母国での迫害や戦乱などを理由に難民としての保護を日本に求めて来た人々のうち、政府が2014年に難民と認めて受け入れを決めたのは11人だった。16年ぶりの1ケタに落ち込んだ前年より5人増え、2ケタを回復した。
とはいえ、国際的にみて際立って少ないことに変わりはない。他の主要7カ国(G7)のメンバーに比べると、2ケタも3ケタも少ないのが実情だ。「難民鎖国」とか「難民に冷たい国」といった批判を、甘んじて受け入れざるを得ない実績といえる。
14年に保護を求めてきた申請者は5000人と過去最高だった。申請が増えた一因として、迫害などのおそれがないのに職だけを求めて来る「偽装難民」の存在が指摘されている。
難民かどうかを判定する実務をになう人たちの仕事は難しさを増している。だからといって、本当に迫害のおそれのある人たちを受け入れて保護するという責務を果たさないのでは、本末転倒だ。
こうした問題を踏まえ、出入国管理政策に関する法相の私的懇談会は昨年12月、難民認定制度の改革を促す報告書をまとめた。
注目したいのは、日本の先例だけでなく海外の事例を参考にしたり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の文書を生かしたりする必要があるとの指摘だ。
他の先進国に比べ受け入れる難民が少ない一因として、日本は国際的な動向への目配りが足りない、との批判をかねて受けてきた。報告書を足がかりに、難民に温かい国へと脱皮するための改革を政府は早期に具体化すべきだ。
安倍政権は観光立国をかかげて途上国からの旅行客に対する門戸を広げてきた。人手不足に悩む産業界の要望にこたえて外国人技能実習生の受け入れ枠拡大に踏み切ることも決めた。
自国の利益に役立つ場合に限って外国人を受け入れる姿勢を見せ、人道的な理由で保護を求めてくる人々は拒む――。そんな日本でいいわけはない。