赤ん坊 が 加わっ て ) ・ ・ ・ 「 ワー ワーワー ! 」 # 二 番 目 の 歌詞 を 歌っ て いる 間 、 彼女 は バレーボール の よう に 赤ん坊 を 激しく 投げ たり 落 と し たり し た の で 、 可哀想 に 赤ん坊 は ひどく 泣い て アリス は 言葉 が ほとんど 聞き取れ ませ ん でし た 。 # 「 私 は 厳しく わが 子 に 語り掛ける 、 くしゃみ を し たら 叩い て やる 。 奴 は 心底 それ で 楽しめる 、 好き な とき に 胡椒 を 楽しめる ! 」 合唱 「 ワー ワーワー ! 」 # 「 そら ! ほしけりゃ 、 少し あやし て も いい よ ! 」 と 夫人 は アリス に 言っ て 、 赤ん坊 を 彼女 に 投げつけ まし た 。 「 行っ て 女王 と の ク ロケット 試合 の 仕度 を し なけりゃ なら ない 」 そして 彼女 は 急い で 部屋 から 出 て 行き まし た 。 料理 人 は 彼女 が 出 て 行く 時 に フライパン を 投げつけ まし た が 、 それ は 危うく 外れ まし た 。 # 赤ん坊 は 奇妙 な 形 を し た 生き物 で 、 手足 を 四方 八方 に 伸ばし て い た の で 、 アリス は 赤ん坊 を 受け止める の に 少し 苦労 し まし た 。 「 ヒトデ の よう だ わ 」 と アリス は 思い まし た 。 受け止める と 赤ん坊 は 蒸気 機関 の よう な 鼻息 を 立て て 、 身体 を 二 つ 折り に し たり 、 また 伸ばし たり し 続け て い た の で 、 最初 の うち は 、 抱い て いる の が 精 一杯 でし た 。 # 赤ん坊 を あやす 正しい 方法 を 理解 する と ( それ は 結び目 の よう に ねじり 、 右耳 と 左足 を きつく 持っ て ほどけ ない よう に する の でし た ) 、 彼女 は 赤ん坊 を 抱い て 外 に 出 まし た 。 「 もし 連れ出さ なかっ たら 、 」 と アリス は 思い まし た 。 「 あの 人 たち は いずれ 赤ん坊 を 殺し て しまう に 違い ない わ 。 あそこ に 置い た まま に する の は 殺人 で なく て ? 」 彼女 は 最後 の 言葉 を 声 に 出し て 言い まし た 。 する と 赤ん坊 は 返事 に ブーブー 言い まし た 。 ( この 時 は くしゃみ は やん で まし た ) 。 「 ブーブー いわ ない の 」 と アリス は 言い まし た 。 「 それ は 自分 の 意見 を 言う の に ふさわしい 言い 方 じゃ ない わ 」 # 赤ん坊 は また ブーブー 言い まし た 。 アリス は 何事 か と 、 じっと 赤ん坊 の 顔 を 覗き込み まし た 。 赤ん坊 の 鼻 は 穴 が 上 を 向い て い まし た 。 本当 の 鼻 と いう より 、 ブタ に よく 似 て まし た 。 それ に 、 眼 も 赤ん坊 に し て は とても 小さく なっ て いく の です 。 この こと から 、 アリス は この イキ モノ が 全く 好き に なれ ませ ん でし た 。 「 で も たぶん 、 単に 泣い て いる だけ な ん だろう 」 と 彼女 は 思っ て 、 泣い て いる か どう か 確かめ に 、 また 眼 を 覗き込み まし た 。 # いえ 、 泣い て い ませ ん でし た 。 「 君 、 もし も ブタ に なる と いう ん なら 」 と アリス は 真剣 に 言い まし た 。 「 もう これ 以上 付き合っ て られ ない わ よ 。 気 を つけ なさい ! 」 赤ん坊 は また すすり泣き 始め まし た 。 ( 或いは ブーブー いっ た か 、 どっち だっ た の か は 見分け られ ませ ん でし た ) 。 そして 二人 は 暫く の 間 、 黙っ て い まし た 。 # アリス は 考え 始め まし た 。 「 さて 、 家 に 戻っ たら 、 この イキ モノ を どう しよう かしら 。 」 と の 時 赤ん坊 は また 激しく ブーブー 喚い た の で 、 彼女 は 少し 緊張 し て 顔 を 覗き込み まし た 。 今度 は 間違えよう が あり ませ ん でし た 。 それ は ブタ その もの でし た 。 そして 彼女 は これ 以上 抱き 続ける の は 馬鹿げ て いる 、 と 思い まし た 。 # そこ で 彼女 は その 小さな 生き物 を 下ろし 、 林 の 中 へ 黙っ て 走り去っ て いく の を 見 て 、 とても 安心 し まし た 。 「 もし 大きく なっ たら 」 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 「 恐ろしく 醜い 子供 に なる でしょう 。 で も ブタ の 子 なら 、 ハンサム な ブタ に なる わ ね 。 」 そして 彼女 は 知っ て いる 子供 たち の 中 で 、 ブタ と し て うまく 通用 する は 誰 か 、 想像 し 始め まし た 。 彼女 が 調度 「 あの 子 たち を 変身 さ せる 正しい 方法 を 知っ て いれ ば ・ ・ ・ 」 と 独り言 を 言っ た とき 、 2,3 ヤード 向こう の 木 の 枝 に チェシャ 猫 が 座っ て いる の を 見 て 、 少し 吃驚 し まし た 。 # 猫 は アリス を 見 て にゃ り と 笑い まし た 。 気立て が よさ そう だ わ 、 と 彼女 は 思い まし た 。 と は いえ 猫 は 長い 爪 と 沢山 の 歯 を 持っ て まし た から 、 礼儀 正しく 振舞う べき だ 、 と 感じ まし た 。 # 「 チェシャ 猫 さん 」 と 彼女 は おずおず と 喋り 始め まし た 。 と いう の は 彼女 は 猫 が その 名前 を すき か どう か 、 全然 分から なかっ た から です 。 しかし 、 猫 は 少し 大きく に やり 、 と し た だけ でし た 。 「 いい わ 、 今 まで の ところ は 機嫌 を 損ね て ない わ 」 と アリス は 思っ た の で 、 続け まし た 。 「 教え て ください な 、 ここ から どっち へ の 道 へ いけ ば いい ん でしょう か ? 」 # 「 それ は 君 が どこ に 行き たい か に よる ね 」 と 猫 は 言い まし た 。 # 「 どこ で も 構わ ない わ 」 と アリス 。 # 「 じゃ 、 どっち の 道 を 行っ て も いい だろう 」 と 猫 。 # 「 ・ ・ ・ どこ か に 行き着き さえ すれ ば 、 です けど 」 、 と アリス は 説明 を 加え まし た 。 # 「 おや おや 、 行き着く に 決まっ てる じゃ ない か 」 と 猫 は 言い まし た 。 「 ずっと 歩い て いけ ば ね 」 # アリス は この こと を 否定 でき ない よう に 感じ た の で 、 別 の 質問 に し て み まし た 。 「 そこ に は どんな 人 が すん でる の ? 」 # 「 あっち の 方 に は 」 と 猫 は 右 の 前足 を 丸く 振り ながら 言い まし た 。 「 帽子 屋 が 住ん で いる 。 そして そっち の 方 に は 」 と もう 一方 の 前足 を 振り ながら 「 三 月 兎 が すん で いる 。 どっち で も 好き な ほう を 訪ねる と いい 。 両方 と も キチガイ だ けど 」 # 「 で も 気 が 狂っ た 人 たち の ところ に 行く の は イヤ です 」 と アリス は 言い まし た 。 # 「 うん 、 で も 仕方 が ない よ 」 と 猫 。 「 ここ じゃ 、 みんな 狂っ て いる ん だ から ね 。 君 だ って キチガイ だ 」 # 「 どう し て 私 が きちがい だ って わかる の ? 」 # 「 そう に 決まっ てる さ 。 」 と 猫 。 「 で なけれ ば ここ に 来 なかっ たろう 」 # アリス は その 証明 が 全然 正しい と は 思え ませ ん でし た が 、 続け て 「 じゃ どう し て あなた は 自分 が キチガイ って 分かる の 」 # 「 まず 」 と 猫 。 「 犬 は 狂っ て い ない 。 それ は 認める ね ? 」 # 「 そう だ と 思う わ 。 」 # 「 うん 、 じゃ 」 と 猫 は 続け まし た 。 「 犬 は 怒っ た とき に うなっ て 、 嬉しい とき に は 尻尾 を 振る だろう 。 だ けど 僕 は 嬉しい とき に は うなっ て 、 怒っ た とき に は 尻尾 を 振る 。 それ ゆえ 、 ぼく は きちがい な ん だ 」 # 「 それ って 、 うなる じゃ なく ゴロゴロ 言う 、 って 言う の よ 」 # 「 君 の 好き な よう に 言え ば いい 。 」 と 猫 。 「 今 - 日 、 女王 と ク ロケット の 試合 を する の か い ? 」 # 「 とっても し たい わ 。 」 と アリス 。 「 で も 私 は まだ 招待 さ れ て ない の 」 # 「 そこ で 会おう 。 」 と 猫 は 言っ て 、 消え まし た 。 # アリス は これ に 別段 驚き ませ ん でし た 。 おかしな こと が 起こる の に は もう 慣れ て い た から です 。 猫 が 消え た 場所 を 見つめ て いる と 、 猫 は また 突然 現れ まし た 。 # 「 ところ で 、 赤ん坊 は どう なっ た か い ? 」 と 猫 。 「 あやうく 訊く の を 忘れる ところ だっ た 」 # 「 ブタ に なっ た わ 」 アリス は まるで 猫 が 自然 な 方法 で 戻っ て き た か の よう に 、 落ち着い て 言い まし た 。 # 「 そう なる と 思っ た 」 と 猫 は いっ て 、 また 消え まし た 。 # アリス は また 会える ん じゃ ない か と 半分 期待 し て 、 ちょっと 待っ て まし た が 、 猫 は 現れ ませ ん でし た 。 そこ で 少し たつ と 、 三 月 兎 が 住ん で いる と いわ れ た 方 へ 歩き まし た 。 「 帽子 屋 は 前 に 見 た こと が ある わ 」 と 独り言 。 「 三 月 兎 は もっと 面白い でしょう 。 それ に 今 は 五 月 だ から 、 多分 狂い まくっ て いる わけ じゃ ない でしょ 。 。 。 少なく て も 、 三 月 ほど に は 。 」 こう いう と 、 彼女 は 見上げ まし た 。 と 、 そこ に は また 猫 が 居 て 、 木 の 枝 に 座っ て い まし た 。 # 「 ブタ と いっ た の か い ? それ と も フタ と ? 」 と 猫 。 # 「 ブタ と いっ た の よ 」 と アリス は 答え まし た 。 「 それ に 、 そんな に 唐突 に 消え たり 現れ たり し ない で くれる ? 眩暈 が する わ 」 # 「 分かっ た 」 と 猫 は いっ て 、 今度 は ゆっくり と 消え まし た 。 尻尾 の 先 から 始まっ て 、 にやにや 笑い が 最後 でし た が 、 笑い は その ほか の 部分 が 消え た 後 も 暫く 残っ て い まし た 。 # 「 まあ ! 笑い の ない 猫 は 何 度 も 見 て いる けど 」 と アリス 「 猫 の ない 笑い なんて ! これ まで 見 た 中 で 一番 ヘン な もの だ わ ! 」 # それ ほど 長く 歩か ない うち に 、 三 月 兎 の 家 が 見え て き まし た 。 彼女 は それ が 兎 の 家 に 違い ない 、 と 思い まし た 。 と いう の は 煙突 は 耳 の 形 を し て おり 、 屋根 は 毛皮 で 葺か れ て い た から です 。 それ は 大きな 家 だっ た の で 、 彼女 は 左手 の 茸 の かけら 少し 齧っ て 2 フィート の 高 さ に なっ て から 、 近く に 行き まし た 。 それ で も 彼女 は びくびく し ながら 歩い て い まし た 。 こう 独り言 を 言い ながら 。 「 結局 、 猛り狂っ て い たら どう しよう ! 代わり に 帽子 屋 に 会い に 行け ば よかっ た か も ! 」 # キチガイ お 茶会 # 家 の 前 の 木の下 に テーブル が 置い て あり 、 三 月 兎 と 帽子 屋 が そこ で お 茶 を 飲ん で い まし た 。 ヤ マネ が 二人 の 間 で 座っ て 寝 て い まし た 。 二人 は ヤ マネ の 上 に 肘 を つい て クッション 代わり に 使い 、 ヤ マネ の 頭ごし に 喋っ て い まし た 。 「 ヤ マネ は 不 愉快 でしょう ね 」 と アリス は 思い まし た 。 「 で も 寝 て いる ん だ から 、 気 に なら ない と 思う わ 」 # テーブル は 大きな もの な の です が 、 三 人 は 角 の ところ に 固まっ て い まし た 。 「 席 は ない よ ! 席 は ない よ ! 」 と 彼 ら は アリス が 来る の を 見 て がなりたて まし た 。 「 一杯 席 が ある じゃ ない の ! 」 と アリス は 憤然 と し て 言い 、 テーブル の 端 に ある 大きな 腕 の つい た 椅子 に 座り まし た 。 # 「 ワイン を いかが 」 と 三 月 兎 は 勧め まし た 。 # アリス は テーブル 見回し まし た が 、 そこ に は お 茶 以外 に は 何 も あり ませ ん でし た 。 「 ワイン な ん か 見え ない ん だ けど 」 と 彼女 は 言い まし た 。 # 「 うん 無い よ 」 と 三 月 兎 は 言い まし た 。 # 「 じゃ 、 無い もの を 勧める と いう の は 余り 礼儀 正しく ない ん じゃ ない ? 」 と アリス は 怒っ て 言い まし た 。 # 「 招待 も さ れ ず に 座る ほう が 礼儀 正しく ない と 思う ん だ が な 」 と 三 月 兎 。 # 「 これ が あなた たち の テーブル だ と は 知ら なかっ た の 」 と アリス 。 「 3 人 以上 の スペース が ある から 」 # 「 君 の 髪の毛 は 伸び すぎ てる な 」 と 帽子 屋 。 彼 は アリス は 好奇 心 丸出し に し て 暫く 見つめ て い まし た が 、 これ が 彼 の 最初 の セリフ でし た 。 # 「 他人 の 批判 は 言わ ない ほう が いい わ ね 」 と アリス は 少し 厳しく 言い まし た 。 「 とても 無礼 よ 」 # 帽子 屋 は それ を 聞く と 、 眼 を 大きく 開け まし た 。 しかし 彼 が 言っ た の は 「 どう し て 烏 は 机 に 似 てる ん だ ? 」 でし た 。 # 「 あら 、 面白く なっ て き た わ ! 」 と アリス は 思い まし た 。 「 謎 々 を 言い 出し て くれ て 嬉しい わ 。 。 。 答え を 当て て やろう っと 。 」 と 彼女 は 声 に 出し て 付け加え まし た 。 # 「 答え を 当て られる と 思っ て いる の か い ? 」 と 三 月 兎 。 # 「 全く その 通り よ 」 と アリス 。 # 「 じゃ 、 思っ て いる 事 を 言っ て ごらん 」 と 三 月 兎 は 続け まし た 。 # 「 そう する わ 。 」 と アリス は 急い で 答え まし た 。 「 少なく て も ・ ・ ・ 少なく て も 言い たい こと を 思う わ ・ ・ ・ ・ 同じ こと でしょ 」 # 「 全然 同じ じゃ ない ね ! 」 と 帽子 屋 。 「 『 食べる もの を 見る 』 と 『 見る もの を 食べる 』 が 同じ だ と 言っ て いる こと に なる 」 # 「 こう も 言える な 。 」 と 三 月 兎 が 付け加え まし た 。 「 手 に 入れる もの を ほしい 」 は 「 ほしい もの を 手 に 入れる 」 と 同じ ! 」 # 「 こう も 言える ね 」 と ヤ マネ は 眠り ながら 付け足し まし た 。 『 眠っ て いる とき に 息 を する 』 は 『 息 し て いる とき に 眠っ て いる 』 と 同じ 」 # 「 お前 の 場合 、 それ は 同じ こと だ よ 」 と 帽子 屋 は いい 、 ここ で 会話 は 途切れ まし た 。 全員 は ちょっと の 間 静か に なり 、 その 間 、 アリス は 烏 と 机 に つい て 覚え て いる 事 を 全部 思い浮かべ まし た が 、 大して 思い つけ ませ ん でし た 。 # 帽子 屋 が 最初 に 沈黙 を 破り まし た 。 「 今日 は 何 日 だ い ? 」 彼 は アリス の ほう を 見 て 言い まし た 。 彼 は ポケット から 時計 を 出し 、 せわしく 見 ながら 、 時々 振っ て は 耳 に 持っ て 行き まし た 。 # アリス は 少し 考え て から 、 「 四 日 」 と いい まし た 。 # 「 二 日 違っ てる ! 」 と 帽子 屋 は ため息 を つき まし た 。 「 バター は 機械 に は 合わ ない って 言っ たろ 」 と 彼 は 三 月 兎 を 怒っ た よう に 見 て いい まし た 。 # 「 そいつ は 最上 の バター だ ぜ 」 と 三 月 兎 は 返答 し まし た 。 # 「 それ は そう だ が 、 パン 屑 も 入っ ちまっ た に 違い ない 。 」 と 帽子 屋 は 文句 を 言い まし た 。 「 パン 切り ナイフ を 使っ て バター を 塗る べき じゃ なかっ た ん だ よ 」 # 三 月 兎 は 時計 を 手 に とっ て 、 憂鬱 そう に 見つめ まし た 。 そして お 茶 の カップ の 中 に 浸し て 、 また 引き上げ て 見 まし た 。 しかし 最初 の より も いい 言葉 を 思いつき ませ ん でし た 。 「 あれ は 最高 級 の バター だっ た ん だ よ 」 # アリス は 好奇 心 から 彼 の 肩ごし に 見 て い まし た 。 「 なん て 面白い 時計 な の かしら ! 」 彼女 は 言い まし た 。 「 日にち は 分かる けど 、 時間 は 分から ない わ ! 」 # 「 なん で 分かる 必要 が ある ん だ い ? 」 と 兎 は 呟き まし た 。 「 君 の 時計 は 年 を 告げ て くれる の か い ? 」 # 「 もちろん 告げ ない わ 。 」 と アリス は すぐ に 答え まし た 。 「 で も それ は 一 年 は 長く て 、 同じ 年 が ずっと 続く から だ わ 」 # 「 それ は 調度 私 の 場合 と 同じ な ん です な 」 と 帽子 屋 。 # アリス は 恐ろしく 混乱 し まし た 。 帽子 屋 の いう 事 は 全く 意味 が ない よう に 思え た の です が 、 それ で も それ は 確か に 日本 語 でし た 。 「 あなた が 何 を 言っ て いる の か 分から ない わ 」 と 彼女 は できる だけ 丁寧 に 言い まし た 。 # 「 ヤ マネ が また 寝 て いる ぞ 」 と 帽子 屋 は いっ て 、 ヤ マネ の 鼻 に 熱い お 茶 を 少し 注ぎ まし た 。 # ヤ マネ は 我慢 でき ず に 頭 を 振り 、 眼 を 開け ず に 言い まし た 。 「 もちろん 、 もちろん 。 それ は 調度 僕 が 言おう と し た こと だ 」 # 「 まだ 謎 々 を 考え て いる の か い ? 」 と 帽子 屋 は また アリス を 向い て 言い まし た 。 # 「 いいえ 、 諦め た わ 」 と アリス は 答え まし た 。 「 答え は なに ? 」 # 「 少し も 分から ない ね 」 と 帽子 屋 。 # 「 オレ も だ 」 と 三 月 兎 。 # アリス は 疲れ た よう に ため息 を つき まし た 。 「 あんた たち 、 もっと 時間 を 有効 に 使っ た ほう が いい と 思う わ よ 」 と アリス 。 「 答え の ない 謎 々 を 出し て 時間 を 潰す より も ね 」 # 「 もし 君 が 私 ほど 時間 君 を 知っ て い たら 、 」 と 帽子 屋 は 言い まし た 。 「 時間 を 潰す 、 なんて いわ ない だろう ね 。 時間 君 、 て 言わ なきゃ 」 # 「 何 を 言っ て いる の か 、 分から ない わ 」 と アリス 。 # 「 もちろん 分から ない さ 」 と 帽子 屋 は 軽蔑 する よう に 頭 を 上下 さ せ まし た 。 「 君 は 時間 君 と 話し た こと さえ ない ん だろう 」 # 「 多分 ない わ 」 と アリス は 注意 し て 答え まし た 。 「 で も 音楽 の 授業 の とき 、 時 を 打つ の は 習っ た わ 」 # 「 おっ 、 それ で 分かっ た 」 と 帽子 屋 は 言い まし た 。 「 彼 は 打た れる の が 我慢 でき なかっ た ん だ 。 もし いい 友達 で い たら 、 彼 は 時計 に 関する こと は 何 で も 好き な 通り に し て くれる の に 。 例えば 朝 九 時 、 調度 授業 が 始まる とき 、 ちょっと 時間 君 に 耳打ち し さえ すれ ば いい 。 そう すれ ば 瞬き する 間 に 時計 は 一 回り し て 、 1 時 半 、 昼飯 の 時間 だ ! 」 # ( 「 本当 に そう だ と いい な 」 と 三 月 兎 は ひそひそ と 独り言 を 言い まし た ) # 「 それ は 凄い わ ね 、 確か に 」 と アリス は 少し 考え て いい まし た 。 「 で も それ じゃ 、 お腹 は すい て ない でしょ 」 # 「 うん 最初 は そう か も しれ ない な 」 と 帽子 屋 。 「 で も 好き な だけ 一時 半 の まま 止め て おく こと が できる よ 」 # 「 それ が あなた の やり 方 な の ? 」 と アリス は 聞き まし た 。 # 帽子 屋 は 悲し そう に 頭 を 振っ て 、 「 いや ! 」 と 答え まし た 。 「 時間 君 と は 三 月 に 喧嘩 し た ん だ ・ ・ ・ 奴 が おかしく なる 調度 少し 前 だ よ ・ ・ ・ ( と ティースプーン で 三 月 兎 を 指し まし た ) 「 ・ ・ ・ あれ は ハート の 女王 の 催し た 大 演奏 会 で 、 自分 は この 歌 を 歌わ なきゃ なら なかっ た ん だ 」 # 「 ひらひら 落ちる 、 お 空 の 蝙蝠 よ ! あなた は 一体 何 狙っ てる の ! 」 # この 歌 、 知っ てる だろ ? 」 # 「 似 た よう な もの を 聞い た こと は ある わ 」 と アリス 。 # 「 続き が ある ん だ よ 」 と 帽子 屋 。 「 こんな 風 に ・ ・ ・ # 「 そら 高く 飛ん で そら の お 盆 みたい に ひらひら ・ ・ ・ 」 # きらきら 光る 、 お 空 の 星 よ ! あなた は 一体 何 の ! そら 高く 浮かん で そら の ダイヤモンド の よう に きらきら ・ ・ ・ # ここ で ヤ マネ は 身震い し て 、 眠り ながら 謳い 始め まし た 。 「 ひらひら 、 ひらひら 、 ひらひら 、 ひらひら ・ ・ ・ 」 あまり に 長く 続け た の で 、 二人 は つねっ て 止め させ なけれ ば なり ませ ん でし た 。 # 「 さて 、 自分 が 一番 目 の 歌詞 を 終え て も 居 ない うち に 、 」 と 帽子 屋 。 「 女王 は 跳ね上がっ て 叫ん だ わ な 。 『 奴 は 時間 を 殺し て おる ! 首 を 斬れ ! 』 」 # 「 なん て 野蛮 な ん でしょ ! 」 と アリス は 大声 を あげ まし た 。 # 「 それ から と いう もの 」 と 帽子 屋 は 悲し そう に 続け まし た 。 「 彼 は 私 の 頼み ごと を 一切 受け付け なく なっ た ん だ 。 今 じゃ いつ で も 六 時 だ 」 # アリス は ひらめき まし た 。 「 だ から ここ に は こんな に 沢山 の 茶 道具 が 散らかっ てる の ね ? 」 と 彼女 は きき まし た 。 # 「 その 通り 。 」 と 帽子 屋 は ため息 を つき まし た 。 「 いつ も お 茶 の 時間 で 、 合間 に 皿 を 洗う 時間 が ない ん だ 」 # 「 だ から 席 を かえ 続け て いる の ね ? 」 と アリス 。 # 「 その 通り さ 」 と 帽子 屋 。 「 食器 が 汚れ て いく から ね 」 # 「 で も 最初 に 戻っ たら どう なる の ? 」 と アリス は 思い切っ て きき まし た 。 # 「 話題 を 変えよう 」 と 三 月 兎 は 割り込ん で 、 欠伸 し ながら 「 この 話題 に は 飽き飽き し た 。 若い お 嬢 さん が 話 を 聞か せ て くれる 、 に 一 票 。 」 # 「 悪い けど 、 話 なんて 何 も 知ら ない わ 」 と アリス は この 提案 に 吃驚 し て 言い まし た 。 # 「 それ じゃ 、 ヤ マネ に やら せよ う 」 と 二人 は わめき 、 「 おきろ 、 ヤマ ネ ! 」 と 同時 に 両側 から ヤ マネ を 抓り まし た 。 # ヤ マネ は ゆっくり と 目 を 開き まし た 。 「 眠っ て ない よ 」 と 彼 は しわがれ て 、 弱々しい 声 で 言い まし た 。 「 君 たち の 言っ て いる こと は 、 みんな 聞い て い た よ 」 # 「 話 を し て くれ ! 」 と 三 月 兎 。 # 「 ええ 、 お 願い ! 」 と アリス は せがみ まし た 。 # 「 それ と 、 早く しろ ! 」 と 帽子 屋 は 言い足し まし た 。 「 で ない と 、 話し 終える 前 に また 眠っ て しまう から な 」 # 「 昔々 、 三 人 の 姉妹 が おり まし た 。 」 と ヤ マネ は 急い で 始め まし た 。 「 姉妹 の 名前 は エル シー 、 レーシー 、 チリ ー でし た 。 三 人 は 井戸 の 底 に 住ん で おり まし た 。 。 。 」 # 「 何 を 食べ て い た の ? 」 と アリス は 言い まし た 。 彼女 は いつ も 食べ たり 飲ん だり こと に 関し て は 、 強い 興味 を 持っ て い まし た 。 # 「 水飴 を 食べ て おり まし た 。 」 と ヤ マネ は ちょっと 考え て いい まし た 。 # 「 そんな こと できる はず が ない わ よ ね 。 」 と アリス は 柔らかく 反論 し まし た 。 「 病気 に なっ ちゃう わ 」 # 「 そう です 。 彼 ら は 」 と ヤ マネ 「 重い 病気 でし た 」 # アリス は そんな 変てこ な 生活 が どんな もの か 、 考え て み まし た が 、 あまり に チンプンカンプン だっ た の で 、 続け て いい まし た 。 「 で も なん で 彼 ら は 井戸 の 底 に 住ん で た の ? 」 「 お 茶 を もっと いかが 」 と 三 月 兎 は アリス に 勧め まし た 。 # 「 まだ 何 も 頂い て ない わ 」 と アリス は 怒っ た よう に 答え まし た 。 「 だ から もっと 沢山 だ なんて 、 頂け ない わ 」 # 「 何 も 飲ん で ない から 、 もっと 少なく 頂く こと は でき ない 、 と 仰る の です な 。 」 と 帽子 屋 。 「 より 沢山 頂く こと は 実 に 簡単 な の です ぞ 」 # 「 誰 も あなた の 意見 なんか きい て ない わ 」 # 「 今 、 誰 が 他人 の 批評 を し まし た か な ? 」 と 帽子 屋 は 勝ち誇っ た よう に 尋ね まし た 。 # アリス は これ に は どう いえ ば いい いか 、 全く 分かり ませ ん でし た 。 そこ で 彼女 は お 茶 と バター つき パン を 食べ 、 ヤ マネ の ほう を 向い て 、 質問 を 繰り返し まし た 。 「 なん で 彼女 たち は 井戸 の 底 に 住ん で い た の ? 」 # ヤ マネ は ちょっと 考え て 、 いい まし た 。 「 それ は 水飴 の 井戸 だっ た ん だ よ 」 # 「 そんな もの あり っこ ない わ ! 」 アリス は 怒り 出し まし た 。 しかし 帽子 屋 と 三 月 兎 は 「 しーっ 、 しーっ ! 」 と いい まし た 。 ヤ マネ は むっと し て 言い まし た 。 「 もし 礼儀 を 弁え ない と いう の なら 、 自分 で 話 する と いい や 」 # 「 ごめん なさい 、 どうぞ 続け て ! 」 と アリス は とても 素直 に 言い まし た 。 「 二 度 と 邪魔 は し ない わ 。 そんな 井戸 が ある か も しれ ない わ ね 」 # 「 ある ん だ よ ! 」 と ヤ マネ は 憤然 と し て いい まし た 。 しかし 、 彼 は 続ける こと に は 同意 し まし た 。 「 そして この 三 姉妹 は ・ ・ ・ ひく こと を 学ん で い まし た ・ ・ ・ 」 # 「 何 を ひい た の ? 」 と アリス は 自分 の 約束 を すっかり 忘れ て 言い まし た 。 # 「 釣瓶 さ 。 水飴 の 」 と ヤ マネ は 今度 は 考え ず に いい まし た 。 # 「 きれい な カップ が ほしい 」 と 帽子 屋 が 話 に 割り込み まし た 。 「 一席 ずつ 移ろう 」 # 彼 は そう いっ て 移り 、 ヤ マネ も 続き まし た 。 三 月 兎 は ヤ マネ の 場所 に 移り 、 アリス は 渋々 三 月 兎 の 場所 を 陣取り まし た 。 帽子 屋 だけ が この 席替え で 得 を し た 人 でし た 。 三 月 兎 が 調度 ミルク 入れ を 皿 に ひっくり返し た ばかり な の で 、 アリス は 前 より も ずっと 悪く なり まし た 。 # アリス は ヤ マネ を 怒ら せ たく あり ませ ん でし た から 、 恐る恐る こう 切り出し まし た 。 「 で も 分から ない わ 。 どこ から 水飴 を くん だ の かしら 」 # 「 水 の 井戸 から は 水 を 汲む こと が できる 」 と 帽子 屋 。 「 だ から 水飴 の 井戸 から は 水飴 を 汲む こと が できる こと くらい 、 誰 で も わかる こと だろ ・ ・ ・ え 、 あんた 、 馬鹿 か ね ? 」 # 「 で も 彼 ら は 井戸 に 居 た ん でしょ 」 と 最後 の セリフ は 無視 し て 、 アリス は ヤ マネ に 言い まし た 。 # 「 もちろん 彼 ら は 井戸 の 」 と ヤ マネ 。 「 ・ ・ ・ 奥 に い た さ 」 # 可哀想 に アリス は この 答え に とても 混乱 し て しまっ た の で 、 暫く の 間 、 話 の 腰 を 折ら ず に ヤ マネ に 喋ら せ て い まし た 。 # 「 彼女 たち は ひき 方 を 勉強 し て い まし た 。 」 と ヤ マネ は 続け 、 欠伸 を し て 眼 を こすり まし た 。 と いう の は 眠たく なっ て い た から です 。 「 全て の もの を 、 『 も 』 で 始まる もの 全て を 、 ひい て まし た 。 」 # 「 なん で 『 も 』 な の ? 」 と アリス 。 # 「 なん で 『 も 』 じゃ 駄目 な ん だ ? 」 と 三 月 兎 。 # アリス は 黙り まし た 。 # ヤ マネ は この とき まで に 目 を 閉じ て 、 船 を こぎ 始め て い まし た 。 しかし 帽子 屋 に 抓ら れ て 、 小さい 金切り 声 を あげ て 、 また 起き て 続け まし た 。 「 ・ ・ ・ も で 始まる もの 、 たとえば 、 モモンガ 取り 、 森 、 耄碌 ( もうろく ) 、 もも も ・ ・ ・ 『 すもも も 、 もも も 、 もも の うち 』 なんて 言う よ ね 。 。 。 もも も を ひく 、 なんて こと を 眼 に し た こと が ある か な ? 」 # 「 えっ 、 私 に きい てる の 」 と アリス は すっかり 混乱 し て い まし た 。 「 し た こと ない と 思う わ ・ ・ ・ 」 # 「 じゃ 、 黙っ てる ん だ な 」 と 帽子 屋 は 言い まし た 。 # アリス は もう これ 以上 、 無礼 な 発言 に は 耐え られ ませ ん でし た 。 彼女 は ムッと し て 立ち上がり 、 歩き去り まし た 。 ヤ マネ は すぐ に 眠っ て しまい まし た 。 他 の 二人 は アリス が 出 て 行く の に 少し も 注意 を 払い ませ ん でし た 。 しかし 彼女 は 戻っ て こい 、 と いわ れる の を 半分 期待 し ながら 、 1,2 度 振り返り まし た 。 最後 に 彼女 が 見 た の は 、 彼 ら が ヤ マネ を お 茶 の ポット に 押し込もう と し て いる 姿 でし た 。 # 「 どんな こと が あろう と 、 私 は あそこ に は 二 度 と 戻ら ない わ ! 」 と アリス は 林 の 中 、 道 を 探し ながら 言い まし た 。 「 これ まで の 人生 で 、 一番 馬鹿げ た お 茶会 だっ た わ ! 」 # 彼女 が こう いっ た とき 、 ある 木 が 目 に 付き まし た 。 その 樹 に は 内側 へ 通じる ドア が つい て い まし た 。 「 これ は とても 変 だ わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 で も 今日 は みんな おかしい 。 入っ て み た ほう が いい と 思う わ 。 」 そして 彼女 は 入っ て いき まし た 。 # もう 一 度 、 彼女 は あの 長い 広間 の 、 小さな ガラス の テーブル の そば に い まし た 。 「 さあ 、 今回 は うまく やら なきゃ 」 と 独り言 を 言っ て 、 小さな 金 の 鍵 を 取る こと から 初め 、 庭 に 通じる 扉 の 鍵 を あけ まし た 。 そして 茸 ( 彼女 は ポケット に 欠片 を 入れ て まし た ) を 齧り に かかり 、 1 フィート の 高 さ に なり まし た 。 それ から 小さな 通路 を 歩い て 、 ・ ・ ・ とうとう 、 美しい 庭 の 、 明るい 花壇 と 涼し げ な 噴水 の 間 に 出 まし た 。 # 女王 の クロー ケー 場 # 大きな 薔薇 の 木 が 庭 の 入り口 近く に 立っ て い まし た 。 その 木 に 咲い た 薔薇 の 花 は 白かっ た の です が 、 三 人 の 庭師 が 忙し そう に それ を 赤く 塗り替え て い まし た 。 アリス は なん て おかしな こと を し て いる ん だろう 、 と 思っ て 、 近く に よっ て 彼 ら を 見 て み まし た 。 調度 彼 ら の そば に 来 た とき 、 中 の 一人 が こう いう の を 聞き まし た 。 「 気 を つけろ 、 5 ! そんな 風 に ペンキ を こっち に 撒き散らす な 」 # 「 しょう が ない だろ 」 と 5 は むっと し て 言い まし た 。 「 7 が 肘 を 押し た ん だ 」 # 7 は それ を 見 て 言い まし た 。 「 その 通り さ 、 5 ! いつ も 他人 の せい ばかり に し て ! 」 # 「 うるさい 、 黙れ ! 」 と 5 . 「 女王 様 が お前 の 首 を 刎ねる 、 と 言っ た の は ほんの 昨日 の こと な ん だ ぞ 」 # 「 何 の 理由 で ? 」 と 最初 に 喋っ た 庭師 が 言い まし た 。 # 「 お前 の 知っ た こっ ちゃ ない 、 2 ! 」 と 7 . # 「 そう さ 、 お前 自身 の こと だ ぜ ! 」 と 5 . 「 7 、 教え て やる よ ・ ・ ・ たまねぎ の 代わり に チューリップ の 根 を コック の ところ に 持っ て いき やがっ た ん だ 」 # 7 は ブラシ を 投げ捨て 、 「 うぬ 、 不正 な 事柄 が 沢山 ある 中 で も ・ ・ ・ 」 と 言い 始め た 時 、 偶然 アリス が たっ て 自分 たち を 見 て いる の に 気付き まし た 。 する と 彼 は 突然 口 を つぐみ 、 他 の 二人 も 周り を きょろきょろ 見回し て 、 それ から 全員 が 低く お 辞儀 し まし た 。 # 「 すみ ませ ん が 、 」 と アリス は ちょっと びくびく し ながら 言い まし た 。 「 どう し て この 薔薇 を 塗っ て らっしゃる の ? 」 # 5 と 7 は 何 も 言わ ず に 2 を 見つめ まし た 。 2 は 低い 声 で 言い 始め まし た 。 「 ええ 、 真実 は こう な の です 、 お 嬢 さん 。 ここ に は 赤い 薔薇 の 木 が ある べき はず だっ た ん です が 、 我々 は 間違っ て 白い の を 植え て しまっ た の です 。 もし 女王 様 が それ を 見つけ たら 、 我々 は 皆 、 首 を 刎ね られ て しまう でしょう 。 だ から ご 承知 の よう に お 嬢 さん 、 我々 は 最善 を 尽くし て 彼女 が 来る 前 に 、 塗り ・ ・ ・ 」 。 調度 その 瞬間 、 心配 そう に 庭 の 向こう を 見 て い た 5 が 、 「 女王 だ ! 女王 だ ! 」 と 叫び まし た 。 3 人 の 庭師 は すぐ に うつ伏せ に なり まし た 。 沢山 の 足音 が し て 、 アリス は 女王 を 見よう と 懸命 に 周り を 見回し まし た 。 # 最初 に クラブ を 持っ た 10 人 の 兵士 が 来 まし た 。 彼 ら は 庭師 と 同じ 形 を し て い まし た 。 長 方形 で 平たく 、 手足 は 角 に あり まし た 。 次 に き た の は 10 人 の 廷臣 でし た 。 彼 は ダイヤモンド で 全身 飾ら れ 、 兵隊 と 同じ よう に 二人 ずつ 歩い て き まし た 。 次 に 来 た の は 王子 ・ 王女 たち で 、 10 人 おり まし た 。 子供 たち は 二人 で 手 を 繋い で 、 楽し げ に 飛び跳ね ながら やっ て 来 まし た 。 彼 ら は みな ハート の 縫い取り を つけ て い まし た 。 次 に き た の は お 客 たち で 、 多く は 王 と 女王 でし た 。 その 中 に アリス は あの 白 兎 が いる の を 認め まし た 。 兎 は 神経 質 に 早口 で 喋っ て い まし た 。 並ん で 歩い て いる 人 が 話し た こと に 、 みな 笑っ て 相槌 を 打ち 、 彼女 に は 気付か ず に 行っ て しまい まし た 。 そして ハート の ジャック が 深紅 の ビロード の クッション の 上 に 王冠 を 持っ て 続き 、 この 大仰 な 行列 の 最後 に 、 ハート の 王 と 女王 が 来 まし た 。 # アリス は 自分 も 三 人 の 庭師 と 同じ よう に うつ伏せ に なる べき か どう か 、 ちょっと 悩み まし た が 、 行列 で この よう な 規則 が ある と 聞い た 覚え が あり ませ ん でし た 。 「 それ に 、 行列 の 意味 なんて ない わ 」 と 彼女 は 思い まし た 。 「 もし みんな うつ伏せ に なら なきゃ なら ない と し たら 、 誰 も が 行列 を 見る こと が でき ない ん じゃ ない ? 」 そこ で 彼女 は その 場所 に じっと 立っ て 、 待ち まし た 。 # 行列 が アリス に 向かい合う と 、 お 供 の 人々 は 立ち止まっ て 、 彼女 を 見つめ まし た 。 そして 女王 は 厳しく 言い まし た 。 「 これ は 誰 か の ? 」 と 彼女 は ハート の ジャック に 言い まし た 。 彼 は 返事 の 代わり に ただ お 辞儀 し て 笑っ た だけ でし た 。 # 「 愚か者 が ! 」 と 女王 は 言っ て 、 イライラ と 頭 を ぐい 、 と 上げ まし た 。 そして アリス の ほう を 向い て 続け まし た 。 「 お前 の 名前 は なん じゃ 、 子供 よ ! 」 # 「 私 の 名前 は アリス で ござい ます 、 女王 様 」 と アリス は 丁寧 に 言い まし た 。 しかし 彼女 は 思い まし た 。 「 結局 の ところ 、 みんな 単なる トランプ の カード じゃ ない 。 恐 がる こと なんか ない わ ! 」 # 「 で は 、 こやつ ら は 何 じゃ ? 」 と 女王 は 薔薇 の 木 の 周り で 平たく なっ て いる 三 人 の 庭師 を 指し て 、 言い まし た 。 と いう の は 、 庭師 ら は うつ伏せ に なっ て おり 、 背中 の 模様 は 他 の カード と 同じ でし た の で 、 彼女 は 彼 ら が 庭師 な の か 、 兵士 な の か 、 廷臣 な の か 、 それ と も 自分 の 3 人 の 子供 な の か 、 分から なかっ た の でし た 。 # 「 なん で 私 が 知っ て いる の よ ? 」 と アリス は 自分 自身 の 勇気 に 、 自分 で 吃驚 し ながら 言い まし た 。 「 私 の 知っ た こと じゃ ない わ 」 # 女王 は 怒り で 真っ赤 に なり 、 ちょっと の 間 、 野生 の 獣 の よう に 彼女 を 睨みつけ て から 叫び まし た 。 「 首 を ちょん切れ ! 首 を ・ ・ ・ 」 # 「 馬鹿 みたい ! 」 と アリス は 大きな 声 で 、 ズバリ と いい まし た 。 女王 は 黙り まし た 。 # 王 は 彼女 の 腕 に 手 を やり 、 びくつき ながら 言い まし た 。 「 考え て も み なさい 、 お前 。 まだ ほんの 子供 じゃ よ 」 # 女王 は 怒っ て 王 に 背 を 向け 、 ジャック に 言い まし た 。 「 奴 ら を ひっくり返す の じゃ ! 」 # ジャック は 用心 深く 、 片足 で そう し まし た 。 # 「 立て ! 」 と 女王 は 鋭い 、 大きな 声 で 言い まし た 。 そして 三 人 の 庭師 は すぐ に 跳びあがっ て 、 王 と 女王 と 王子 ・ 王女 、 そして みんな に お 辞儀 を 始め まし た 。 # 「 や めい ! 」 と 女王 は 叫び まし た 。 「 こっち が 眼 を 回す ! 」 そして 薔薇 の 木 の ほう を 向い て 続け まし た 。 「 ここ で 何 を し て おっ た の じゃ ? 」 # 「 恐れ ながら 、 女王 様 」 と 2 は 片足 を つい て 、 へりくだっ た 調子 で 言い まし た 。 「 私 ども は ・ ・ ・ 」 # 「 分かっ た ぞ よ ! 」 と 女王 は 薔薇 を 点検 し て 、 「 首 を 刎ねよ ! 」 と いい まし た 。 そして 行列 は 続い て いき 、 三 人 の 兵士 が 不運 な 庭師 ら を 処刑 する の に 残り まし た 。 庭師 ら は 助け を 求め て アリス の 傍 に 駆け寄り まし た 。 # 「 首 なんか 切ら せ や し ない わ 」 と アリス は 言っ て 、 彼 ら を 近く に あっ た 大きな 植木 鉢 に 入れ まし た 。 三 人 の 兵士 は 少し の 間 辺り を 探し て うろつい て まし た が 、 やがて 黙っ て 行列 に 戻り まし た 。 # 「 首 は 刎ね た か の ? 」 と 女王 は 叫び まし た 。 # 「 仰せ の 通り 、 首 は 刎ね まし た 、 女王 様 ! 」 と 兵士 は 大声 で 答え まし た 。 # 「 よろしい ! 」 と 女王 は 叫び まし た 。 「 そなた 、 クロー ケー は たしなむ か の ? 」 # 兵士 ら は 黙っ て 、 アリス を 見 まし た 。 質問 は 明らか に 彼女 に 向け られ て い まし た 。 # 「 ええ ! 」 と アリス は 叫び まし た 。 # 「 なら ば 来い ! 」 と 女王 は 吠え まし た 。 そこ で アリス は 行列 に 加わり 、 次 に 何 が 起こる か 想像 し ながら 歩い て いき まし た 。 # 「 今日 は ・ ・ ・ 今日 は とても よい 天気 です ね ! 」 と びくびく し た ふう に 、 隣 の 人 が いい まし た 。 彼女 は 白 兎 と 一緒 に 歩い て い まし た が 、 彼 は 彼女 の 顔 を 心配 そう に 覗い て い まし た 。 # 「 とても 」 と アリス は 言い まし た 。 「 ・ ・ ・ 公爵 夫人 は どこ ? 」 # 「 しーっ 、 しーっ ! 」 と 兎 は 低く 、 急い で いい まし た 。 彼 は 喋り ながら しきり に 後ろ を 振り向い て 、 それ から 爪 先立っ て 口 を 彼女 の 耳 に つけ て 、 「 彼女 は 死刑 判決 を 受け まし た 」 と 囁き まし た 。 # 「 なん の 理由 で ? 」 # 「 『 なん て 可哀想 ! 』 と いい まし た か ? 」 と 兎 。 # 「 いいえ 、 言わ ない わ 。 」 と アリス 。 「 可哀想 な ん て 少し も 思わ ない わ 。 私 は 『 なん の 理由 で ? 』 て 言っ た の よ 」 # 「 彼女 は 女王 様 の 耳 を 殴っ た の です ・ ・ ・ 」 と 兎 。 アリス は ちょっと 声 を 出し て 笑い まし た 。 「 あっ 、 しーっ ! 」 と 兎 は 驚い て 囁き まし た 。 「 女王 様 に 聞か れ ます ぞ ! 彼女 は 遅れ た の で 、 女王 様 は こう 仰っ た の です ・ ・ ・ 」 # 「 位置 に つけ ! 」 と 女王 は 雷 の よう に 叫び まし た 。 人々 は 四方 八方 に 走り 始め 、 お 互い に 躓い て 転び まし た 。 しかし やがて 持ち場 に つき 、 試合 は 始まり まし た 。 アリス は こんな 奇妙 な クロー ケー 場 は 見 た こと が ない 、 と 思い まし た 。 それ は いたる ところ 、 でこぼこ だらけ でし た 。 ボール は 生き た 針鼠 でし た し 、 槌 は 生き た フラミンゴ で 、 兵士 ら が 二 つ 折り に なっ て 手 と 足 を つい て 、 アーチ を 作ら なけれ ば なら ない の でし た 。 # アリス に とっ て 最初 、 一番 難しかっ た の は フラミンゴ の 扱い 方 でし た 。 足 を 垂らし た まま 、 体 を 折りたたん で 楽 に 脇の下 に 抱える の は うまく 行き まし た が 、 フラミンゴ の 首 を 真っ直ぐ に さ せ 、 針鼠 を 打とう と する と すぐ に 、 フラミンゴ は 丸く なっ て 彼女 の 顔 を 見つめる の でし た 。 その 表情 が 余り に も 困惑 し た もの だっ た の で 、 彼女 は 笑い 出さ ず に は い られ ませ ん でし た 。 そして 彼女 が 頭 を 下げ させ て 、 また 始めよう と する と 、 針鼠 は 体 を 伸ばし 、 這い出そう と する の で 、 とても イライラ し まし た 。 その ほか に も 、 ハリネズミ を 打ち込もう と いう 所 に は 至るところ に 山 や 谷 が あり まし た し 、 二 つ 折り に なっ た 兵士 たち は いつ も 立ち上がっ て グラウンド の 向こう側 に 歩き去ろう と し て い た の で 、 アリス は すぐ に これ が 実 に とても 難しい ゲーム だ と いう こと に 気付き まし た 。 # 選手 たち は みな 順番 な ど 待た ず に 同時 に 打っ て まし た し 、 ずっと 言い争い っぱなし で 、 ハリネズミ を 巡っ て 喧嘩 し っぱなし でし た 。 そして すぐ に 女王 は 激怒 し 、 地団太 を 踏ん で 、 一 分間 に 一 度 は 「 首 を 刎ねよ ! 」 と か 「 首 を 斬れ ! 」 と か 怒鳴っ て い まし た 。 # アリス は 段々 安閑 と し て られ なく なっ て き まし た 。 実際 に は 彼女 は まだ 女王 と 喧嘩 を し て い ない の です が 、 すぐ に で も 喧嘩 し そう だ と 分かっ て い まし た 。 「 そ し たら 」 と 彼女 は 思い まし た 。 「 私 、 どう なる の かしら ? ここ じゃ 、 みんな 死ぬ ほど 首 を 切る の が 好き だ し 。 不思議 な の は 、 一人 で も 生き て いる 人 が 居る って こと だ わ 」 # 彼女 は 見 られ ない よう に 出 て 行け ない か と 思っ て 、 抜け道 を 探し て 辺り を 見回し て 居 まし た が 、 その 時 、 空中 に 奇妙 な もの が 見える こと に 気付き まし た 。 最初 は 大変 不思議 に 思っ た の です が 、 少し 見 て いる 間 に それ が にやにや 笑い だ と いう こと が 分かり まし た 。 そして 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 「 チェシャ 猫 だ わ 。 やれやれ 、 話し 相手 が でき た わ 」 # 「 ご 機嫌 は いかが です か な ? 」 と 喋る の に 十分 の 口 が 現れる や いな や 、 猫 は 言い まし た 。 # アリス は 眼 が 出 て くる まで 待っ て から 頷き まし た 。 「 話しかけ て も 無駄 だ わ 」 と 彼女 は 思い まし た 。 「 耳 が 出 て くる まで は 。 少なく て も 、 片耳 が 出る まで 」 次 の 瞬間 、 頭 が 全部 現れ まし た 。 そこ で アリス は フラミンゴ を 下 に 置い て 、 試合 の 話 を 始め まし た 。 自分 の 話 を 聞い て くれる 人 が い て 、 とても 嬉しく 思い まし た 。 猫 は これ だけ 見えれ ば 十分 と 思っ た らしく 、 それ 以上 は 現れ ませ ん でし た 。 # 「 あの 人 た ちっ たら 、 少し も フェア に 試合 を し ない の よ 」 と アリス は 不平 を 言い 始め まし た 。 「 それ に みんな 凶暴 に 言い争っ て て 、 誰 も 自分 の 言っ て いる こと が 聞こえ ない わ 。 。 。 大体 特に 何 か ルール が ある よう に も 見え ない し 。 あっ た と し て も 、 誰 も それ に 頓着 し て ない わ 。 。 。 それ に 全て の もの が 生き て いる だ なんて 、 どんな に 滅茶苦茶 か 分から ない でしょ 。 例えば 、 次 に 私 が 潜ら せ なきゃ なら ない アーチ が グラウンド の 向こう側 を 歩い て い たり ・ ・ ・ それ に 、 私 の 針鼠 が 女王 の 針鼠 に 正 に 命中 する ところ だっ た の に 、 女王 の 針鼠 は 私 の が 来る の を み て 、 走り去っ ちゃう の よ ! 」 # 「 女王 は お 好き か な ? 」 と 猫 は 低い 声 で 言い まし た 。 # 「 全然 。 」 と アリス 。 「 彼女 は とっても ・ ・ ・ 」 調度 その 時 、 彼女 は 女王 が 自分 の すぐ 後ろ に い て 、 聞き耳 を 立て て いる の に 気付き まし た 。 そこ で 彼女 は こう 続け まし た 。 「 ・ ・ ・ 勝ち そう だ わ 。 他 の 人 が 試合 を 終える 意味 なんか 、 な いも 同然 よ 」 # 女王 は 笑っ て 、 通り 過ぎ まし た 。 # 「 誰 と 話し て いる の じゃ ? 」 と アリス の ほう に 歩い て き た 王 が 、 好奇 心 を 丸出し に し て 猫 の 頭 を 見 ながら 言い まし た 。 # 「 あれ は 私 の 友達 です ・ ・ ・ チェシャ 猫 です 」 と アリス 。 「 ご 紹介 し ます わ 」 # 「 あの 顔 は 全然 気 に 入ら ん な 」 と 王 。 「 しかし 、 し たけれ ば 手 に キス し て も よい ぞ 」 # 「 いや だ ね 」 と 猫 は 言い まし た 。 # 「 無礼 な 奴 だ 」 と 王 は 言い まし た 。 「 そんな 風 に 余 を 見る な ! 」 と いっ て 、 アリス の 後ろ に 隠れ まし た 。 # 「 猫 は 王 を 見 て も いい の よ 」 と アリス は 言い まし た 。 「 どこ か の 本 で 読ん だ わ 。 どこ な の か 、 思い出せ ない けど 。 」 # 「 ともかく 、 どかさ ね ば なら ん 」 と 王 は ズバリ と いっ て 、 そば を 通りかかっ た 女王 を 呼び まし た 。 「 お 前 、 この 猫 を どかし て くれ ん か ? 」 # 女王 は 大きい 問題 だろう が 、 小さい 問題 だろう が 、 たった 一 つ の 解決 策 しか 持っ て ませ ん でし た 。 「 首 を 刎ねよ ! 」 と 彼女 は 辺り も 見 ず に 言い まし た 。 # 「 自分 で 処刑 人 を 連れ て くる ぞ 」 と 王 は 言っ て 、 駆け去り まし た 。 # アリス は 戻っ て 試合 が どう なっ た か 見 て み たい と 思い まし た 。 と いう の は 遠く の ほう で 女王 の 感情 的 に 叫ん で いる 声 が 聞こえ た から です 。 彼女 は 既に 、 順番 を 忘れ た から と いう 理由 で 3 人 の プレイヤー が 死刑 宣告 さ れ た の を 聞い て い まし た 。 それ に 彼女 は 試合 の 様子 が 好き に なれ ませ ん でし た 。 と いう の は 試合 は 大変 混乱 し て い て 、 彼女 は 自分 の 番 な の か どう か 分から なかっ た から です 。 そこ で 彼女 は 自分 の 針鼠 を 探し に 出かけ まし た 。 # 針鼠 は もう 一 匹 の 針鼠 と 喧嘩 し て い まし た 。 そこ で アリス は これ を 、 一 匹 を 打っ て 、 もう 一 匹 に 当てる 絶好 の チャンス だ と 思い まし た 。 たった 一 つ の 問題 は 、 彼女 の フラミンゴ が 庭 の あちら側 に 行っ て しまっ た こと でし た 。 フラミンゴ が 木立 の 中 へ 飛び上がろう と し て 、 無駄 な 努力 を し て いる の が 見え まし た 。 # 彼女 が フラミンゴ を 捕まえ て 持っ て 帰る まで に 喧嘩 は 終わっ て い て 、 両方 の 針鼠 は 見え なく なっ て い まし た 。 「 で も 別 に いい わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 だ って 、 アーチ は 全部 、 グラウンド の こっち側 から い 無くなっ ちゃっ た もの 」 。 そこ で 彼女 は 逃げ ない よう に フラミンゴ を 小脇 に 抱え 、 猫 と 、 も 少し 話 を する ため に 戻っ て き まし た 。 # チェシャ 猫 の ところ に 戻っ て くる と 、 驚い た こと に 大きな 人ごみ が その 周り に でき て い まし た 。 処刑 人 と 王 様 と 女王 の 間 で 、 論争 が 起き て い まし た 。 3 人 は 同時 に 喋っ て おり 、 他 の 人々 は 黙っ て おり 、 かなり 不安 そう でし た 。 # アリス が 現れる と 、 三 人 は 問題 を 解決 し て くれる よう に 彼女 に 頼ん で き まし た 。 彼 ら は 自分 の 意見 を 彼女 に 向かっ て 繰り返し まし た が 、 みんな 同時 に 喋っ た の で 、 彼 ら が 何 を いっ た の か を 正確 に 理解 する の は 実 に 難しい こと でし た 。 # 処刑 人 の 意見 は 、 首 を 切り離す ため の 胴体 が なけれ ば 、 首 を 斬る こと が でき ない 、 と いう もの でし た 。 今 まで この よう な もの を 処理 し なけれ ば なら なかっ た 事 なんか ない し 、 今 この 年 に なっ て 、 し 始める つもり も ない 、 と 。 # 王 様 の 意見 は 、 頭 の ある もの だっ たら 何 で も 首 を 刎ねる こと が できる はず だ 。 馬鹿げ た こと を 申す で ない 、 と いう こと でし た 。 # 女王 の 意見 は 、 今 すぐ に この 猫 に つい て 何 か でき なけれ ば 全員 処刑 する 、 と いう もの でし た 。 ( この 集団 全員 が 重苦しく 、 心配 そう に 見え た の は 、 この 最後 の セリフ の せい でし た ) # アリス は 「 その 猫 は 公爵 夫人 の です 。 彼女 に 尋ね た ほう が いい わ 」 と いう 言葉 以外 、 何 も 思いつき ませ ん でし た 。 # 「 彼女 は 牢屋 に おる 」 。 女王 は 処刑 人 に 言い まし た 。 「 ここ に つれ て 来い 」 。 処刑 人 は 矢 の よう に 出 て 行き まし た 。 # 彼 が 出 て 行っ た 瞬間 、 猫 の 首 は 消え 始め 、 彼 が 公爵 夫人 と 一緒 に 戻っ て き た とき に は 、 完全 に 消え て い まし た 。 そこ で 王 と 処刑 人 は 荒々しく あちこち を 探し回り 、 他 の 人 たち は 試合 に 戻り まし た 。 # 偽 亀 の 話 # 「 また あなた に 会え て 、 本当 に うれしい わ 」 と 公爵 夫人 は いっ て 、 愛情 たっぷり に アリス の 腕 を とっ て 、 一緒 に 歩い て いき まし た 。 # アリス は 彼女 が こんな に 上 機嫌 な の を 見 て 喜び まし た 。 そして 台所 で あっ た とき に 彼女 が あんな に 凶暴 だっ た の は 、 たぶん 胡椒 の せい だ と 考え まし た 。 # 「 もし 私 が 公爵 夫人 に なっ たら 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 ( 余り あり そう も ない と 思っ て いる よう でし た が ) 、 「 厨房 に は 胡椒 を 一粒 も 置か ない よう に しよう 。 胡椒 なし で も スープ は おいしい わ ・ ・ ・ きっと 、 人 を かっかと 短気 に さ せる の は 胡椒 の せい ね 。 」 と 新しい 法則 を 発見 し て 、 とても 嬉しく なっ て 続け まし た 。 「 人 に 酸っぱい 思い を さ せる の は 酢 の せい で 、 人 に 苦い 思い を さ せる の は カモミール の せい で 、 子供 たち に 甘い 思い を さ せる の は キャンデー や お 菓子 の せい で 、 みんな その 事 を 知っ て さえ いれ ば 、 お 菓子 を ケチ ら ない の に ・ ・ ・ 」 # 彼女 は 空想 に 夢中 に なっ て 夫人 の こと を すっかり 忘れ て い た の で 、 彼女 の 声 が 耳 の すぐ そば で 聞こえ た の に 驚き まし た 。 「 何 か 考え てらっしゃる の ね 、 あなた 。 それ で 喋る の を 忘れ て いる ん でしょう 。 この 教訓 が 何 か すぐ に は 言え ない けど 、 すぐ に 思い出し ます わ 」 # 「 たぶん 、 それ に は 教訓 なんか ない でしょう 」 と アリス は 勇気 を 出し て 言い まし た 。 # 「 ち っ 、 ち っ 、 お 若い の ねえ 」 と 夫人 。 「 すべて の こと に は 教訓 が ある の です 。 あなた が それ を 見つけ られれ ば 、 の 話 です が 」 そして 話 ながら 、 ぐ 、 と 手 を 引き寄せ て アリス の 傍 に 近づき まし た 。 # まず 夫人 は とても 醜く 、 次 に 彼女 は アリス の 肩 に 自分 の あご を 乗せる の に ちょうど 良い 背丈 を し て おり 、 その 顎 が 鋭く 刺さる の で 、 アリス は 彼女 と そんな に くっつい て いる の は とても イヤ でし た 。 しかし 彼女 は 失礼 を し たく は なかっ た の で 、 できる だけ 我慢 し て い まし た 。 # 「 試合 は 前 より は うまく 行っ て いる みたい ね 」 と 彼女 は 会話 を 続けよう と し て いい まし た 。 # 「 そう ね 」 と 夫人 。 「 そして この 教訓 は ・ ・ ・ 『 世界 を 回す もの 、 それ は 愛 で ある 』 」 # 「 誰 か が 言っ た わ 」 と アリス は 小声 で 言い まし た 。 「 誰 も が 自分 自身 の こと だけ 気 に かけ て いれ ば 、 世界 は うまく 回る って ね 」 # 「 ええ 、 そう ね ! それ は まったく 同じ こと を 言っ て いる の です 」 と 夫人 は いっ て 、 自分 の 鋭く 小さな 顎 を アリス の 肩 に 捻り 込み ながら 、 こう 付け足し まし た 。 「 そして その 教訓 は ・ ・ ・ 『 言葉 の 意味 に 気 を つけ て いれ ば よし 、 話し 方 は 自然 に つい て くる 』 」 # 「 なんに で も 教訓 を 見つけ たがる 人 ね 」 と アリス は 思い まし た 。 # 「 あなた は なん で 私 が 腕 を あなた の 腰 に やら ない か 、 考え て おい で だ ね ? 」 と 夫人 は 少し 間 を おい て から 言い まし た 。 「 理由 は です ね 、 その フラミンゴ の 機嫌 が 悪い か も しれ ない から です よ 。 ちょっと 試し て も いい です か ? 」 # 「 噛む か も しれ ない わ よ 」 と アリス は 用心 深く 答え まし た 。 彼女 は ちっとも 試し て もらい たく なかっ た の です 。 # 「 全く その 通り です 。 」 と 婦人 は いい まし た 。 「 フラミンゴ と マスタード は 両方 と も 噛み ます 。 そして この 教訓 は ・ ・ ・ 『 類 は 集まる 』 です 」 # 「 マスタード は 鳥類 じゃ ない わ 。 」 と アリス は 突っ込み まし た 。 # 「 おお 、 いつ も なが ら 」 と 夫人 は 言い まし た 。 「 はっきり と モノ を 言う お 人 です ね 」 # 「 マスタード は 鉱物 だ と 思う わ 」 と アリス 。 # 「 もちろん その 通り よ 。 」 と 夫人 は 言い まし た 。 彼女 は アリス が 言っ た こと なら 、 何 で も 賛成 し て いる よう でし た 。 「 この 近く に は 大きな マスタード 鉱山 が あり ます 。 そして その 教訓 と は ・ ・ ・ 『 君 が コウ サン ( 降参 ) すれ ば 、 私 が 勝利 する 』 」 # 「 あら 、 いや だ ! 」 と アリス は 、 この 最後 の セリフ を 無視 し て 声 を 立て まし た 。 「 マスタード は 野菜 よ 。 その よう に 見え ない けど 、 そう よ 」 # 「 全く あなた の 言う とおり よ 」 と 夫人 。 「 そして この 教訓 は ・ ・ ・ 『 外観 に 合わせよ 』 ・ ・ ・ 或いは もっと 簡単 に 言え ば ・ ・ ・ 『 他人 に 見える 姿 と は 別 の 自分 の 姿 を 想像 する な 。 」 # 「 紙 に 書い て おけ たら 、 」 と アリス は 礼儀 正しく 言い まし た 。 「 もっと よく 理解 でき た と 思う ん です けど も 。 余り 仰る こ と に つい て いけ ませ ん でし た わ 」 # 「 やろう と 思え ば 、 何 で も あり まあ せ ん よ 」 と 夫人 は 嬉し げ に 答え まし た 。 # 「 済み ませ ん が 、 それ 以上 長く なる の は 面倒 じゃ なく て ? 」 と アリス 。 # 「 面倒 だ なんて 、 とんでも ない ! 」 と 夫人 。 「 今 まで 言っ た こと は みんな 、 あなた に プレゼント する わ 」 # 「 お 安い プレゼント だ こと ! 」 と アリス は 思い まし た 。 「 誕生 日 の プレゼント が そんな もの で なく て 良かっ た ! 」 しかし 彼女 は それ を 声 に 出し て 言う 勇気 は あり ませ ん でし た 。 # 「 また 考え て らっしゃる の ? 」 と 夫人 は 鋭い 小さな 顎 で 、 もう 一 突き くれ まし た 。 # 「 私 に は 考える 権利 が ある わ 」 と アリス は 鋭く 言い まし た 。 と いう の は 彼女 は 少し イライラ し 始め て い た から です 。 # 「 権利 、 そう ね 、 」 と 夫人 。 「 ブタ に も 空 を 飛ぶ 権利 が ある わ 。 そして この 教 ・ ・ ・ 」 # しかし ここ で 、 アリス の 驚い た こと に は 、 彼女 の 大好き な 単語 「 教訓 」 を 喋っ て いる と 中 だっ た の に 、 夫人 の 声 は 細く なっ て いき 、 アリス の 腕 に 巻きつい て い た 腕 は 震え だし まし た 。 アリス が 見上げる と 、 二人 の 前 に は 女王 が 立っ て い まし た 。 女王 は 腕組み を し て 、 雷雨 の よう な 恐ろしい しかめっ面 を し て おり まし た 。 # 「 いい お 天気 です こと 、 陛下 ! 」 と 夫人 は 低く 、 弱弱しい 声 で 語り 駆け まし た 。 # 「 一 つ 、 公明 正大 な 警告 を 与え て やろう 」 と 女王 は 地面 を だんだん と 踏み ながら 、 怒鳴り まし た 。 「 お前 か 、 お前 の 首 か 、 どちら か が 去れ 。 すぐ に だ ! 好き な ほう を 選択 する の じゃ ! 」 # 夫人 は 選択 を し て 、 あっ と いう 間 に 走り去り まし た 。 # 「 試合 を 続けよう 」 と 女王 は アリス に 言い まし た 。 アリス は 驚い て 何 も 言え ず 、 すごすご と 彼女 の 後 に つい て クロー ケー 場 に 戻り まし た 。 # 女王 の 居 ぬ 間 の 洗濯 と ばかり 、 招待 さ れ た 客 たち は 木陰 で 休ん で い まし た が 、 女王 の 姿 が 見える や 否 や 、 みんな 試合 に 急い で 戻り まし た 。 女王 は 単に 一瞬 の 遅れ も 死に 値 する 、 と 言っ た だけ でし た 。 # みんな が 試合 を し て いる 時 に も 、 女王 は 他 の 選手 たち と 喧嘩 する の を やめ ず に 、 「 こやつ の 首 を 斬れ ! 」 と か 「 あやつ の 首 を 斬れ ! 」 と か 怒鳴っ て い まし た 。 死刑 宣告 さ れ た 人々 は 兵士 が 留置 所 に 連れ て 行き まし た 。 ところ が 兵士 は もちろん 、 その ため に アーチ を 作る の を 止め なけれ ば なり ませ ん でし た から 、 半 時間 や そこ ら も する と 、 そこ に は アーチ は 一 つ も なく なっ て しまい まし た 。 そして 王 様 と 女王 と アリス 以外 の 選手 は すべて 留置 場 に 連れ て 行か れ 、 死刑 を 宣告 さ れ て しまい まし た 。 # する と 女王 は 大層 息 を 切らし て クロー ケー やめ 、 アリス に 言い まし た 。 「 偽 亀 を 見 た こと が ある か の ? 」 # 「 いいえ 」 と アリス 。 「 偽 亀 が 何 か さえ 、 知ら ない わ 」 # 「 それ は 偽 亀 スープ の 材料 じゃ 。 」 と 女王 は 言い まし た 。 # 「 見 た こと も 聞い た こと も ない わ 」 と アリス 。 # 「 で は 来る が よい 」 と 女王 。 「 奴 に 身の上 話 を さ せよ う 」 # 二人 が 一緒 に 歩き去っ て いく と 、 アリス は 王 様 が 低い 声 で みんな に 「 お前 たち は みんな 赦免 さ れ た ぞ 」 と いう の を 聞き まし た 。 「 あら 、 いい こと ね ! 」 と 彼女 は 思い まし た 。 と いう の は 彼女 は 女王 が 命令 し た 処刑 が 余り に 多い の で 、 哀しく 思っ て い た の です 。 # 二人 は すぐ に グリフォン の 所 に つき まし た 。 グリフォン は 日 の 光 を 浴び て ぐっすり 寝 て い まし た 。 ( もし グリフォン を 知ら ない の でし たら 、 挿絵 を 御覧 なさい ) 。 「 起きろ 、 怠け者 が ! 」 と 女王 は 言い まし た 。 「 この 娘 ご を 連れ て 偽 亀 に 会い に 行き 、 あやつ の 話 を 聞か せ て くる の じゃ 。 わら わ は わら わが 命じ た 処刑 が きちんと 行わ れ た か どう か 、 見 に 戻ら ね ば なら ぬ 。 」 そして 彼女 は 歩き去り まし た 。 後 に は アリス と グリフォン が 残さ れ まし た 。 アリス は その イキ モノ の 姿 が 余り スキ で は あり ませ ん でし た が 、 結局 、 あの 野蛮 な 女王 の 後 を 追いかける の も 、 この イキ モノ と 一緒 に 居る の も 安全 と いう 点 で は どっこいどっこい だ と 思っ た の で 、 彼女 は 待つ こと に ま し た 。 # グリフォン は 体 を 起こし 、 眼 を こすり まし た 。 そして 見え なく なっ て しまう まで 、 女王 を 見 て い まし た 。 それ から 舌打ち を し て 「 馬鹿馬鹿しい ! 」 と 半分 は 自分 に 、 半分 は アリス に 言い まし た 。 # 「 何 が 馬鹿馬鹿しい の ? 」 と アリス 。 # 「 何 が って 、 彼女 さ 。 」 と グリフォン 。 「 みんな 彼女 の 作り話 さ 。 誰 も 誰 を 処刑 し たり なんか し ない の さ 。 さあ 、 行く ぞ ! 」 # 「 ここ じゃ 、 誰 も が 『 行く ぞ 』 って いう の ね 」 と アリス は 思い まし た 。 そして ゆっくり と その 後 を 続け まし た 。 「 これ まで の 人生 の 中 で 、 こんな に 命令 さ れ た こと なんか ない わ 。 絶対 に ない ! 」 # 暫く 行く と 、 遠く に 偽 亀 が 見え まし た 。 偽 亀 は 悲し そう に 岩 の 小さな でっぱり に 座っ て い まし た 。 そして 二人 が 近づく と 、 心臓 が 張りさけ ん ばかり に ため息 を つい て いる の が 聞こえ まし た 。 アリス は 亀 に 深く 同情 し まし た 。 「 何 が 悲しい の ? 」 と 彼女 は グリフォン に きき まし た 。 グリフォン は 答え まし た が 、 それ は 前 言っ た の と ほとんど 同じ でし た 。 「 みんな 彼 の 作り話 さ 。 奴 に は 何 も 悲しみ なんて ない の さ 。 さ あ 行く ぞ ! 」 # そこ で 二人 は 偽 亀 の 所 に 上っ て 行き まし た 。 亀 は 大きな 眼 一杯 に 涙 を ため て 、 二人 を 見つめ て い まし た が 、 何 も 言い ませ ん でし た 。 # 「 ここ の お 嬢 さん は 、 」 と グリフォン 。 「 お前 の 身の上 話 を 知り たい ん だ と さ 」 # 「 お 話し ましょう 。 」 と 偽 亀 は 深い 、 虚ろ な 声 で 言い まし た 。 「 お 座り 、 君 たち 二人 とも 。 で も 僕 が 終える まで 一言 も 喋ら ない で ね 」 # そこ で 二人 は 座り まし た 。 何 分 か の 間 、 誰 も 喋り ませ ん でし た 。 アリス は 思い まし た 。 「 始め ない ん だっ たら 、 終える こと さえ でき ない じゃ ない の 」 。 けれど も 彼女 は 我慢 強く 待ち まし た 。 # 「 昔 、 」 と 偽 亀 は 遂に 深い ため息 を つい て 、 いい まし た 。 「 僕 は 本当 の 亀 だっ た よ 」 # この セリフ の 後 、 長い 沈黙 が 続き まし た 。 沈黙 の 他 に は 、 時々 グリフォン の 「 ヒィックルー ! 」 と いう 呻き声 と 、 偽 亀 の 止まら ない 重苦しい すすり泣き が する ばかり でし た 。 アリス は ほとんど 立ち上がっ て 「 面白い 話 を 聞け て 、 有難う ござい まし た 」 と 言う 寸前 でし た が 、 続き が ある に 違い ない と いう 思い を 棄て 切れ なかっ た の で 、 じっと 座っ て 何 も 言わ ず に い まし た 。 # 「 小さい 頃 に は 」 と とうとう 偽 亀 は 続け まし た 。 今度 は ずっと 穏やか な 調子 でし た が 、 時々 まだ 少し すすり泣き を し まし た 。 「 僕 たち は 海 の 学校 に 行っ て た ん だ 。 話 を し て くれ て た の は 、 年取っ た 亀 だっ た 。 。 。 僕 たち は 彼 の 事 を 亀 じゃ ない 、 て 言っ て た ・ ・ ・ 」 # 「 なん で 亀 な の に 、 亀 じゃ ない って 言っ た の ? 」 # 「 先生 は ハナシ ( 歯 無し ) だっ た の で 、 カメ ナイ ( 噛め ない ) って 言っ た ん だ 」 と 偽 亀 は 怒り まし た 。 「 本当 に 君 は 鈍い な ! 」 # 「 そんな 簡単 な 質問 を する なんて 、 恥ずかしい と 思わ ない の か ね 」 と グリフォン は 付け加え まし た 。 そして 二人 は 黙っ て 座っ て アリス を 見つめ まし た 。 かわいそう に アリス は 地面 に 穴 が あっ たら 入り たい 、 と 感じ まし た 。 とうとう グリフォン が 偽 亀 に 言い まし た 。 「 続けろ よ 、 日 が 暮れ ちまう ぜ ! 」 そこ で 亀 は 次 の よう に 続け まし た 。 # 「 そう 、 僕 たち は 海 の 中 に ある 学校 に 通っ て い た ん だ 、 君 に は 信じ られ ない か も しれ ない けど ね ・ ・ ・ 」 # 「 信じ ない 、 なんて 言っ て ない わ 」 と アリス は 割り込み まし た 。 # 「 言っ た ね 」 と 偽 亀 。 # 「 口 を 慎め ! 」 と アリス が 何 か 言う 前 に グリフォン が 言い まし た 。 亀 は 続け まし た 。 # 「 僕 たち は 素晴らしい 教育 を 受け た の です ・ ・ ・ 実際 、 僕 は 毎日 学校 に 通っ て い た ん だ ・ ・ ・ 」 # 「 私 だ って 毎日 通っ てる わ よ 」 と アリス 。 「 そんな に 自慢 する こと じゃ ない わ 」 # 「 選択 授業 も か い ? 」 と 偽 亀 は 少し 心配 そう に 尋ね まし た 。 # 「 そう よ 」 と アリス 。 「 私 は フランス 語 と 音楽 を 習っ た わ 」 # 「 洗濯 も か い ? 」 と 亀 。 # 「 習う わけ ない わ ! 」 と アリス は 憤然 と し て 言い まし た 。 # 「 ふ ! じゃ 、 君 の は 余り いい 学校 じゃ ない な 。 」 と 亀 は とても 安心 し た よう に 言い まし た 。 「 僕 たち の 学校 の 請求 書 の 最後 に は 、 『 フランス 語 、 音楽 、 洗濯 ・ ・ 選択 授業 』 と ある ん だ 」 # 「 海 の 底 に いる ん じゃ 、 」 と アリス 。 「 洗濯 なんか あまり 必要 ない でしょ 」 # 「 僕 は それ を 学ぶ だけ の 余裕 が なかっ た ん だ 。 」 と 亀 は ため息 を つい て 言い まし た 。 「 僕 は 普通 課目 だけ 取っ た ん だ 」 # 「 それ は なん な の ? 」 と アリス は 訊き まし た 。 # 「 もちろん 、 まず は 呼び 方 、 掻き 方 」 と 亀 は 答え まし た 。 「 そして 四則 計算 ・ ・ ・ 多死 算 、 悲喜 算 、 悪 算 ( わる ざ ん ) 、 賭け 算 」 # 「 『 悪 算 』 なんて 聞い た こと も ない わ 。 」 と アリス は 思いきっ て 言い まし た 。 「 な ん な の 、 それ ? 」 # グリフォン は 驚い て 両方 の 前足 を 上げ 、 「 何 だ って ! 悪 算 を 聞い た こと が ない だ って ! 」 と 叫び まし た 。 「 美化 が 何 か 知っ て いる だろう ? 」 # 「 ええ 。 」 と アリス は 自信 なさ そう に 言い まし た 。 「 それ は ・ ・ ・ 何 か を ・ ・ ・ 綺麗 に ・ ・ ・ する と いう 意味 よ 」 # 「 それ じゃ 、 」 と グリフォン は 続け まし た 。 「 悪化 が 何 か 知ら ない と いう ん じゃ 、 君 は 単 細胞 だ 。 」 # アリス は これ 以上 何 か きく 勇気 が なかっ た の で 、 亀 の 方 を 向い て いい まし た 。 「 その ほか に 何 を 習っ た の ? 」 # 「 えーと 、 轢死 が あっ た よ 」 と 亀 は 自分 の 鰭 で 課目 を 数え ながら 言い まし た 。 「 ・ ・ ・ 轢 史 、 古代 人 と 近代 人 の 。 海 地理 、 それ から 媚術 ( びじゅつ ) ・ ・ ・ 媚術 の 先生 は 年取っ た アナゴ で 、 週 に 一 回 だ け 来 て た ん だ 。 彼 は 羨 描 、 ド ケッチ 、 危な 絵 を 教え て くれ た よ 」 # 「 それ って 、 どんな もの な の ? 」 と アリス 。 # 「 うーん 、 やっ て 見せ て やれ ない な 。 」 と 亀 。 「 僕 は 体 が 硬 すぎる ん だ 。 グリフォン と き たら 習っ た こと も ない し 」 # 「 時間 が なかっ た ん だ 」 と グリフォン 。 「 で も 俺 は 古典 の 先生 の 所 に 通っ て た よ 。 年取っ た 蟹 だっ た よ 、 先生 は ね 」 # 「 彼 の 所 に は 通っ た こと は ない な 」 と 亀 は ため息 を つき まし た 。 「 先生 は 珍 文 ( ちん ぶん ) と 奸 文 ( かん ぶん ) を 教え て い た そう だ ね 」 # 「 そうそう 、 教え て い た ね 」 と グリフォン も ため息 を つき まし た 。 そして 二人 とも 前足 で 顔 を 隠し まし た 。 # 「 で 、 一 日 何 時間 の 時間 割 だっ た の ? 」 と アリス は 急い で 話題 を 変えよう と し まし た 。 # 「 最初 の 日 は 10 時間 。 」 と 亀 。 「 次 の 日 は 9 時間 。 あと は 同じ よう に 減っ て 行く 」 # 「 なん て おかしな 時間 割 ! 」 と アリス は 声 を 上げ まし た 。 # 「 時間 を 割れ ば 」 と グリフォン は 言い まし た 。 「 一 日 ごと に 減っ て いく の は 当たり前 だろ 」 # これ は アリス が 始め て 聞く 発想 でし た 。 彼女 は それ を 暫く 吟味 し て から 、 次 の セリフ に 移り まし た 。 「 じゃ 、 11 日 目 は 休日 に なる はず ね ? 」   # 「 もちろん そう さ 」 と 亀 。 # 「 で 、 12 日 目 は どう する の ? 」 と アリス は ツッコミ ま し た 。 # 「 時間 割 の 話 は もう 結構 だ 」 と グリフォン は ズバリ と 言い切り まし た 。 「 今度 は ゲーム の こと を 何 か 話し て やれ 」 # 海老 の カドリール # 偽 亀 は 深く ため息 を つい て 、 片方 の 鰭 の 裏 で 眼 を 覆い まし た 。 彼 は アリス を 見 て 、 喋ろう と し まし た が 、 すぐ に 泣き声 が こみ上げ て き て 喋れ なく なっ て しまう の です 。 「 喉 に 骨 が 刺さっ た の と 同じ だ ね 」 と グリフォン が 言っ て 、 彼 を 揺さぶっ たり 、 背中 を 叩い たり する の に 取りかかり まし た 。 やっと 亀 は 喋れる よう に なっ て 、 頬 を 涙 で ぬらし ながら また 続け まし た ・ ・ ・ # 「 君 は 海 の 底 で 余り 長く 過ごし た こと が ない だろう ・ ・ 」 ( 「 ない わ 」 と アリス ) ・ ・ ・ 「 それ に 海老 を 紹介 さ れ た こと も 多分 ない だろう ・ ・ ・ 」 ( アリス は 「 食べ た こと なら ・ ・ ・ 」 と 言い 掛け まし た が 、 急い で 口 を つぐん で 、 「 いいえ 、 全然 ない わ 」 と 言い まし た ) 「 ・ ・ ・ だ から 君 は 海老 の カドリール が どんな に ステキ な もの か 、 知ら ない だろう ね 」 # 「 ええ 、 知ら ない わ 」 と アリス 。 「 どんな ダンス な の 、 それ ? 」 # 「 そう さ な 。 」 と グリフォン 。 「 まず 海岸 に 沿っ て 一 列 に なる ん だ ・ ・ ・ 」 # 「 二 列 だ ! 」 と 亀 は 大声 を たて まし た 。 「 アザラシ 、 海亀 、 鮭 、 など など だ 。 そして 通り道 から クラゲ を ぜんぶ 取り除い て から ・ ・ ・ 」 # 「 それ にゃ 、 大抵 幾ら か 時間 が かかる が ね 」 と グリフォン が 遮り まし た 。 # 「 ・ ・ ・ 二 歩 前進 し て ・ ・ ・ 」 # 「 各 歩 と も 、 海老 と パートナー を 組 んで だ ! 」 と グリフォン 。 # 「 もちろん 」 と 亀 。 「 二 歩 進ん で 、 パートナー と 向きあっ て ・ ・ ・ 」 # 「 ・ ・ ・ 海老 を 替え て 、 同じ 順序 で 元 に 戻る 。 」 と グリフォン は 続け まし た 。 # 「 それ から 、 」 と 亀 。 「 投げる ん だ ・ ・ ・ 」 # 「 海老 を ! 」 と グリフォン は ポン 、 と さけん で 跳びあがり まし た 。 # 「 ・ ・ ・ できる だけ 沖 に ・ ・ 」 # 「 海老 を 追っかけ て 泳ぐ ! 」 と グリフォン は 叫び まし た 。 # 「 海中 で 宙返り し て 」 と 亀 は 荒々しく 跳びはね まし た 。 # 「 海老 を 換え て ! 」 と グリフォン は 声 の 限り 叫び まし た 。 # 「 陸 に 戻っ て 、 最初 の 形 に 戻る 」 と 亀 は 言っ て 、 急 に 声 を 落とし まし た 。 そして 二 匹 は キチガイ の よう に 飛び跳ねる の を やめ て 、 悲し げ に 黙っ て 座り まし た 。 そして アリス を 見つめ まし た 。 # 「 とても ステキ な ダンス でしょう ね 」 と アリス は 恐る恐る 言い まし た 。 # 「 少し 見 て み たい か い ? 」 と 亀 。 # 「 ええ 、 とっても 。 」 と アリス 。 # 「 じゃ 、 最初 の 形 を 試し て 見よう ! 」 と 亀 は グリフォン に 言い まし た 。 「 海老 が なく て も できる だろ 。 どっち が 歌う ? 」 # 「 お前 が 歌えよ 。 」 と グリフォン 。 「 オレ は 歌詞 を 忘れ ちまっ た 」 # そこ で 二 匹 は アリス の 周り を 厳か に 踊り 始め まし た 。 前足 を ふっ て 拍子 を 取る の です が 、 時々 近づき すぎ て 彼女 の 足 を 調子 を 踏み まし た 。 その 間 中 、 亀 は とても ゆっくり と 悲し げ に この よう に 歌い まし た 。 # 「 『 も 少し 速く 歩い て くん ない ? 』 と 鱈 が 蝸牛 に 言い まし た 。 『 後ろ に イルカ が い て 、 僕 の 尻尾 を 踏ん で いる ん だ 。 ごらん 、 海老 と 海亀 は みんな 熱心 に 進ん でる 。 みんな 砂利 の ところ で 待っ て いる 。 。 。 ダンス に 入ら ない か ? # 入る 、 入ら ない 、 入る 、 入ら ない 、 ダンス に 入る ? 入る 、 入ら ない 、 入る 、 入ら ない 、 ダンス に 入ら ない ? # 『 ダンス が どんな に ステキ な もの か 、 お 分り で ない でしょう 。 海老 と 一緒 に 持ちあげ られ て 、 海 に 放り投げ られる 素晴らし さ ! しかし 蝸牛 は 『 遠 すぎる 、 遠 すぎる 』 と 答え て 横目 で 見 まし た 。 。 。 蝸牛 は 親切 に 鱈 に お 礼 を 言い まし た けれど も 、 ダンス に は 入り ませ ん でし た 。 # ダンス に は 入り たく ない 、 踊れ ない 、 入り たく ない 、 踊れ ない 、 入り たく ない 。 ダンス に は 入り たく ない 、 踊れ ない 、 入り たく ない 、 踊れ ない 、 踊れ ない 。 # 「 『 沖 すぎる だ なんて 、 気 に する 必要 は ない だろ ? 』 と 鱗 の いっぱい つい た 友達 が 答え まし た 。 『 向こう に は 向こう岸 が ある 。 イギリス から 遠く なれ ば なる だけ 、 フランス に は 近く なる ・ ・ ・ だ から 血の気 を 引かす な よ 、 蝸牛 君 、 ダンス に 加わろう よ 。 # # 「 ぼく の お 店 に 入ら ない か ? 」 と 蜘蛛 は 蝿 に 言い まし た 、 君 が 見 た 中 で 一番 ステキ な 小さな お 店 だ よ 。 「 ぼく の 店 へ の 道 は 曲がりくねっ た 階段 を 上れ ば いい 、 そこ に つい たら 一杯 面白い 物 を 見せ て あげる よ 。 」 「 いえ いえ 、 だめ よ 」 と 小蝿 は 言い まし た 。 「 頼ん で も 無駄 よ 、 あなた の 曲がっ た 階段 を 上っ た もの で 、 戻っ て き た の は 一人 も い ない もの 」 # 「 用心 深く なる の も 無理 は ない よ 、 君 、 そんな に 空 高く 飛ん でる ん だ から ね 。 僕 の 小さな ベッド で 休ま ない か ? 」 と 蜘蛛 は 蝿 に 言い まし た 。 「 可愛い カーテン が 周り に 引い て ある ん だ 。 シーツ は 上等 で 薄く て 、 もし ちょっと 休み たけりゃ 、 きちんと 布団 で 包ん で あげる よ ! 」 「 いえ いえ 、 だめ よ 」 と 小蝿 は 言い まし た 。 「 なん ども 聞い た もの 、 あなた の ベッド で 眠り込ん だ もの は 、 絶対 、 絶対 に 目覚める こと は ない って 」 以下 延々 と 続く が 、 略 。 勿論 、 この 蜘蛛 は 甘言 を 弄し て 蝿 を 誘い込ん で 食べ て しまおう と いう の だ 。 そして 子供 たち に 向かっ て 「 だ から 気 を 付け なさい 」 で この 詩 は 終わる 。 この よう な 教訓 詩 が ルイス は こと の 他 、 癪 に 障っ た よう だ 。 # 「 ありがとう 、 とっても 楽しく 見れ た ダンス だっ た わ 」 と アリス は やっと ダンス が 終わっ て ほっと し まし た 。 「 それ に 鱈 の へんてこ な 歌 も ね 」 # 「 お 、 鱈 と いえ ば だな 」 と 亀 。 「 あいつ ら ・ ・ ・ あいつ ら を 見 た こと が ある よ ね 、 もちろん ? 」 # 「 ええ 」 と アリス は いい 、 「 何 度 も 見 て いる わ よ 、 晩ごはん で ・ ・ ・ 」 と 言い 掛け て 急い で 口 を つぐみ まし た 。 # 「 バン ゴハン が どこ な の か は 知ら ない けど 、 」 と 亀 。 「 そんな に 何 度 も 見 て いる ん なら 、 もちろん それ が どんな もの か 知っ て いる よ ね 」 # 「 そう だ と 思う わ 」 と アリス は 考え て から 言い まし た 。 「 口 の 中 に 尻尾 が あっ て ・ ・ ・ 全身 パン 粉まみれ でしょ 」 # 「 パン 粉 に つい て は 間違っ て いる な 」 と 亀 。 「 パン 粉 は 海 の 中 で は 全部 洗い落とさ れ て しまう だろ 。 で も 鱈 は 口 の 中 に 尻尾 が ある 。 その 理由 は ・ ・ ・ 」 ここ で 亀 は 欠伸 を し て 眼 を 閉じ まし た 。 。 。 「 彼女 に 理由 を お 仕舞い まで 聞か せ て やれ 」 と グリフォン に 言い まし た 。 # 「 理由 は 」 と グリフォン 。 「 鱈 は 海老 と ダンス に 出かけ た ん だ 。 で 、 海 の 中 に 投げ込ま れ た 。 で 、 ずっと 長い こと 落ち て いっ た ん だ な 。 で 、 尻尾 を 口 の 中 に しっかり と 押し込ん で い た ん だ な 。 で 、 解く こと が でき ない ん だ な 。 それ で お 仕舞い 。 」 # 「 ありがと 。 」 と アリス 。 「 とっても 面白かっ た わ 。 これ まで 鱈 に つい て そんな に 知ら なかっ た 」 # 「 聞き たけれ ば 、 もっと 教え て あげよう 」 と グリフォン 。 「 なん で あの 魚 は タラ と 呼ば れ て いる か 知っ て いる か い ? 」 # 「 そんな こと 考え た こと も なかっ た わ 。 」 と アリス 。 「 なん で ? 」 # 「 それ は 長靴 と 靴 を やる から だ よ 」 と グリフォン は 厳か に 答え まし た 。 # アリス は すっかり 混乱 し まし た 。 「 長靴 と 靴 を やる ! 」 と 彼女 は 不思議 そう に 繰り返し まし た 。 # 「 なん でっ て 、 君 は 何 で 靴 を やる ん だ ? 」 と グリフォン 。 「 何 で 靴 を ピカピカ に する の か 、 て いう 意味 だ よ 」 # アリス は 彼 ら を 見下ろし 、 少し 考え て から 答え を いい まし た 。 「 靴 は ゾウ キン で やる ん だ と おもう わ 」 # 「 海 の 中 で は 」 と グリフォン は 太い 声 で 続け まし た 。 「 タライ で やる ん だ 。 海 に は ゾウ ( 象 ) なん て い ない から ね 」 # 「 じゃ 、 靴 は 何 で でき てる の ? 」 と アリス は 好奇 心 を 丸だし に し まし た 。 # 「 もちろん 、 靴底 ヒラメ と 紐 ムシ だ よ 」 と グリフォン は イライラ し て 答え まし た 。 「 小エビ だ って 知っ てる こと だ ぞ 」 # 「 もし 私 が 鱈 だっ たら 」 と アリス は まだ 先ほど の 歌 を 考え 続け ながら いい まし た 。 「 イルカ に い うわ 。 『 お 願い 帰っ て ちょうだい 。 ここ に 居 て 欲しく ない の 』 」 # 「 鱈 は イルカ と 一緒 で なけれ ば いけ ない の です 」 と 亀 。 「 賢い 魚 は どこ に いく の で も イルカ を 連れ て 行く の です 」 # 「 それ って ホント じゃ ない でしょ 」 と アリス は 吃驚 し まし た 。 # 「 ホント だ よ 」 と 亀 。 「 なぜ って 、 もし 魚 が き て 旅行 に 行き ます よ 、 と 言っ たら 僕 は 『 旅行 中 は どこ に イルカ ? 』 って いう だろう よ ? 」 # 「 『 居る か 』 って いう ? 」 と アリス 。 # 「 言っ た 通り の 意味 だ 。 」 と 亀 は 怒っ た よう に 答え まし た 。 # そして グリフォン は 「 さあ 、 君 の 冒険 の 話 を 聞こう じゃ ない か 」 と 付け加え まし た 。 # 「 今朝 から の ・ ・ ・ 冒険 を お 話し できる わ 」 と アリス は 少し 引き ながら いい まし た 。 「 で も 昨日 まで 戻る 必要 は ない わ 。 だ って 、 その 時 は 違う 人 だっ た ん です もの 」 # 「 全部 説明 し て くれ 」 と 亀 。 # 「 いやいや 、 冒険 が 先 だ 。 」 と グリフォン は 待ち きれ ない よう でし た 。 「 説明 は 死ぬ ほど 時間 が かかる から な 」 # そこ で アリス は 最初 に 白うさぎ を 見 た 。 二 匹 は 一 匹 ずつ 彼女 の 両側 に ぴったり くっつい て 、 目 口 を 大きく 開け て い た の で 、 彼女 は 最初 は びくつい て い た の です が 、 話す に つれ 気 が 大きく なり まし た 。 彼女 の 聴衆 は 完全 に 静か に し て まし た が 、 彼女 が 「 年 だ よ 、 ウィリアム 父 さん 」 を 芋虫 に 暗誦 し て は 、 全部 違う 言葉 に なっ て しまっ た 下り に さしかかる と 、 亀 は 深 呼吸 し て 「 そりゃ へん だ 」 と いい まし た 。 # 「 まったく へんてこ だ 」 と グリフォン 。 # 「 ぜんぜん 違う ! 」 と 亀 は 考え て から 繰り返し まし た 。 「 何 か 別 の を 暗誦 し て み て ほしい な 。 始めて くれる よう 、 言っ て くれ ない か 」 と 彼 は グリフォン を 見 まし た 。 亀 は まるで グリフォン が アリス に 命令 する なん ら か の 権限 を 持っ て いる と 思っ て いる よう でし た 。 # 「 立っ て 『 これ が 怠け者 の 声 』 を 暗誦 し て み なさい 」 と グリフォン が 言い まし た 。 # 「 動物 が 人間 に 命令 する なんて 。 暗誦 さ せる なんて ! 」 と アリス は 思い まし た 。 「 すぐ に で も 学校 に 戻り たい わ 」 。 しかし 立ち上がっ て その 詩 を 暗誦 し 始め まし た 。 けれど も 彼女 の 頭 は エビ の カドリール の こと で 一杯 だっ た の で 、 自分 が 何 を 言っ て いる の か ほとんど 頓着 でき ず に 、 文句 は 実 に おかしな 具合 に なり まし た 。 。 。 # 「 これ が エビ の 声 。 海老 が こう 言う の を 聞い た 。 『 こんがり 焼き すぎ だ 、 髪 に 砂糖 を ふら ね ば なら ん 』 家鴨 は 睫毛 で 、 エビ は 鼻 で ベルト と ボタン を とめ て 、 つま先 を 広げる 」 # 砂 が すっかり 乾い たら 、 エビ は ヒバリ の よう に 快活 で 、 鮫 を 馬鹿 に する だろう 。 で も 潮 が 満ち て 鮫 が 出 て き たら 、 その 声 は ビクビク と 震える 。 # 「 これ が 怠け者 の 声 。 怠け者 が 不満 を こぼす の を 聞い た 。 『 起こす の が 早 すぎ だ ! また 寝 なけれ ば なら ん ! 」 ドア は 蝶番 で 、 怠け者 は ベッド で 両脇 を と 肩 と 、 重い 頭 を 回す 。 # 『 も 少し ねかせ て れ 、 も 少し うとう と さ せ て くれ 』 それ で 半日 も 、 何 時間 も 浪費 する 。 そして 起き た 時 に は 、 手 を 曲げ た り ぶ ら つ たり し て 、 時間 を つぶす 。 # 「 子供 の 時 に 聞い て い た の と は 違う な 」 と グリフォン 。 # 「 うん 、 聞い た 事 も ない ね 」 と 亀 。 「 異常 な ほど の 馬鹿馬鹿し さ だ よ 」 # アリス は 何 も 言わ ず に 、 顔 を 両手 で 覆っ て 座り まし た 。 彼女 は 物事 が また 元通り に なら ない か なあ と 思っ て い た の です 。 # 「 説明 し て もらい たい ね 」 と 亀 。 # 「 彼女 に は 説明 でき ない さ 」 と グリフォン は 急い で 言い まし た 。 「 次 の 文句 に 行こう 」 # 「 で も エビ の つま先 は どう なっ た の ? 」 と 亀 は 拘り まし た 。 「 どう やっ て 鼻 で つま先 を 開く の か な ? 」 # 「 それ は ダンス の 最初 の 位置 よ 」 と アリス は 言い まし た が 、 全て の こと に 死ぬ ほど 困惑 し て い た の で 、 話題 を 変えよう と 切実 に 願い まし た 。 # 「 次 の 文句 を 言う ! 」 と グリフォン は イライラ し た 様子 で 繰り返し まし た 。 「 文句 は 『 庭 を 横切っ て 』 で 始まる ぞ 」 # アリス に は 逆らう 勇気 が あり ませ ん でし た 。 で も 彼女 は 全然 違う 文句 に なっ て しまう と いう 予感 は あり まし た の で 、 震え 声 で 続け まし た 。 。 。 # 「 庭 を 横切っ て 、 片眼 で 見 た 、 フクロウ と ヒョウ が パイ を 分け合っ て い た ・ ・ ・ 豹 は パイ 皮 と タレ と 肉 を 取っ た 、 一方 フクロウ は 誤 馳走 の 分け前 と し て 皿 を もらっ た 、 # パイ が 食べ 終え られる と 、 フクロウ は スプーン を もらっ た 。 一方 豹 は 唸り ながら ナイフ と フォーク を もらっ た 。 そして 晩餐 を 終え た ・ ・ ・ # 庭 を 横切っ て 、 雑草 を 見 た 、 棘 と 花 が 、 広く 高く 伸び て い た 、 怠け者 の 着物 は ボロ に 変わっ て おり 浪費 は とまら ず 、 遂に 飢え に 苦しみ 物乞い を する 。 # それ で も 彼 の 所 を 訪れ た 、 彼 が 心 を 入れ替える こと を 期待 し て 。 彼 は 自分 の 夢 や 食べ たり 飲ん だり する こと を 話し て くれ た が 、 聖書 は ほとんど 読ま ず 、 少し も 考える こと を 好ま なかっ た 。 # そこ で 自分 は 自分 に 言い聞かせ た 、 「 これ は お前 へ の 教訓 だ ぞ 」 この 男 は 、 自分 の こと で あっ た か も しれ ない 。 しかし 私 の 世話 を し て くれ た 人々 が 、 私 に 勤労 と 読書 を 愛する こと を 、 おり よく 教え て くれ た の だ 。 # 「 そんな こと ばかり 繰り返し て も 、 」 と 亀 は 邪魔 し まし た 。 「 説明 し なけれ ば 駄目 だろう ? 今 まで 聞い た 中 で 一番 無茶苦茶 な もの だ ぞ 」 # 「 そう だ な 。 もう やめ た 方 が いい な 」 と グリフォン は 言い まし た 。 アリス も 喜ん で そう し たかっ た の です 。 # 「 別 の エビ の カドリール を やっ て みよう か 」 と グリフォン は 続け まし た 。 「 それ と も 亀 に 歌 を 歌っ て 貰う おう か ? 」 # 「 あら そう な の 。 じゃ 歌 を お 願い 。 偽 亀 さん 。 」 と アリス は 熱心 に 答え まし た 。 これ は グリフォン に は 気 に 入ら なかっ た よう で 、 彼 は 「 ふん 、 趣味 が 悪い な ! おい 、 『 亀 の スープ 』 を 歌っ て やれ よ 」 # 亀 は 深く ため息 を つい て 、 始め まし た 。 声 は 時々 すすり泣き で 途切れ まし た ・ ・ ・ # 「 ステキ な スープ 、 味わい 豊か で 野菜 が 一杯 熱い 茶碗 で 待っ て いる ! こんな ご ちそう の 前 じゃ 誰 も が 我慢 でき ない 。 晩ご飯 の スープ 、 ステキ な スープ ! 晩御飯 の スープ 、 ステキ な スープ ! # す ー ぅ てき な スーゥプ ! す ー ぅ てき な スーゥプ ! ば ー あー ん 御飯 の スーゥプステキ な 、 ステキ な スープ ! # 「 ステキ な スープ ! 魚 や 肉 、 他 の 料理 なんか どう で も いい 。 たった 2 ペニー 分 の スープ で も 、 手 に 入れ られる なら 何 で も 出 す ぞ 。 いや 、 たった 1 ペニー 分 で も 。 # # キレイ な 星 、 天上 で きらめく 、 しずか に 銀 の 光 を 降ら せる 、 地上 から 離れる に 従っ て 。 夜 の 星 、 キレイ な 星 、 夜 の 星 、 キレイ な 星 。 # # 「 合唱 の とこ を もう 一 度 ! 」 と グリフォン は 叫ぶ と 、 亀 は 繰り返し 始め まし た 。 その 時 「 裁判 を 始める ! 」 と いう 声 が 遠く で し まし た 。 # 「 来 な ! 」 と グリフォン は 叫ん で 、 アリス の 手 を 取っ て 急い で そこ を 去り まし た 。 歌 は まだ 終わっ て ませ ん でし た 。 # 「 何 の 裁判 な の ? 」 と アリス は 走り ながら 喘ぎ ま し た 。 しかし グリフォン は ただ 「 来 な ! 」 と いう ばかり で 、 もっと 速度 を 上げる の でし た 。 二人 を 追っ て そよ風 が 運ぶ の は 、 亀 の 言葉 でし た 。 言葉 は 次第 次第 に かすか に なっ て いき まし た 。 # 「 ば ー あー ん ご飯 の スーゥプ 、 ステキ な 、 ステキ な スープ ! 」 # タルト を 盗ん だ の は 誰 ? # 二人 が つい た 時 、 ハート の 王 様 と 女王 は 王座 に つい て い て 、 その 周り に 沢山 の 人々 が 集まっ て い まし た 。 それ ら は 色んな 種類 の 小鳥 、 獣 、 それ に 全部 の トランプ の カード でし た 。 ジャック は 鎖 で 繋が れ 、 両側 を 兵士 に 護衛 さ れ て 、 王 と 女王 の 前 に 立っ て い まし た 。 そして ジャック の 近く に は 白 兎 が 片手 に トランペット を 持ち 、 もう 片手 に 羊皮 紙 の 巻物 を 持っ て おり まし た 。 裁判 所 の 丁度 真ん中 に は テーブル が あり 、 その 上 に は タルト が 置か れ て い まし た 。 タルト は 美味し そう に 見え た の で 、 アリス は 物欲し そう に それ を 見つめ まし た 。 。 。 「 裁判 が 終わっ て 、 」 と 彼女 は 思い まし た 。 「 お 菓子 で も 振舞っ て くれる と いい ん だ けど ! 」 しかし そんな 様子 は ない よう でし た の で 、 彼女 は 周り の 物事 を 観察 し て 、 時間 を 潰し 始め まし た 。 # アリス は 法廷 に 行っ た こと は あり ませ ん でし た が 、 本 で 読ん だ こと は あり 、 そこ に ある もの ほとんど の 名前 を 知っ て いる こと に 気付い て 嬉しく 思い まし た 。 「 あれ は 裁判 官 ね 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 「 だ って 、 立派 な カツラ を つけ て いる もの 」 # ところ で 裁判 官 は 王 様 でし た 。 彼 は カツラ の 上 に 王冠 を 被っ て いる の で ( 彼 が どう やっ た 見 たい の でし たら 、 口絵 を 御覧 なさい ) 、 全然 キモチ 良さ そう に は 見え ませ ん でし た し 、 全く 似合っ て も い ませ ん でし た 。 # 「 あれ が 陪審 員 席 だ わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 あそこ の 12 匹 の イキ モノ が 、 」 ( 彼女 は 丁寧 に 「 イ キモノ 」 と 言い まし た 。 と いう の は 何 匹 か の 陪審 員 は 動物 でし た し 、 何 匹 か は 鳥 でし た ) 「 陪審 員 だ と 思う わ 。 」 彼女 は 得意 げ に 陪審 員 と いう 単語 を 2,3 回 繰り返し まし た 。 と いう の は 彼女 と 同い年 で 、 そんな 言葉 を 知っ て いる 少女 など 滅多 に い ない だろう 、 と 思っ た から です 。 そして 、 それ は 実際 そう でし た 。 もっとも そんな 難しい 言葉 で なく 、 「 裁判 に 加わる 人 」 で も 通じ た でしょう けど 。 # 12 人 の 陪審 員 は みんな 忙し そう に 石版 に 何 やら 書い て まし た 。 「 あの 人 たち 、 何 し てる の ? 」 と アリス は グリフォン に 囁き まし た 。 「 裁判 が 始まっ て い ない の に 、 何 も 書く こと なんか ない じゃ ない の 」 # 「 あいつ ら は 自分 の 名前 を 書い て いる ん だ 」 と グリフォン は 囁き返し まし た 。 「 裁判 が 終わる 前 に 忘れ て しまわ ない よう に な 」 # 「 馬 鹿 ばっか ? 」 と アリス は 怒っ た よう に 大声 を 出し まし た が 、 すぐ に 口 を つぐみ まし た 。 白 兎 が 「 法廷 で は 静粛 に 願い ます ! 」 言い 、 王 様 が 眼 ガネ を かけ て 辺り を 不安 そう に 見回し 、 誰 が 喋っ た か を 見つけよう と し た から でし た 。 # 肩ごし に 覗きこむ よう に 、 アリス に は 陪審 全員 が 石版 に 「 馬鹿 ? 」 と 書い て いる の が 見え まし た 。 さらに その 中 の 一人 は 「 馬鹿 」 を どう 書く か 知ら ず 、 隣 の 人 に 教え て くれ と 頼ん で いる の が 分かり まし た 。 「 裁判 が 終わる 前 に あの 人 たち の 石版 は ぐじゃぐじゃ に なっ て しまう わ ね 」 と アリス は 思い まし た 。 # ある 陪審 の 鉛筆 は キーキー 音 を 立て て い まし た 。 これ に は 勿論 、 アリス は 耐え られ ませ ん でし た の で 、 彼女 は 法廷 を くるっと 回っ て その 人 の 後ろ に 行き 、 さっと 鉛筆 を 取り上げ て しまい まし た 。 彼女 は とても 素早く それ を やっ た の で 、 その 小さな 陪審 ( それ は トカゲ の ビル でし た ) は 可哀想 に 、 何 が 起き た の か さっぱり 分かり ませ ん でし た 。 あちこち 鉛筆 を 探し た 後 、 ビル は その 日 の 終わり まで 指 で 書か ざる を え ませ ん でし た が 、 指 で は 石版 に 印 を つけ られ ませ ん から 、 ほとんど 役 に 立ち ませ ん でし た 。 # 「 伝令 よ 、 告発 文 を 読み上げよ ! 」 と 王 様 。 # これ を 受け て 白 兎 は トランペット を 三 回 鳴らし 、 羊皮 紙 の 巻物 を 広げ 、 この よう に 読み上げ まし た 。 。 。 # 「 ハート の 女王 、 彼女 は タルト を 作っ た 、 夏 の 日 に 。 ハート の ジャック 、 彼 は その タルト を 盗ん だ 、 そして それ を 持っ て 逃げ た ! 」 # 「 お前 たち 、 判決 を 考え なさい 」 と 王 様 は 陪審 員 に 言い まし た 。 # 「 まだ です 、 まだ です ! 」 と 兎 は 慌て て 遮り まし た 。 「 その 前 に 色々 あり ます ! 」 # 「 最初 の 証人 を 呼べ 」 と 王 様 は 言い まし た 。 白 兎 は トランペット を 三 回 鳴らし 、 「 最初 の 証人 ! 」 と 言い まし た 。 # 最初 の 証人 は 帽子 屋 でし た 。 彼 は 片手 に ティー カップ を 持ち 、 もう 片手 に バター の つい た パン を 持っ て 出 て き まし た 。 「 お 許し ください 、 陛下 、 」 と 彼 は 言い 始め まし た 。 「 この よう な もの を 持ち込む こと を 。 です が 召喚 さ れ た 時 、 まだ お 茶 を 終え て なかっ た もの です から 」 # 「 今 は もう 終え て いる 時間 で あろう 」 と 王 様 。 「 いつ 始め た の じゃ ? 」 # 帽子 屋 は 三 月 兎 の 方 を 見 まし た 。 兎 は ヤ マネ と 手 を 繋い で 帽子 屋 の 後 を つい て 法廷 に 来 て い まし た 。 「 3 月 14 日 だ と 思い ます 。 」 と 彼 は 言い まし た 。 # 「 15 日 だ 」 と 三 月 兎 。 # 「 16 日 だ よ 」 と ヤ マネ が 言い添え まし た 。 # 「 書き留めよ 」 と 王 様 は 陪審 員 に 言い まし た 。 陪審 員 は 熱心 に 三 つ の 日付 を 全部 石版 に 書き留め て は 、 足し たり 引い たり し て 、 何 シリング だ と か 何 ペンス だ と か いう 答え を 計算 し て まし た 。 # 「 帽子 を 取り なさい 」 と 王 様 は 帽子 屋 に 言い まし た 。 # 「 それ は 私 め の で は ござい ませ ん 」 と 帽子 屋 。 # 「 盗品 だ な ! 」 と 王 様 は 陪審 員 の 方 を 向い て 騒ぎ まし た 。 陪審 員 は すぐ に その こと を メモり まし た 。 # 「 それ を 売り物 です 」 と 帽子 屋 は 釈明 し まし た 。 「 私 自身 の 帽子 なんて あり ませ ん 。 私 め は 帽子 屋 です 」 # ここ で 女王 は 眼 ガネ を かけ て 、 帽子 屋 を 睨み 始め まし た 。 帽子 屋 は 青く なり 、 そわそわ し 始め まし た 。 # 「 証拠 を あげよ 」 と 王 様 は いい まし た 。 「 びくびく する の は や めい 。 やめ ん と その 場 で 処刑 する ぞ 」 # この 言葉 は 少し も 証人 を 安心 さ せ た よう に は 見え ませ ん でし た 。 彼 は 足 は 左右 交互 に 体重 を かけ 、 女王 を 不安 そう に 見つめ 続け まし た 。 そして 動顚 し て 、 バタ つき パン の 代わり に ティー カップ を がぶりと かじり まし た 。 # 丁度 この 瞬間 、 アリス は おかしな 感覚 が し まし た 。 彼女 は しばらく 考え て まし た が 、 やがて それ が 何 か 分かり まし た 。 彼女 は また 大きく なり 始め て い た の です 。 最初 、 彼女 は 立ち上がっ て 法廷 を 出 て いこう と 思い まし た が 、 思い直し て 部屋 に 居 られる 空間 が ある まで は そこ に 居よう と 決め まし た 。 # 「 そんな に 押さ ない で くれよ 」 と 隣 に 座っ て い た ヤ マネ が 言い まし た 。 「 息 が でき ない じゃ ない か 」 # 「 しょう が ない の 」 と アリス は 言い まし た 。 「 私 、 大きく なっ て いる の 」 # 「 ここ で は 大きく なる 権利 なんか ない よ 」 と ヤ マネ 。 # 「 馬鹿 な こと 、 言わ ない で 」 と アリス は 大胆 に 言い まし た 。 「 あなた だ って 、 大きく なっ てる じゃ ない の 」 # 「 うん 。 で も 僕 は ほどほど の ペース で 大きく なっ て いる 。 」 と ヤ マネ 。 「 そんな 馬鹿げ た ペース で ない よ 」 そして 不 機嫌 に 立ち上がっ て 、 法廷 を 横切っ て 向こう側 に 行っ て しまい まし た 。 # この 間 中 も 女王 は 帽子 屋 を 睨みつける の を 止め ませ ん でし た が 、 丁度 ヤ マネ が 法廷 を 横切っ た 時 、 廷吏 の 一人 に 言い まし た 。 「 この 前 の 演奏 会 の 歌手 の リスト を 持っ て 来い ! 」 この 言葉 に 惨め な 帽子 屋 は 震え上がり 、 靴 が 両方 と も 脱げ て しまい まし た 。 # 「 証拠 を 提出 せよ 」 と 王 様 は 怒っ て 繰り返し まし た 。 「 さも なけれ ば 処刑 する ぞ 。 お前 が びくつい て いよう が 、 い まい が 」 # 「 私 め は 哀れ な 男 で ござい ます 、 陛下 。 」 と 帽子 屋 は 震え 声 で 言い 出し まし た 。 「 ・ ・ ・ 私 め は お 茶 を 始め て も おり ませ ん ・ ・ ・ 一 週間 や そこ ら も ・ ・ ・ それ に バタ つき パン も 次第 に 薄く なっ て き まし た ・ ・ ・ お 茶 の チカチカ も ・ ・ ・ 」 # 「 なん の チカチカ じゃ ? 」 と 王 様 。 # 「 それ は 茶 で 始まり ます 」 と 帽子 屋 。 # 「 もちろん 、 チカチカ は チ で 始まり おる ! 」 と 王 様 は 鋭く 言い放ち まし た 。 「 そち は 余 を 馬鹿 に し て おる の か ? 続けよ ! 」 # 「 私 め は 哀れ な 男 で ござい ます 」 と 帽子 屋 。 「 その から と いう もの 、 ほとんど の 物事 は チカチカ する の です ・ ・ ・ ただ 、 三 月 兎 が 言う こと な の です ・ ・ ・ 」 # 「 言っ て ない ぞ ! 」 と 三 月 兎 は 急い で 割り込み まし た 。 # 「 言っ た じゃ ない か ! 」 と 帽子 屋 。 # 「 否定 する ! 」 と 三 月 兎 。 # 「 彼 は 否定 し て おる 」 と 王 様 。 「 その 所 は 飛ばそう 」 # 「 えー 、 いずれ に せよ 、 ヤ マネ が 言う に は ・ ・ ・ 」 と 帽子 屋 は ヤ マネ を 見 ながら 続け ま し た 。 と いう の は ヤ マネ が 自分 の 言葉 を 否定 する か どう か 不安 だっ た から です 。 しかし ヤ マネ は ぐっすり 寝 て い た の で 、 何 も 否定 し ませ ん でし た 。 # 「 その 後 、 」 と 帽子 屋 。 「 私 は 何 枚 か バタ つき パン を 切り取り まし た ・ ・ ・ 」 # 「 しかし ヤ マネ は なん と 言っ た の です か ? 」 と ある 陪審 員 が 尋ね まし た 。 # 「 覚え て おり ませ ん 」 と 帽子 屋 。 # 「 思い出す の じゃ 」 と 王 様 。 「 で ない と 処刑 する ぞ 」 # この 惨め な 帽子 屋 は ティー カップ と バタ つき パン を 落とし 、 膝 を つき まし た 。 「 私 め は 哀れ な 男 で ござい ます 、 陛下 」 。 # 「 お主 は 哀れ な 話し手 じゃ 」 と 王 様 。 # ここ で ある モルモット が 拍手 喝さい し まし た が 、 すぐ に 廷吏 たち に 鎮圧 さ れ まし た 。 ( この 言葉 は ちょっと 難しい 言葉 です の で 、 どんな こと が 起き た か 説明 する こと に し ましょう 。 役人 は 口 に 閉じ 紐 の つい た 大きな 麻袋 を 持っ て き て 、 その 中 に 頭 から モルモット を 滑りこま せ 、 それ から その 上 に 座っ た の です 。 ) # 「 あれ が 見れ て よかっ た わ 」 と アリス は 思い まし た 。 「 新聞 で 何 度 も 読ん だ もの 。 裁判 の 終わり に 、 『 拍手 喝采 が 起ころう と し た が 、 すぐ に 裁判 所 の 警備 員 に よっ て 鎮圧 さ れ た 』 って ある けど 、 今 まで それ が 何 か 分から なかっ た わ 。 」 # 「 それ が お前 の 知っ て いる こと 全て なら 、 下がっ て も よい ぞ 」 と 王 様 。 # 「 これ 以上 下れ ませ ん 」 と 帽子 屋 。 「 私 め は ごらん の 通り 、 床 に おり ます 」 # 「 なら ば 座る が よい 」 と 王 様 。 # ここ で 別 の モルモット が 拍手 喝さい し まし た が 、 鎮圧 さ れ まし た 。 # 「 さて 、 これ で モルモット は 片付い た ! 」 と アリス 。 「 これ で 煩く なくなる わ ね 」 # 「 私 は お 茶 を 終え たい の です が 」 と 帽子 屋 は 不安 そう に 女王 を 見 ながら 言い まし た 。 女王 は 歌手 の リスト を 読ん で まし た 。 # 「 行っ て よい ぞ 」 と 王 様 は 言い まし た 。 帽子 屋 は 靴 を 履く 間 も 取ら ず に 急い で 裁判 所 を 去り まし た 。 # 「 ・ ・ ・ 外 で あやつ の 首 を 刎ねよ 」 と 女王 は 警備 員 に 伝え て まし た 。 しかし 警備 員 が 扉 に つく 前 に 帽子 屋 は 消え去っ て い まし た 。 # 「 次 の 証人 を 呼べ ! 」 と 王 様 。 # 次 の 証人 は 公爵 夫人 の 料理 人 でし た 。 彼女 は 手 に 胡椒 入れ を 持っ て い まし た 。 入り口 の 近く の ひと たち が 一斉 に くしゃみ を し 始め た の で 、 アリス は 彼女 が 法廷 に 入る 前 で さえ 、 それ が 誰 か 分かり まし た 。 # 「 証言 を 述べよ 」 と 王 様 。 # 「 いや だ ね 」 と 料理 人 。 # 王 様 は 心配 そう に 白 兎 を 見 まし た 。 白 兎 は 低い 声 で 「 陛下 、 この 証人 は 反対 尋問 せ ね ば なり ませ ぬ ぞ 」 # 「 そう か 、 し なけれ ば なら ぬ の なら 、 する の だ が 」 と 王 様 は 気 が 進ま な そう に 言い まし た 。 腕 を 組ん だり 眉 を 顰め て 料理 人 を 睨ん だり し て い まし た が 、 目 が 疲れ て き た の で 、 王 様 は 低い 声 で 「 タルト は なん で でき て おる ? 」 と 言い まし た 。 # 「 ほとんど は 胡椒 だ な 」 と 料理 人 。 # 「 水飴 」 と 彼女 の 後ろ で 眠た げ な 声 が し まし た 。 # 「 あの ヤ マネ を 逮捕 せい 」 と 女王 は 金切り 声 を 上げ まし た 。 「 あの ヤ マネ の 首 を 刎ね い ! あの ヤ マネ を 裁判 所 から つまみ出せ ! 鎮圧 せい ! 抓れ ! 髭 を むしれ ! 」 # 暫く の 間 、 法廷 全体 は 混乱 に 陥り まし た 。 ヤ マネ を つまみ出し 、 人々 が 元 の 場所 に 戻る と 、 料理 人 は 消え て 居 まし た 。 # 「 まあ よい わ ! 」 と 王 様 は 安堵 し た よう に 言い まし た 。 そして 「 次 の 証人 を 呼べ 」 と 女王 を 宥める よう な 調子 で 言い添え まし た 。 「 本当 だ よ 、 おまえ 。 次 の 証人 の 尋問 は お前 が し て くれ 。 余 は 頭 が 痛く なっ て き た 」 # アリス は 白 兎 が がさごそ と 不 器用 に リスト を 捲る の を 見 ながら 、 次 の 証人 が 誰 な の か とても 知り たい と 思い まし た 。 「 ・ ・ ・ なぜ って 、 まだ 十分 証言 な ん て 出 て ない もの 。 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 白 兎 が 精 一杯 の 甲高い 声 で こう 読み上げ まし た 。 「 アリス ! 」 彼女 の 驚き と いっ たら 。 # アリス の 証言 # 「 はい ! 」 と アリス は ここ 何 分 か で 自分 が どんな に 大きく なっ た か を すっかり 忘れ て 、 叫び まし た 。 彼女 は 大変 吃驚 し て 跳び上がっ た の で 、 スカート の 裾 で 陪審 席 を ひっくり返し て しまい 、 陪審 員 たち を 下 の 人々 の 頭 の 上 に 放り込ん で しまい まし た 。 そこ で 彼 ら は もぞもぞ 動い て い た の で 、 彼女 は 先週 うっかり ひっくり返し た 金魚 鉢 の こと を 思い出し まし た 。 # 「 あら 、 ごめん なさい ! 」 と 彼女 は うろたえ て 叫び 、 できる だけ 速く 陪審 員 たち を 拾い上げ 始め まし た 。 と いう の は 金魚 の こと が 頭 の 中 を 回り 続け て おり 、 ぼんやり ながら 、 すぐ に 集め て 陪審 席 に 戻さ ない と 死ん で しまう と 思っ た から です 。 # 「 裁判 は 進め られ ぬ な 」 と 王 様 は 重々しい 声 で 言い まし た 。 「 全て の 陪審 を 元 の 場所 に 戻す まで は ・ ・ ・ 全て 」 と 彼 は アリス を 見 ながら 、 力 血 から を 入れ て 繰り返し まし た 。 # アリス は 陪審 席 を 見 て 、 急い で い た の で トカゲ を 逆しま に 入れ て しまっ た こと に 気付き まし た 。 可哀想 な 小さな 生き物 は 全く 動け ず 、 悲し げ に 尻尾 を 振っ て い まし た 。 彼女 は すぐ に それ を 取り出し 、 きちんと さ せ まし た 。 「 余り 重大 な こと で は ない わ 」 と 彼女 は 独り言 を 言い まし た 。 「 どっち が 上 で も 、 裁判 に は 余り 関係 ない と 思う し 」 # 陪審 員 たち は 騒ぎ から 気 を 取り戻し 、 石版 と 鉛筆 を 見つけ られ て 手渡さ れる や 否 や 、 生真面目 に この 事件 の 顛末 を 書き記し 出し まし た 。 ただ トカゲ だけ は 余り の 出来事 に すっかり 動顚 し 、 口 を ぽかんと 開け て 法廷 の 天井 を 見つめ て いる だけ でし た 。 # 「 この こと に つい て 、 知っ て いる こと は ? 」 と 王 様 は アリス に 言い まし た 。 # 「 何 も 」 と アリス 。 # 「 何 も 知ら ない と な ? 」 と 王 様 は 重ね て 聞き まし た 。 # 「 何 も 知り ませ ん 」 と アリス 。 # 「 これ は 大変 重要 で ある な 」 と 王 様 は 言っ て 、 陪審 員 の 方 を 向き まし た 。 彼 ら が 石版 に この こと を 書き止め 出す と 、 白 兎 が 遮り まし た 。 「 重要 で は ない 、 と 陛下 は 意味 し て いる の です 、 もちろん 」 と 彼 は 大変 丁寧 な 調子 で 言い まし た が 、 言い ながら 王 様 に 眉 を ひそめ 、 しかめっ面 を し まし た 。 # 「 重要 で ない 、 勿論 、 そう いう 意味 だっ た の だ 」 と 王 様 は 急い で 言い 、 「 重要 だ ・ ・ ・ 重要 で ない ・ ・ ・ 重要 で ない ・ ・ ・ 重要 だ ・ ・ ・ 」 と まるで どっち の 単語 が 語呂 が 良い か を 試す か の よう に 、 低い 声 で 独り言 を 続け まし た 。 # 何 人 か の 陪審 員 は 「 重要 」 と 書き まし た し 、 何 人 か は 「 重要 で ない 」 と 書き まし た 。 アリス は 石版 の 近く に 居 た の で 、 この こと が 見 て 取れ まし た 。 「 で も ちっとも 構わ ない わ 」 と アリス は 思い まし た 。 # 暫く 自分 の ノート に 忙し そう に 何 か 書い て い た 王 様 は 、 この 時 「 静粛 に ! 」 と 大声 を 上げ て 、 ノート を 読み上げ まし た 。 「 第 42 条 。 1 マイル 以上 の 高 さ の 人 は 全て 法廷 から 退去 する こと 」 # 全員 、 アリス を 見 まし た 。 # 「 私 は 1 マイル も ない わ 」 と アリス 。 # 「 ある ぞ 」 と 王 様 。 # 「 2 マイル 近く は ある ぞ え 」 と 女王 は 付け加え まし た 。 # 「 そう 、 どう あっ て も 、 私 は 出 て いか ない わ よ 」 と アリス 。 「 大体 、 それ って 正規 の 条項 じゃ ない でしょ 。 あなた が 丁度 今 創り出し た ん じゃ ない 」 # 「 それ は 一番 古い 条項 じゃ ぞ 」 と 王 様 。 # 「 だっ たら 第 一 条 の はず じゃ ない 」 と アリス 。 # 王 様 は 青く なっ て 、 急い で 自分 の ノート を 閉じ まし た 。 「 評決 を 審議 せよ 」 と 彼 は 低い 、 震え 声 で 陪審 に いい まし た 。 # 「 恐れ ながら 陛下 。 まだ 提出 する 証拠 が 済ん で ませ ん 」 と 白 兎 は 急い で 跳び 跳ね ながら 言い まし た 。 「 この 紙 は 只今 届け られ た もの です 」 # 「 何 が 書い て ある の じゃ ? 」 と 女王 。 # 「 まだ 開け て おり ませ ん 」 と 兎 。 「 しかし ながら 囚人 から ・ ・ ・ から 誰 か に 宛て られ た 手紙 の よう で ござい ます 」 # 「 そう に 違い ある まい 。 」 と 王 様 。 「 誰 に も 宛て られ て い ない の で なけれ ば の 話 だ が 、 それ は 尋常 で は ある まい 」 # 「 誰 に 宛て られ た もの です か ? 」 と 陪審 員 の 一人 が 言い まし た 。 # 「 誰 に も 宛て られ て おり ませ ん 」 と 白 兎 。 「 実際 、 外側 に は 何 も 書か れ て ませ ん 。 」 彼 は 話し ながら 紙 を 開き 、 「 これ は 手紙 で は ない です な 。 これ は 一連 の 詩 です 」 と 付け加え まし た 。 # 「 囚人 の 手書き です か ? 」 と 別 の 陪審 員 が きき まし た 。 # 「 いや 、 違い ます 」 と 白 兎 。 「 そして 、 それ が 最も おかしな こと な の です 」 ( 陪審 員 は 皆 困惑 し た よう に 見え まし た ) # 「 奴 は 誰 か 他 の 人 の 筆致 を 真似 し た に 違い ない 。 」 と 王 様 。 ( 陪審 員 は 皆 明るい 顔 に 戻り まし た ) # 「 恐れ ながら 陛下 」 と ジャック は いい まし た 。 「 わたし は 書い て 居り ませ ん し 、 誰 も 私 が 書い た と 証明 でき ませ ん 。 最後 の 所 に 署名 が ない で は ない です か 」 # 「 もし お前 が 署名 し て ない と いう の なら 、 」 と 王 様 。 「 それ は 事態 を 悪化 さ せる だけ だ ぞ 。 お前 は 何 か 悪い 事 を 企ん で い た に 違い ない 。 さも なけれ ば 正直 者 の よう に 自分 の 名前 を 署名 し た はず だ 」 # これ に は 観衆 全体 から 拍手 が 起こり まし た 。 それ は その 日王 様 が 言っ た 最初 の 本当 に 賢い こと でし た 。 # 「 これ は ヤツ の 有罪 を 証明 する ぞい 」 と 女王 。 # 「 何 も 証明 なんか し て ない わ ! 」 と アリス 。 「 それ が 何 か か さえ 、 あなた たち は 知り も し ない の に ! 」 # 「 それ を 読みあげよ 」 と 王 様 。 # 白 兎 は メガネ を つけ 、 「 どこ から 始めれ ば よろしい の でしょう か 、 陛下 」 と 尋ね まし た 。 # 「 最初 から 初めよ 」 と 王 様 は もったいぶっ て 言い まし た 。 「 そして 最後 まで 続け て 、 そこ で 止まる の じゃ 」 # これ が 白 兎 が 読ん だ 詩 です ・ ・ ・ # 「 君 は 彼女 の とこ へ 行っ て 、 僕 の こと を 彼 に 言っ た そう だ ね 。 彼女 は 僕 の こと を 人 が いい と 言っ た が 、 泳げ ない の ね と 言っ た 。 # 彼 は 彼 ら に 僕 が 行か ない と 伝え た 。 ( みんな 、 それ は 本当 だ と 知っ て いる ね ) もし 彼女 が それ で も ごり押し し て き たら 、 君 は どう なる ん だ い ? # 僕 は 彼女 に 一 つ 、 彼 ら は 彼 に 二 つ あげ た 、 君 は ぼく たち に 3 つ か それ 以上 あげ た 。 それ ら は 皆 彼 から 君 に 戻っ て き た 、 けれど も それ ら は 元 は 僕 の 物 だっ た ん だ 。 # もし 僕 や 彼女 が この こと に 係わっ て しまっ たら 、 彼 は 君 を 信頼 し て 彼 ら を 手放す さ 、 ちょうど 僕 たち が そう だっ た よう に 。 # 僕 が いい たい こと は 君 は ( 彼女 が 嵌っ て しまう 前 に は ) 彼 と 、 我々 と 、 それ と の 間 の 障害 物 だっ た て こと さ 。 # 彼女 が 彼 ら を 一番 好き だ って 事 を 彼 に 悟ら れる な 、 なぜ って これ は 永遠 に 、 他 の 人 たち に 悟ら れ ない よう 、 君 自身 と 僕 と の 間 の 、 秘密 に し て おか なきゃ なら ない から 。 # 「 これ は 今 まで 聞い た 中 で は 最も 重要 な 証言 で ある ぞ 」 と 王 様 は 手 を こすり ながら 言い まし た 。 「 それ で は 、 陪審 員 に ・ ・ ・ 」 # 「 もし 誰 か が その 詩 を 説明 できる ん なら 」 と アリス は 言い まし た 。 ( 彼女 は ここ 数 分 で とても 大きく なっ て い た の で 、 少し も 話 を 遮る の を 恐れ ませ ん でし た ) 「 私 は その 人 に 6 ペンス あげる わ 。 その 中 に は 意味 の かけら も ない と 思う わ 」 # 陪審 員 たち は 皆 、 石版 に 「 彼女 は その 中 に 意味 の かけら も ない と 思う 」 と 書きこみ まし た が 、 誰 も その 紙 を 説明 しよう と は し ませ ん でし た 。 # 「 もし それ に なん の 意味 も ない の なら 」 と 王 様 。 「 世界 は 災難 から 救わ れる ぞ 。 これ 以上 犯人 を 探す 必要 が ない から のう 。 しかし 余 に は 分から ぬ 」 と 彼 は 続け 、 膝 の 上 に 詩 を 広げ 、 片目 で それ を 見 まし た 。 「 結局 の ところ 、 この 中 に 何 か 意味 が ある よう に 見える と 、 余 は 見る ぞ 。 『 ・ ・ ・ 泳げ ない の ね と 言っ た ・ ・ ・ 』 そち は 泳げ ん の じゃろ ? 」 と ジャック の 方 を 向い て 付け加え まし た 。 # ジャック は 悲し げ に 頭 を 振り 、 「 泳げ そう に 見え ます か ? 」 と 言い まし た 。 ( 彼 は 確か に 泳げ ませ ん でし た 。 全体 が ボール 紙 で でき て まし た から ) # 「 よろしい 、 これ まで の ところ 」 と 王 様 は 言っ て 、 詩 を ブツブツ 呟き 続け まし た 。 「 『 みんな 、 それ が 本当 だ と 知っ てる ね ・ ・ ・ 』 これ は 陪審 員 ら の こと だ な 、 もちろん ・ ・ ・ 『 僕 は 彼女 に 一 つ 、 彼 ら は 彼 に 二 つ ・ ・ ・ 』 うむ 、 この 所 は 彼 が タルト に し た こと に 違い ない な ・ ・ ・ 」 # 「 で も 、 『 それ ら は 皆 彼 から 君 に 戻っ て き た 』 と 続い て いる わ よ 」 と アリス 。 # 「 うむ 、 そこ だ ! 」 と 王 様 は 勝ち誇っ た よう に 言っ て 、 テーブル の 上 の タルト を 指差し まし た 。 「 そこ 以上 に 明白 な もの は ない ぞ 。 そして また ・ ・ ・ 『 彼女 が 嵌っ て しまう 前 に は ・ ・ ・ 』 お前 や 、 ものごと に 嵌っ た こと は ない じゃ ろ ね ? 」 と 彼 は 女王 に 言い まし た 。 # 「 ない わ ! 」 と 女王 は 怒っ て 、 インク 壷 を トカゲ に 投げつけ まし た 。 ( 不幸 な ビル は 印 が 残ら ない こと に 気付い て 、 指 で 石版 に 書く の を やめ て い まし た 。 しかし 顔 から インク が 滴り落ち て き た の で 、 それ が 続い て いる 内 に 、 今 や また インク を つかっ て 急い で 書き 始め て い まし た ) # 「 それ で は この 言葉 は お前 に はあて 嵌ら ない わけ だ な 」 と 王 様 は 言っ て 、 笑っ て 法廷 を 見回し まし た 。 辺り は 死ん だ よう に 静か に なり まし た 。 # 「 これ は 洒落 じゃ ! 」 と 王 様 は ムッと し た よう に 付け加え まし た 。 する と みんな 笑い まし た 。 「 陪審 に 評決 を 審議 さ せよ 」 と 王 様 は 言い まし た 。 その 言葉 は その 日 に 大体 20 回 目 の もの でし た 。 # 「 いや 、 いや ! 」 と 女王 。 「 判決 が 先 ・ ・ ・ 評決 は 後 じゃ 」 # 「 バカ と アホ ! 」 と アリス は 大声 で 言い まし た 。 「 判決 を 先 に する なんて どう いう 考え ? 」 # 「 口 を 慎め ! 」 と 女王 は 真っ赤 に なり まし た 。 # 「 慎ま ない わ ! 」 と アリス 。 # 「 首 を 刎ねよ ! 」 と 女王 は あら ん 限り の 声 で 叫び まし た 。 誰 も 動き ませ ん でし た 。 # 「 誰 が あなた に 遠慮 する って の ? 」 と アリス は 言い まし た 。 ( 彼女 は この 時 まで に 元 の 大き さ に 戻っ て い まし た ) 「 あなた たち は ほんの トランプ の カード じゃ ない の ! 」 # この 言葉 を 聞く と 、 カード たち は 空中 に 舞い上がり 、 彼女 めがけ て 飛び込ん で き まし た 。 彼女 は 半分 は おびえ て 、 半分 は 怒り で 小さな 悲鳴 を あげ まし た 。 そして 自分 が 姉 の 膝 の 上 に 頭 を 乗せ て 、 土手 に 寝転ん で いる の に 気づき まし た 。 姉 は 木 から 顔 に ひらひら 落ち て き た 枯葉 を 優しく 取り払っ て いる ところ でし た 。 # 「 おき て 、 アリス ! 」 と 姉 は 言い まし た 。 「 長い お 昼ね だっ た わ ね 」 # 「 うん 、 とても ヘン な 夢 を 見 た の 」 と アリス は 言っ て 、 あなた が 今 ちょうど 読ん で き て た この 不思議 な 冒険 を 全て 、 覚え て いる 限り 、 姉 に 伝え まし た 。 話し 終える と 、 姉 は 彼女 に キス し て 、 「 それ は ヘン な 夢 ね 、 確か に 。 で も 今 は お 茶 が 先 。 遅れる わ よ 」 と 言い まし た 。 そこ で アリス は 立ち上がっ て 走り去り まし た 。 走り ながら 、 もっとも な 事 ながら 、 なんて 不思議 な 夢 だっ た の かしら 、 と 思い まし た 。 # しかし 姉 は アリス が 去っ た 後 も 、 ほおづえ を つい て じっと 座っ て 、 陽 が 沈む の を 見 ながら 、 小さな アリス の こと と 、 彼女 の 冒険 の こと を 考え て い まし た 。 そして 考え ながら 、 眠り に 落ち て 行き まし た 。 彼女 の 夢 は この よう な もの でし た ・ ・ ・ # まず 、 彼女 は 小さな アリス の こと を 夢見 まし た 。 も 一 度 小さな 手 は 彼女 の 膝 を 抱き締め 、 明るい 瞳 は 彼女 に じっと 注が れ て い まし た 。 。 。 彼女 は アリス の 声 の 調子 さえ も 聞い たり 、 動き回っ て いつ も 目 に 入る 髪の毛 を どかす ため に 彼女 が 奇妙 に 小さく 頭 を 揺り動かす の を 見 たり する こと が でき まし た 。 さらに アリス が 聞い た よう に 、 或いは 聞い た と 思っ た よう に 、 彼女 の 周り 全体 が 、 妹 の 夢 の キテレツ な イキ モノ たち で 賑わっ て いる の が 聞こえ まし た 。 # 白 兎 が 走っ て いく に つれ 、 彼女 の 足元 の 長い 草 が サラサラ 言い ・ ・ ・ ・ 驚い た ねずみ が 近く の 水溜り めがけ て 水飛沫 を あげ て 泳い で い たり ・ ・ ・ 彼女 は 三 月 兎 と 彼 の 友達 が 決して 終わら ない 食事 を 分け合っ て いる 際 の ティー カップ の がちゃがちゃ いう 音 や 、 女王 が 彼女 の 不幸 な 客 に 死刑 を 言い渡し て いる 金切り 声 が 聞こえ まし た 。 。 。 もう 一 度 、 ブタ の 赤ちゃん は 公爵 夫人 の 膝 の 上 で クシャミ を し 、 大皿 小皿 は その 周り で 砕け て い まし た ・ ・ ・ もう 一 度 グリフォン の うなり声 、 トカゲ の 石版 を こする 音 、 鎮圧 さ れ た モルモット の 窒息 する 声 が 空気 を 満たし 、 遠く から の 惨め な 偽 亀 の すすり泣き の 声 と 交じり合い まし た 。 # そこ で 彼女 は 目 を 閉じ て 座り なおし 、 半ば 自分 が 不思議 の 国 に いる と 思い まし た 。 しかし 彼女 は 眼 を 開け なけれ ば なら ず 、 そう し たら 全て の 物事 は 退屈 な 現実 に 変わっ て しまう 、 と いう こと を 知っ て い まし た 。 草 は ただ 風 に そよい で いる だけ に しか 過ぎ ず 、 水溜り は 葦 の そよぎ に 波 を 立て て いる だけ で あり ・ ・ ・ ティー カップ の がちゃがちゃ 言う 音 は 羊 の 鈴 が チリンチリン 言う 音 で あり 、 女王 の カナ きり 声 は 羊飼い の 少年 の 声 で あり ・ ・ ・ 赤ん坊 の クシャミ 、 グリフォン の うなり声 、 そして その 他 の 奇妙 な 音 は 、 忙しい 農場 の 様々 な 物音 に 変わっ て しまい ( 彼女 は その 事 を 知っ て まし た ) ・ ・ ・ 遠く の 牛 の 低い 鳴き声 は 偽 亀 の 重おもしい すすり泣き に 取っ て 代わる の です 。 # 最後 に 、 彼女 は この 小さな 妹 が 、 後 に 大人 の 女性 に どう 成長 し て いく の か 、 想像 し て み まし た 。 彼女 は 後年 、 子供 時代 の 素朴 で 愛らしい 心 を どう 保っ て 行く の か 。 どう 彼女 は 子供 たち を 集め て 、 遠い 昔 の 不思議 の 国 の 夢 の よう な 、 不思議 な 話 を 聞か せ て 彼 ら の 眼 を 輝か せ 、 夢中 に さ せる の か 。 どう 彼女 は 子供 たち の 小さな 悲しみ を 感じとり 、 小さな 喜び に 楽しみ を 見出し 、 自分 自身 の 子供 時代 と 楽しい 夏 の 日 を 思い出す の か 、 思い描き まし た 。 #