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日本精神分析学会の歴史
 
われわれのサイトにアクセスしていただきありがとうございます。

 日本精神分析学会は、精神分析の研究や精神分析的な治療を行う医学や臨床心理学の専門家が参加し、その実践にもとづいた精神分析的な経験と知恵を会員相互が分ち合うことによって、治療、教育、その他の分野に役立たせることを基本的な目的としています。ここでいう精神分析的な治療とは、何よりもジークムント・フロイトの創始した精神分析を指しますが、さらには精神分析的精神療法、精神分析的集団精神療法、精神分析に基づいた家族療法・ガイダンス・コンサルテーション、精神分析的入院治療、乳幼児観察、精神分析的アセスメント、コンサルテーション・リエゾン精神医学の実践などが含まれます。我が国では、数としては精神分析そのものの実践よりも後者の方が多くなっているのが実情であり、そのあり方は市民のニードに応えるものです。

 本学会はこのように多様な臨床アプローチを含みこんでいますが、精神分析の本質は、あくまで人間の生きた心と心の直接的交流とそこで起こっていることついて徹底的に考えるという実践にあります。そして、こうした実践を支えるのが自らをモニターして分析するという方法であり、この考え方が本学会のアイデンティティといってよいでしょう。

 こうした実践的な思考や方法を身につけるためには専門的な訓練が必要です。そのため、本学会の指導者たちは会員のための教育研修に熱心に取り組んできました。 本学会の歴史を紐解くなら、本学会は古澤平作先生によって1955年に創立され、2004年は学会設立50周年目でした。しかし、我が国の精神分析の歴史は、1934年古澤先生が精神分析クリニックの開業をはじめた時点から始まったといえますので、実際は70年の歴史を持つことになります。古澤先生以降、土居健郎、小此木啓吾、西園昌久、前田重治、武田専といった精神分析家たちが、本学会を支え発展させてきたことからも分かるように、本学会は設立から現在まで、わが国の医療における精神療法の推進役を果たしてきました。現在では、さらに多くの臨床心理士の参加を得てこの分野でも指導的な役割を果たすことが期待されています。

 また、本学会は設立当初、国際精神分析協会(IPA)の日本支部の機能をもっていましたが、1980年代にこの日本支部は、学会から独立し日本精神分析協会を組織しました。すなわち、現在我が国には精神分析に関して日本精神分析学会と日本精神分析協会という2つの学術組織が存在しています。後者の協会は、国際基準を絶対とする精神分析家の組織でありその養成のための集まりです。

 一方本学会は日本独自のものであり、以上に述べたように、精神分析を基盤とした多様な臨床活動を実践している臨床家の集まりです。 本学会の会員になるための基礎資格は4年生大学卒業で、2名の正会員による推薦が必要です。 現在、会員数は2,795名で、その主たる職業は精神科医・心療内科医などの医師990名、臨床心理士などの心理職1,475名です。さらに付け加えるなら、協会に所属する多くの精神分析家が本学会の発展に寄与してきました。

 今日わが国において「精神分析」とか「セラピー」という言葉が独り歩きをしているように見え、同時に、精神療法やカウンセリングを求めている人々が増えているのも事実です。こうした状況において、質の高い精神分析的精神療法や精神分析の知恵に基づいた専門的サービスを提供すること、さらには社会に向けて精神分析についての正しい知識や情報を伝達することが本学会の大きな目標となり、それに向けてホームページも開設されました。

 インターネットという新しいツールと、100年以上の歴史を持つ精神分析の出会いは、実に実験的な試みでもあります。中身の充実に向けご指導ご助言、どうかよろしくお願い致します。
 本学会は上記の基本的理念にもとづいて以下のような事業を行っています。
年に1回大会を開き、総会を招集すると共に学術集会を開催しています。2006年の大会は名古屋で開催され、47の一般演題と28の研修症例演題がありました。本学会の特徴は、ひとつの演題について時間をかけじっくり討論するところにあります。
シンポジウムは全体集会の設定で行われますが、運営委員会でじっくり練り上げられたテーマについて全員で討論します。そのほか、興味深い臨床例について討論者を指定し、時間をかけて議論する指定討論演題、終結した精神分析療法のモデルとなるような終結症例演題などがあります。大会初日には7つから9つの教育研修セミナーを行います。
このセミナーは、最先端の理論や技法を紹介するコースから入門的なコースまで多彩です。発表演題はすべて厳密な審査を経て採否が決定されます。大会参加は会員以外にもオープンですが、会の性質から職業上の守秘義務を守る義務と責任を有している方に限定しています。
機関紙として「精神分析研究」を年4回編集刊行しています。2004年は50周年を記念して増刊号を発行しました。
日本精神分析学会認定精神療法医・日本精神分析学会認定心理療法士を認定しています。さらに、教育研修にあたる研修グループとスーパーバイザーの認定を行っています。
現在、認定精神療法医は133名、認定心理療法士は73名、認定スーパーバイザーは認定精神療法医のうち57名、認定心理療法士のうち19名、認定研修グループは49です。
各研修グループやスーパーバイザーは独自に活動していますが、同時に密接な連携も維持し、わが国の精神分析療法の質の維持と向上に貢献しています。
関連する諸学会や諸機関と連携し、わが国における精神分析の普及ならびに医療、教育、臨床心理などの分野への反映を推進し、わが国の精神保健の向上を目指しています。
倫理規定を制定し、本学会会員が提供する専門的サービスの質を保ち、これらを求める人々が、信頼にたる専門的サービスを享受できるように努力しています。
 本学会の組織について説明します。
学会は、各地区から選挙で選ばれた運営委員が運営し、運営委員会が上に述べたような事業を遂行しています。運営委員会の下部組織として、教育研修委員会、編集委員会、医療問題委員会、臨床心理委員会があり、さらに運営委員会から相対的に自立した組織として認定制度委員会と倫理委員会があります。大会は、運営委員会が主催しますので、学会会長が大会会長を兼ねます。しかし、同時に地区の運営委員が実行委員長となり地区の会員の協力を得ながら行います。

最後になりますが、本学会がわが国の精神保健サービスの向上に寄与することを願ってやみません。
日本精神分析学会会長
北山 修
 
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