【移民危機】欧州首脳らシリア難民援助に1300億円支出で合意
- 2015年09月24日
欧州連合(EU)は23日、ブリュッセルで緊急首脳会議を開き、急増する移民流入を抑制するため、国連による中東地域でのシリア難民への支援活動に10億ユーロ(約1340億円)を支出することで合意した。シリアの近隣諸国に対する援助も強化する。同国で内戦が勃発して以来数百万の難民が発生している。
EU首脳らはEU地域外との国境の管理強化でも合意した。
EUのトゥスク大統領は「難民や移民の最も大きな波はまだこれからだ」と警告した。今年に入ってEUには約50万人の移民が到着しているが、その処遇をめぐってはEU加盟国間の意見の深い対立が浮き彫りになっている。
臨時首脳会議は、先に示された移民12万人を各国で分担して受け入れるクオータ制について激しい議論が交わされるなか開かれた。一部の加盟国は義務的な分担に反発しており、スロバキアは提訴に動いている。
しかし、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は首脳会議について、「非常に良かった」とし、「予想されたより良好な雰囲気」の中で行われたと述べた。
首脳会議の合意内容
<英語ビデオ>緊急首脳会議の合意内容を発表するトゥスク大統領
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国連世界食糧計画(WFP)に対する資金援助を少なくとも10億ユーロ(約1340億円)追加
- レバノン、ヨルダン、トルコなどへの援助を増加
- トルコとの協力・対話を強化
- 北に向かう移民の多くが通過するバルカン半島各国を支援
- 国境管理の強化。警備人員への支出を増加
- シリア内戦を終わらせるための努力をさらに重ねると認識を共有
記者会見したEUのトゥスク大統領は、加盟国間の「あからさまな責任のなすりつけ合いを終わらせる」のが首脳会議の目的だったと語った。
大統領は約400万のシリア人が近隣諸国に逃れているとした上で、「シリアだけでも数百万の難民が欧州を目指す可能性があると考えるべきで、このほかにイラク、アフガニスタン、エリトリアなどの国々もある」と述べた。
EU首脳らは到着する移民たちの受け入れ審査をする複数の中核地点を新たに指定することでも合意した。
7時間続いた首脳会議の終了後に記者会見したトゥスク大統領は、「きょう合意した措置で危機を終わらせることはできないが、どれも正しい方向に進むため必要なことだ」と述べた。
10月にも首脳会議が予定されており、トゥスク大統領とユンケル委員長はトルコのエルドアン大統領と会談する見通し。
移民の多くが移住を希望するドイツのメルケル首相は、首脳会議について「満足した」と述べ、「課題に一緒に取り組むことが期待されていると感じた」と語った。
メルケル首相はまた、シリア内戦終結のための新たな動きが活発化するなかで、同国のアサド大統領も対話に加わるべきとの考えを示した。